ガソリン、食用油、小麦粉、牛肉などの世界的な逼迫(ひっぱく)による価格高騰で、家計が圧迫されている実感を持っている消費者は多いだろう。

 強まる節約志向で支持されているのがスーパーやコンビニの低価格プライベートブランド(PB)だ。かつては「安かろう、悪かろう」のマイナスイメージが強くあった。しかし、近年はイメージを一新している。

 イオンが注力する「トップバリュ」では、キリンが製造する第3のビール「バーリアル」や、ダノンジャパンが製造する「ギリシャヨーグルト」など、一流メーカーとのコラボレーションが進んでいる。

 西友の「みなさまのお墨付き」は、消費者テストで支持率80%が得られなければ商品化しない厳格な基準を設けて、地域住民からの支持が厚い。

 ローソンストア100の「バリューライン(VL)」は、100円(税別)の均一価格と徹底的な価値の追求をコンセプトとして、献立応援商品を取りそろえている。

 今や世界的なビッグブランドに成長した「無印良品」は、西友をはじめとするセゾングループのPBとしてスタートした。セブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム」からは、セブン-イレブンを中心に「サラダチキン」や「金の食パン」のような食のトレンドを変える爆発的ヒットも生まれた。

 無印良品やセブンプレミアムは価値を追求する商品をメインに販売しているのに対して、トップバリュ、みなさまのお墨付き、バリューラインは安価な商品の品質を向上させるべく、改善を続けているイメージがある。

 低価格PBの現状をまとめてみた。

●フォークを付けないカップ麺で85円

 トップバリュは、食品カテゴリーだけでも約3800品目。売り上げ8414億円に達するメガブランドだ。実はイオンは、食品メーカー・卸としても大手企業である。

 取り扱い企業は、イオンリテール、イオン九州、イオン北海道などとといったイオン系列のGMS(総合スーパー)をはじめ、マックスバリュー5社、いなげや、ベルク、マルエツ、ダイエー、ビッグ・エーなどのSM(スーパーマーケット)やDS(ディスカウントストア)もある。さらに、小型スーパーのまいばすけっと、コンビニのミニストップ、ウエルシアホールディングス、クスリのアオキホールディングスのようなドラッグストアなど、計33社に及んでいる。

 ただし、各取り扱い企業、店舗によっても商品ラインアップは異なる。

 イオンがはじめてPBに取り組んだのは、1974年。メーカーのカップラーメン値上げをきっかけに「ジェーカップ」が誕生した。100円以上の商品が主流だったが、それまで当たり前だったフォークを付けずに85円という低価格を実現。「良い商品をより安く提供する」というイオンの企業姿勢を体現した。75年から流通経路を短縮し、無駄を省いたお値打ち品PBを続々と販売した。

 トップバリュの前身である、「トップバリュー」ブランドが生まれたのは、イオンの前身ジャスコ誕生25周年となる1994年。トップバリュー(TOPVALU)は、TOP(最高)とVALUE(価値)を組み合わせた造語で、圧倒的な低価格と品質を両立させるブランドを目指した。

 2000年には、「MOTHER FOREST・生活品質の森」をイメージした新しいブランドマークを制定するとともに、新生トップバリュに刷新。

 14年より、「トップバリュ」「トップバリュ グリーンアイ」「トップバリュ ベストプライス」「トップバリュ セレクト」の4ブランド体制となっている。

 手短にいうと、トップバリュは生活品質向上、トップバリュ グリーンアイは安全・安心、トップバリュ ベストプライスは満足品質・低価格、トップバリュ セレクトはこだわりぬいた最上質をコンセプトとしている。顧客のライフスタイルやその日の気分によって選べるようにしている。

●計画比1.5倍のヒット商品も

 トップバリュにおける直近のヒット商品は何か。

 バーリアルは発売して10年になるが、18年6月に製造を韓国メーカーから、キリンの国内工場に変更。輸送時間を1カ月ほど短縮し、鮮度と品質が格段にアップした。21年9月にも、原材料の配合を見直すなど、妥協せず改善を続けている。21年1〜8月の売上高は過去最高となる前年同期比150%。「バーリアル」「バーリアル リッチテイスト」「バーリアル 糖質50%オフ」の3種がある。

 「ベジティブ」シリーズは、健康や環境に配慮し、毎日の食事に植物由来の食品を積極的に取り入れたいという顧客の声から生まれた商品群。昨年から肉や乳製品を植物原料に置き換えたものを本格展開している。商品例として、「大豆からつくったハンバーグ」「豆乳からつくったプリン」などがあり、今上半期(3〜8月)で売り上げは前年同期比150%となっている。

 「パパッとできるお魚おかず」は、キャラメルのようにキューブ型に切った、斬新な魚の冷凍食品。調理過程で生ごみが出ないのが特徴だ。また、骨を除去しているので家族全員で食べやすく、打ち粉をしているので下ごしらえも不要だ。冷凍のままで和、洋、中と料理のジャンルを問わずに活用できるようにした。「骨取りサーモン」の他、「あじ」「さば」「たら」「ぶり」が発売されている。21年5月から販売した新商品で、イオンリテールで計画比1.5倍の売れ行きと大きな反響を呼んでいる。

 「プロテインバー」は、在宅時間が長くなる昨今、自宅でトレーニングする人も多いことから、手軽にタンパク質を摂取できる点が支持されている、コロナ禍を追い風に変えた商品で、「プロテインバー15gバーチョコ」のほか、シリアルチョコ、シリアルチョコビター、シリアルチョコFORジュニアがラインアップとなっている。比較可能な時期(21年7〜8月)と商品のみで、売り上げは前年同期比約250%と絶好調だ。

 トップバリュは、暮らしで顕在化されたニーズだけでなく、潜在的なニーズ(簡便、健康、環境、ナチュラル、こだわり志向など)も追求。徹底した品質管理基準や自主検査、開発体制を実現し、企画・製造・物流・販売まで「トップバリュが全ての責任を負う」ことを示すために、「販売者イオン」を表示しているという。

●急成長するみなさまのお墨付き

 西友のPBである「みなさまのお墨付き」は、12年にデビュー。年間平均で22%の伸び率を示している、急成長中のブランドだ。新商品数は500アイテムで、20年の売り上げは前年比で27%増と絶好調の業績であった。

 みなさまのお墨付きが支持される理由は、有名メーカー品をベンチマークして、同等以上の品質で10%以上の低価格を目指していることだ。しかも、商品化する際に、味、価格、容量などについて消費者テストを行い、支持率80%以上を獲得したものだけを厳選している。この消費者とともにつくり上げる民主主義的な仕組みが独特である。19年までは支持率70%以上で商品化していたが、より厳格に変更した。

 西友では、ウィズ・コロナを見据えた、商品開発テーマとして、「時間をかけずおいしく便利(Ready To Cook/Eat)」「心も身体も心地よい生活(Well-Being)」「産地・原材料へのこだわり(Local&Seasonal)」を選定。

 「時間をかけずおいしく便利」に沿った商品として、「私が食べたい世界のごはん」をサブテーマにレトルト商品を強化。特にカレーのカテゴリーでは、「カシューナッツ香る マッサマンカレー」「まろやかなコクと旨み クリーミーバターチキンカレー」といった世界のカレーを14種類展開して、PB内でも圧倒的な人気だ。調理の手間を省きたい消費者のニーズに応えている。

 「大豆ミートのキーマカレー」は、動物性原料を一切使わずうま味とコクをいかに出すか、研究を重ねた、大手メーカーでも類例が少ない商品だ。売り上げは計画比で30%増の勢いにある。

 また、アツアツのごはんに香味油と具材パウダーを合わせるだけの「ごはんとまぜるだけ」シリーズでは、「ガパオライス」や「カレーピラフ」を販売している。

 「調味料を超えた調味料」をサブテーマにした「つぶつぶ刻み野菜入りケチャップ」は、野菜のみじん切りからお客を解放し、ミートソースやオムライスづくりをサポートすることを目指す。計画比160%超の売れ行きだ。サラダや肉料理の風味アップを支援する「たっぷり玉ねぎポン酢」の売り上げも計画比60%超だという。

●ギルトフリーの菓子類が人気

 「心も身体も心地よい生活」では、「プチ贅沢(ぜいたく)」をサブテーマに、「北海道牛乳を使ったしっとりチョコチップスコーン」や「国産小麦粉を使ったシナモンドーナツ」のような、糖質控えめで罪悪感の少ない「ギルトフリー」の菓子類を販売。当該シリーズの売り上げは平均で計画比30%増と好調だ。

 「産地・原材料へのこだわり」では、「ザクっとパールシュガー入り ベルギーワッフル」において、ベルギー産パールシュガーや鳥取県大山高原特選牛乳を使用した。

 従来のみなさまのお墨付きは主に、定番、コモディティ商品に限ってきたが、コロナ禍で付加価値の高いオリジナル商品、さらにはPBの領域を超えたオリジナル商品の開発にシフトし、過去最高の売り上げに達した。

 ウォルマート傘下で再建に苦労した西友だが、昨年ウォルマートの出資は15%に下がり、米国投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が65%、ネットスーパーを共同運営する楽天が20%を保有する。西友でしか買えないPBをけん引車に、ついに長いトンネルを脱しつつある。

●カット野菜が定番のベストセラー

 ローソンストア100のPB「バリューライン」は、信頼するメーカーと共同開発した、小分け適量サイズの100円均一(税別)のブランド。

 商品は、カット野菜などの野菜と果物、ソーセージなどの肉、チーズなどのディリー食品、加工食品、冷凍食品、パン、デザート、アイス、調味料、菓子、飲み物、酒、雑貨と幅広く、約800品目に及ぶ。

 ローソンストア100は全国に671店(21年8月末時点)あり、住宅街立地が主流。男女比は55:45で、男性がやや多い。そして、50代以上の顧客が4割と、普通のコンビニよりも年齢層が高い人が来店する特徴を持つ。そこで「献立応援コンビニ」というコンセプトを考案し、それに沿った商品を発売している。

 例えば、カット野菜は定番のベストセラーだが、天候不順で野菜の価格が高騰した9月には特によく売れた。「VL ざく切り白菜(220g)」が前月比119%、「VL さく切りキャベツ(220g)」が同116%、「VL カットレタス(105g)」が同131%、などとなった。

 バリューラインのカット野菜は、「キャベツ野菜炒め」なども分量が多く、一般的な野菜炒め用カット野菜に比べて3〜5割は多いように見える。その面でも献立応援になっている。

 また、「VL 強炭酸水(1.3L)」は、酒の割材として開発され、差別化商品として売ってきたが、近年はのど越しのさわやかさが受けて、そのまま飲む人が増えている。

 その他、小分けされたバター、キムチ、たっぶりサイズ(210グラム)の果物入りゼリーをそろえる。さらにた、あたりめといった酒のおつまみが、ちょっと足りないと思う時に、100円均一で販売されているのが支持されている。冷凍食品では、200グラム入ったチャーハン、エビピラフ、ドライカレーなどの米飯が販売されている。

 このように、トップバリュ、みなさまのお墨付き、バリューラインといった低価格PBは、単に安いのでなく、信頼できるメーカーと長期的な契約を結んで商品開発を進め、そのチェーンでしか売っていない魅力的な商品を続々と生み出している。各チェーンが切磋琢磨して、日本のものづくりのレベルをさらに向上させていってほしい。

(長浜淳之介)