●連載:Q&A 総務・人事の相談所

総務や人事の現場で起こる疑問を、Q&A形式で回答します。回答を見るには、会員登録が必要です。「ITmediaビジネスオンライン 総務・人事通信」と合わせてお読みください。

Q: 当社は、社員数20人程度の製造業です。最近では、小規模の企業でも人事評価制度を導入して上手く経営に生かしている例が増えてきていると聞き、当社でも取り入れていこうかと考えています。ただ、幹部の中には20人程度の規模なのだから経営者の目も行き届くし、細かい評価制度は不要ではないかという声もあります。小企業でも評価制度を活用するメリットはあるのでしょうか?

●メリットはあるが、一歩間違えば「社員の不満」につながることも

A: 評価制度の活用方法によっては、小企業でも評価制度を活用するメリットは十分にあります。

●「評価制度」導入の指標は?

 一般的に、社員数が50人程度の規模になってくると、人事評価制度の導入を検討しはじめる企業が多いようです。

 人数が少ないころは、経営者の目が届くので、それなりに公平に評価して給与や賞与を決めることができます。50人を超えてくると「現場まで目が届かない」という理由から評価制度運用への関心が高まります。

 確かに人事制度における「公平な処遇」という意味では、規模が大きくなれば社員全員のことを誰か一人で見ることができなくなり、制度の必要性が生じてきます。人事制度を策定することで、社員の仕事ぶりを「何をもって評価するのか」「できればどの程度の昇給をするのか」などをルールに定めることができ、一定の公平性が保たれることになります。

 では、50人以下の企業では評価制度を取り入れるメリットはないのでしょうか。これについては、「評価制度の活用方法によっては、十分にメリットがある」と考えます。ここでいう「活用方法」について、評価制度が持ついくつかの機能的側面から考えてみることにしましょう。

●(1)人事査定の機能

 会社が求める成果ないし行動の評価基準を定めて評価することで、賃金査定や昇格査定を行うことができます。一貫性のある基準に基づいて評価されることで公平性を担保し、社員のモチベーション維持・向上を図ることが可能になります。

 この「人事査定の機能」として評価制度を用いることについては、小企業では比較的メリットが少ないケースがあります。というのも、表題の企業のように20人程度であれば、「誰が成果を出しているのか」「誰が頑張っているのか」を経営者も把握しているでしょう。加えて、全社的にも序列はある程度自明であるため、こと細かに評価基準を設けて査定をしても結果は変わらないことが多いと思われます。あるいは、変に細かい基準で査定することで社内の共通認識と異なる結果が出てしまい、かえって社員の不満につながることも懸念されます。

●(2)人材育成の機能、あるいは経営方針の伝達機能

 階層別の評価基準を設定することで、社員にとって「何ができれば」「どうなるのか」が可視化されます。社員は努力すべき方向性が見え、成長への動機付けや行動の促進につながることが期待できます。

 また、会社が経営方針をダイレクトに評価指標などに落とし込むことにより、社員に「どのような成果・行動を求めているか」を具体的に示し、それに向けた社員の行動ベクトルを合わせることも可能になります。

 本来、評価制度を通じて会社が求める事柄を明確にしたとしても、全社的に浸透させていくことは容易ではありません。ただ、小企業では比較的経営陣と社員の距離感が近く、深いコミュニケーションをとることができる機会も多くあるため、浸透ハードルは低いと考えられます。そのメリットを最大限生かし、「人材育成」ないし「経営方針の伝達」といった機能を重視して評価制度を活用するのであれば、小企業であっても(むしろ小企業だからこそ)十分に効果が期待できます。

●著者紹介:森中謙介(もりなか・けんすけ)

 (株)新経営サービス 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント。中堅・中小企業への人事制度構築・改善のコンサルティングを中心に活躍。各社の実態に沿った、シンプルで運用しやすい人事制度づくりに定評がある。近年では、シニア社員活用に向けた人事制度改定の支援に多く携わっている。「定年再雇用・定年延長制度コンサルティング」に関する問い合わせはこちらまで。

 また、書籍やセミナー等を通じた対外的な発信も積極的に行っており、著書に『人手不足を円満解決 現状分析から始めるシニア再雇用・定年延長』(第一法規)、『社員300名までの人事評価・賃金制度入門』(中央経済社)、『9割の会社が人事評価制度で失敗する理由』(あさ出版)、『社内評価の強化書』(三笠書房) がある。