デジタル庁は4月26日、事務方トップの石倉洋子デジタル監が同日付で退任する人事を発表した。後任には同庁最高デザイン責任者(チーフ・デザイン・オフィサー=CDO)の浅沼尚氏が就く。

 浅沼氏は、1976年生まれで現在45歳。慶應義塾大学院理工研究科修了後、東芝に入社。同社の工業デザイナーなどを経て、21年9月のデジタル庁発足に伴いCDOに就任した。

 浅沼氏は26日の就任会見で、生活者視点でのサービス開発と、チーム作りの2点に専念すると説明。「生活者にとって分かりやすい行政サービスを各省庁、自治体が届けられるように、その土台を作ることに注力する」と意気込みを語った。

 退任した石倉氏は一橋大名誉教授で、経営戦略やグローバル人材の活用など、民間で培った知見を期待されて就任したが、体調不良を理由に約7カ月での退任となった。

 石倉氏の退任について記者から問われた牧島かれんデジタル相は「本人から退任の申し出があった」とし、「本人の気持ちにも関わるので詳細は控えたい。デジタル監には任期があるものではないが、石倉さんにはご尽力をいただいたと思っている」と述べるにとどめた。

 浅沼氏の就任会見全文は以下の通り。

 この度、デジタル監を拝命した浅沼尚です。

 まず、前デジタル監の石倉さんのデジタル庁立ち上げから今日までのご尽力に心からお礼申し上げます。多くの職員が石倉さんから経営戦略、経営組織、グローバル体制、これらの専門知見を学びました。そして、デジタル庁という新しい組織の在り方を描いたいただきました。

 石倉さんは初代デジタル監として、デジタル庁というまったく新しい組織を立ち上げ、そしてデジタル庁という新しい組織の文化の醸成を導いていただきました。本当にありがとうございました。

 本日は、私の役割と抱負についてお話したいと思っております。

 私の前職は、デジタル庁のCDOです。これまで石倉さんと一緒にCDOとして、デジタル庁の立ち上げに取り組んできました。またサービス開発の面においては、CDOとして生活者視点でデジタルサービスや行政サービスを作る、そのことの大事さをデジタル庁の中で共有し、関係者と共有し、ワクチン接種アプリや、マイナポータルなど、行政のデジタルサービスの開発をCXOの1人としてリードしてきました。

 デジタル監に職が変わっても、私の使命は生活者視点のサービスを作り、それを届けることだと、それを届けるチームを作ることだと考えています。

 これを踏まえて、当面は2つの領域に注力いたします。

 まず1つ目はサービス。

 デジタル庁では「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」というミッションを掲げています。このミッションにもとづき、サービスを生活者視点でデザインすることの考え方やアプローチをデジタル庁の中に浸透させていきます。

 また、生活者視点でサービスを作ることに求められる、生活者の声や要望に基づき、行政サービルを企画構想すること、そして事実やデータに基づき、サービスを改善するといったところの環境や仕組みも整備していきます。

 生活者にとって分かりやすい行政サービスを各省庁、自治体の方々が届けられるように、その土台を作り、それを確実に届けることに注力します。

 2つ目はチーム作りです。

 デジタル庁の大きな役割の1つは、デジタルインフラを今後5年で作りあげることです。そのためには、志を共有した持続可能なチーム作りが必要だと思います。デジタル庁をはじめ、中長期視点でプロジェクトに関わる皆さんが、同じ目標に向かい、十分に力を発揮できる、そのようなチーム作りに注力していきます。

 また、デザインの本質は、人間中心のアプローチで課題を解決することです。チーム作りにおいては、組織の立ち上げに見られる課題がありますが、その課題を一つ一つ整理し、職員そして関係者の視点で課題を解決し、皆がゴールに向かって働ける環境を整備していきます。

 オープンな組織文化の形成、多様な専門性を備えた組織体制、個々の職員のスキルの向上、また各府省庁、自治体の皆さま方、そして国内外のステークホルダー、サポーターの皆さま方との連携も引き続き推し進めていきます。

 これら2つの領域に注力することを優先し、政策については当面政府にお任せしたいと考えています。

 デザインを起点としてサービス作り、組織作りを主軸としつつも、デジタル監として、デジタル庁全体の課題に取り組み、牧島大臣を適切に補佐していきます。

 デジタル監という重い職責を果たすにあたり、デジタル庁設立の経験を共有し、何より、それぞれの分野の専門家であるCXO、顧問の村井さん、デジタル審議官の赤石さんらをはじめ、職員の皆さま方と引き続き、一緒に働けることを大変心強く感じています。

 行政官が持つ社会制度に関する深い知見と、国作りへの高い志、そして、民間人材の持つ専門性が融合する新たな行政組織であるデジタル庁が、行政のデジタル化を支え、そして人に優しいデジタル社会の実現をけん引できるよう尽力していきます。

 できるだけ早くご報告できる成果を出して、また皆さまにお会いしたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。