昨今、バックオフィスにおけるSaaSの導入が盛んだ。経理、人事、総務、法務などなどさまざまなSaaSが登場し、しのぎを削っている。こうしたSaaSを最も活用しているのは、既存のオペレーションに縛られないスタートアップ企業だろう。

 急成長スタートアップは、どんなバックオフィスSaaSを導入し、どう活用しているのか。第1回のLegalForceに続き、第2回は建設業界のDXを推進するアンドパッドに聞いた。

 アンドパッドは2014年創業。87億円の資金を調達したレイターステージのスタートアップだ。従業員は539人にのぼり、国内4カ所に拠点を構える。提供するのは13万社以上が利用するクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」。特定の業界にフォーカスしてSaaSを提供する、いわゆるバーティカルSaaSとして、建設業界向け施工管理アプリとしてシェアナンバーワンを誇る。

 従来、紙とExcelを使っていた写真や資料をクラウドで管理できるほか、電話やFAXの代わりにチャットで現場とコミュニケーションが取れるようになる。工程表の管理や検査報告の作成、管理も行え、それに合わせて業務を行うことで、施工状況の見える化や業務効率化、施工品質向上につながるという利点がある。

●導入SaaSの全体像

 創業7年の同社は、昨今のスタートアップの例に漏れず、バックオフィス業務の多くにSaaSを導入している。全体像は次の通りだ。

●会計はfreee

 会計周りはfreeeを導入している。ただし入れてからまだ1年経っておらず、それまでの会計ソフトから切り替えたばかりだ。「最近まで併行運用しており、直近に完全移行したところ。クラウドなので自動的に法改正に対応してくれたり、API連携が柔軟にできたりする。まだ慣れていないこともあり、使いづらいと感じる時もあるが、概ね満足している」と、コーポレート本部の青木勝則経営管理部長は話す。

 freeeについては、CRMと連携しての請求書発行から始まり、その後、社員の経費精算対応、会計ソフトの完全移行を実施した流れだ。

 給与計算などは外部の社労士に出しており、すべてをSaaSで固めているわけではない。それでも「ようやく面でSaaSが揃った感じ」だという。

●労務管理はSmartHR

 労務管理にはSmartHRを使っている。2019年の夏の導入で、ちょうど社員がグッと増加するタイミングだったという。「入社書類を集めるのが本当に大変だった。そこが狙い通り、ほぼペーパーレスになった」と青木氏は評価する。

 人事評価は21年に導入したカオナビだ。それまではスプレッドシートを使って管理していた。「評価などセンシティブなものは権限管理が大変。閲覧、編集などの権限をマスタ管理でき、たいへん便利になった」という。Googleスプレッドシートでは、異動があるたびに権限を付け替えていたのだが、そこから解放された。

 採用管理にはHRMOSを使っている。採用情報やステータスの一元管理ができるところが魅力だという。

●法務にクラウドサインとLegalForceキャビネ

 契約書の管理にはLegalForceキャビネを使っている。「スプレッドシートなどで更新する手間がなく、契約期限の更新時にお知らせがもらえる」と経営戦略本部の法務部長、アライアンス推進部長の岡本杏莉上級執行役員は評価する。直近4カ月で契約の発生件数が増加したのがきっかけだ。業務委託契約やパートナー契約など、月間30件ほどの契約を管理しなくてはいけないことから導入を決めた。

 電子契約にはクラウドサインを使っており、そのデータをそのまま流し込めるところが便利な点。顧客以外との契約については、同社から電子契約締結を依頼するときは基本的にクラウドサインを使っている。取引先からの契約も、すでに2〜3割は電子化されており、今後さらに利用率を上げる予定だという。また、顧客と交わす自社サービスの利用契約については顧客管理ツールとの親和性からDocuSignを使用しているが、こちらもほぼ電子化が完了している。

 紙でもらった契約書はスキャンして以前から電子データとして保管していたが、契約書台帳を作成する手間があった。LagalForceキャビネのOCR機能とAIによるデータ抽出により、この手間のかかる作業もほぼ自動化できたという。

 「OCR機能は事前の評判通り。手書きの部分など、完璧には読み取れないこともあるが、手動補正機能があって、それを使えば基本的に修正される。自社のリソースを割かずにより完璧に取り込んでくれるサービスもあったが、当社が求める要件と価格のバランスを勘案した結果、LegalForceキャビネが最もマッチした」(岡本氏)。また、外部に契約書の電子化までアウトソースしてしまうと、自社のフットワークが重くなるというのも理由だ。

●残りは人事のエンタープライズ系くらい

 いったん必要なSaaSは導入できたというのが青木氏の見立てだ。すでに紙を見るのは一部の契約書くらいになっており、ペーパーレス化も一段落した。

 ちなみにグループウェアにはGoogle Workspaceを使い、ワークフローにはGoogle Workspaceを拡張する「rakumo」を導入している。社内チャットは「Slack」、そして情報共有には「Confluence」を活用している。

 当連載では、各社がどんなSaaSをバックオフィスに導入しているのか、その実態を聞く。自社の利用しているSaaSについて話していただける企業があったら、ぜひ編集部まで連絡してほしい。