デロイト トーマツ グループは、日本企業における役員報酬の水準、株式報酬制度などの導入やコーポレートガバナンスへの対応を調べた「役員報酬サーベイ(2021年度版)」を実施した。その結果、売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額の中央値は9860万円だった。

●社長報酬総額の推移

 まず売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額を調べたところ、その中央値は9860万円だった。これは前年の9887万円と比較すると0.3%減となり、微減した格好だ。前年度の調査結果に続き、一部の企業で新型コロナウイルスの影響による報酬の減額などが反映されつつあることがうかがえる結果となった。

 なお東証一部上場企業における社外取締役の報酬総額水準の中央値は800万円で、5年連続で上昇傾向にあることが分かった。

●インセンティブ報酬

 次にインセンティブ報酬について調べたところ、短期インセンティブ報酬を導入している企業の割合は72.9%(760社・前年比1.3%減)だった。採用されている短期インセンティブ報酬の種類を見ると「損金不算入型の賞与」が最も多く、導入企業の54.0%(393社)を占めていた。

 株式関連報酬(長期インセンティブ報酬)を導入している企業の割合は74.0%(771社)、今後導入予定の企業も合わせると85.2%(888社)だった。採用されている株式関連報酬の種類については、「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」(279社)と、「業績連動型株式交付信託」(144社)が多かった。

 明文化された役員評価制度を有する企業と、明確な評価制度は存在しないものの何らかの評価基準が存在する企業は合わせて70.1%(730社)となり、役員の評価を実施している企業は昨年の68.2%(651社)より1.9%増加した。

 役員評価を実施している企業のうち、ESG指標を役員報酬決定に活用している企業は6.4%(47社)と未だ低い水準にはあるものの、前年から1.0%増加した。

●ガバナンス体制

 指名委員会等設置会社を除く1003社のうち、任意の報酬委員会を設置している企業の割合は67.5%(677社・前年比7.3%増)、任意の指名委員会を設置している企業の割合は60.1%(603社・前年比6.4%増)だった。

 任意の指名委員会・報酬委員会の設置率は上昇した一方、年間の開催回数に関しては指名委員会等設置会社との乖離が見られた。指名委員会等設置会社では、いずれの委員会も年5回以上開催する企業が半数以上である一方、任意の委員会設置企業では、年3回以下の企業が約6割を占めている。

 選解任基準の整備状況に関しては、CEOの選任基準を整備している企業が32.4%(前年比1.2%増)と増加し、CEO以外の役員の選任基準を整備している企業は44.7%(前年比0.4%減)にとどまった。また、CEOの解任基準においては全体の31.3%(前年比0.6%増)、CEO以外の役員の解任基準も全体の38.7%(前年比0.6%増)と微増した。

 指名基準に関連して、CEOの後継者計画を整備している企業は全体の19.3%(前年比0.9%増)、その他役員の後継者計画を整備している企業も全体の13.5%(前年比1.2%増)と増加した。

マルス条項・クローバック条項の導入状況

 2015年のコーポレートガバナンス・コードの適用開始以降、役員報酬制度の整備・進展に伴い、不正防止や過度なリスクテイクの抑制を目的として「マルス・クローバック条項」の導入・検討をしている企業が見られる。昨年度において両条項を導入済の企業は、合計で8.3%だった。

 一方、今年度はマルス条項(権利が確定したインセンティブ報酬について、業績の修正などがあった場合に、報酬が支給される前にその額を減額、もしくは支給を取りやめる取り決め)を導入済の企業が20.3%、現在検討中・今後検討予定の企業は9.2%だった。

 また、クローバック条項(業績に連動し支給された報酬を業績結果の修正などの事項をトリガーとして返還させる取り決め)を導入済の企業が8.7%、現在検討中・今後検討予定の企業が10.3%と、増加傾向にあることが分かった。

●新型コロナの役員報酬への影響は軽微

 新型コロナウイルスによる役員報酬への影響を調査したところ、役員報酬の減額・自主返上について制度を変更した企業は全1042社のうち13.3%(139社)、変更していない企業は86.7%(903社)だった。

 制度を変更した企業のうち、臨時的に変更した企業は11.9%(124社)、臨時的かつ恒常的に変更した企業は1.1%(11社)、恒常的に変更した企業は0.4%(4社)であった。

●取締役の多様性

 取締役の多様性について調査すると、全取締役に占める社外取締役の人数割合を3分の1以上確保している企業は65.0%だった。

 また社外取締役として女性あるいは外国人を採用している企業は51.9%、女性のみ1人以上存在する企業は43.9%、外国人のみ1人以上存在する企業は3.2%、女性と外国人の両方が存在している企業は4.8%であった。

●指名・報酬委員会の実効性強化

 社外取締役が委員長を務めている企業は、任意の指名委員会で55.2%、任意の報酬委員会で57.0%だった。

 指名委員会で委員長としての加算報酬が「あり」の企業は5.5%、社外委員が委員に就任している場合の加算報酬が「あり」の企業は10.8%だった。報酬委員会で委員長としての加算報酬が「あり」の企業は6.8%、社外委員が委員に就任している場合の加算報酬が「あり」の企業は11.1%という結果となった。

 当調査は21年6〜7月に1042社の企業に所属する役員1万9555人を対象に実施した。