大手紳士服店の「洋服の青山」が、スーツを扱う“お堅い企業”からイメージチェンジを図っている。躍動感あふれるマネキンをショーウィンドウに展示して話題を集めているほか、ツイッターの公式アカウントは直近2年でフォロワー数を20万人以上増やしている。一体、どのような戦略を取っているのか。担当者に話を聞いた。

 「ジョジョ立ちするマネキン発見」。ツイッターでは、洋服の青山が展示したマネキンが、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に登場するキャラクターの独特なポーズに似ているなどと度々話題に上っている。

 「スーツの軽さをアピールするために取り入れたのが始まりです」

 こう話すのは、青山商事リブランディング推進室副室長の平松葉月さんだ。

 同社が最初にこのマネキンを取り入れたのは、新型コロナウイルス流行初期の2020年3月末。大きな動きやポーズを取るマネキンにスーツを着せることで、スーツの軽さなど機能性をアピールすることを目的に、京都河原町店(京都市中京区)のショーウィンドウに展示した。しかし、直後の4月には緊急事態宣言が発出され、店舗は一時閉店。一方、この間もショーウィンドウの展示は続き、これを見た一般人のSNS投稿から話題が一気に拡散した。

 「閉店時にお客さまからの投稿で話題になったことに驚きました。ショーウィンドウが持つお客さまとのコミュニケーションツールとしての価値を改めて実感しました」と平松さんは話す。

 この躍動感に満ちたマネキンは「パルクールマネキン」と呼ばれる。道具を使わずに走る、飛ぶといった動作だけで目的地にたどり着くフランス発祥のスポーツ「パルクール」の動作を取り入れたことが由来だという。

 パルクールマネキンを作っているマネキンの老舗メーカー、トーマネ(東京都中央区)の担当者によると「もともとマネキン人形は左右シンメトリー(左右対称)で、服にしわができず、着せやすいことが基本」だったという。一方、このために似た仕様のマネキンが多くなり、価格競争となっていたため、トーマネは従来のルールから逸脱し「誰も見たことのない人の魂を揺さぶるようなポーズを創出したい」と考え、15年頃から制作を始めたという。

 洋服の青山もトーマネからマネキンをレンタルしている。スーツの機能性をアピールする目的で用いたが、「ちょっと面白いことをして話題になるといいねとは話していました」と、多少、話題作りを意識していたことを平松さんは打ち明ける。

 1度目のSNSでの大きな反響から間を空けず、5月の連休明けには、リモートワーク時のオンライン会議で“ありがち”な要素をマネキンに取り入れた。上半身だけスーツを着せ、下半身はパンツ姿でデスクワークするマネキンを同じ京都河原町店のショーウィンドウに展示すると、再び大きな話題になった。

 1度目の本社発の企画とは異なり、2度目は京都河原町店の従業員のアイデアだったといい、発案した30代前半の男性従業員には社長賞が贈られた。

 紳士服を扱う堅いイメージが長年つきまとってきた洋服の青山は、パルクールマネキンを通じて「面白いことをやっている」と世間への意外性をアピールできたところに、一定の成果を見出している。

●SNSでもエゴサーチで積極アピール

 イメージチェンジはマネキンに限らず、公式ツイッターアカウントにもその傾向がみられる。洋服の青山に関してつぶやく投稿があると、積極的に「いいね」を押したりリツイートをしたりして、投稿者と関わろうとする。

 こうした動きに対し、「企業努力のエゴサーチ(評判チェック)いいね! 洋服の青山で結婚式用のスーツ買おうかな?」などという投稿も見られ、好意的に受け止められているようだ。

 このほかにも、アカウントをフォロー、リツイートをすれば、洋服の青山の店舗で利用できるギフトカードを抽選でプレゼントするキャンペーンを実施するなど、地道なPR活動を継続。この結果、フォロワー数は19年10月の1万7000人から、22年4月現在で22万6000人と、2年半で20万人以上増えた。

 コロナ禍は3年目に突入し、在宅ワークという新しい生活様式が定着。スーツを着る人が減り、紳士服市場はその影響を大きく受けている。この間、スーツのカジュアル化が進み、「アクティブスーツ」といった新しい形態の商品も出てきている中で、紳士服店のブランドイメージそのものが変化を求められているのかもしれない。

 「堅いイメージとアクロバットという真反対の組み合わせが、お客さまに意外性を持って受け止められているのかなと思います。これまで伝えきれていなかった当社の良さを引き続き伝えていきたい」と平松さんは話す。

 洋服の青山は今年も機能性に優れた商品をアピールする際に、首都圏や駅前の店舗でパルクールマネキンを活用していく方針だという。