ヤフーは4月1日にリモートワーク制度「どこでもオフィス」を改定し、居住地・通勤手段の制限を撤廃した。日本国内であればどこにでも住むことができ、特急や飛行機など好きな移動手段で通勤が可能になった。

 PayPayやメルカリ、LINEも勤務地制限の撤廃を発表しており、同様の取り組みが注目を集めている。

 ヤフーはどうして、居住地・通勤手段の制限を完全撤廃することができたのだろうか。コーポレートグループ PD統括本部 ビジネスパートナーPD本部の岸本雅樹本部長に話を聞いた。

●居住地・交通手段の制限を撤廃

 同社は2014年に、オフィス以外も含めて働く場所を自由に選択できる「どこでもオフィス」制度を開始した。はじめは、リモートワークは月5回までという制限を設けていたが、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年に、無制限で活用できるように変更した。

 しかし、居住地には「出社指示があった際に午前11時までに出社できる範囲」というルールが設けられ、移動手段も電車や新幹線、バスのみで、特急や飛行機などは認めていなかった。また、交通費は片道6500円までとしていた。

 4月からの新制度では、日本国内であればどこでも居住可能になった。移動手段の制限も解除。交通費も1カ月あたりの上限のみ15万円と定め、片道上限も撤廃した。

 また、希望者へのタブレット端末の貸与や懇親会費の補助など、リモートワーク時の働く環境を整えるためのサポートも充実させた。

●「コロナが終わればまた出社に戻る」に疑問

 新型コロナウイルスの流行により、今ではリモートワークは一般的だが、「コロナ禍が落ち着いたら、また毎日出社に戻るのではないか」という意見もよく耳にする。

 なぜヤフーは、新型コロナウイルスの終息を待つことなく、居住地制限を撤廃したのだろう。そこには「コロナがいつか終わったらまた元通りになる」という考えをばっさり切り捨て、働き方をアップデートしようとするヤフーならではの考えがあった。

 「今まで、社員が対面で集まる機会は、メリットがあるならば続けていきたいと考えており、『午前11時までに出社できる範囲』という制限を設けていました。どこかで、新型コロナウイルスが収束したら、またオフィスに集まることもあるのではないかと、固定概念を持っていたように感じます。新型コロナウイルスが流行して2年がたち、『本当にまたオフィスに全員が集まることはあるのか』と考えるようになりました。確信が持てないのに制限を設けるより、住む場所の選択肢が広がる方が、会社にとっても社員にとってもメリットが多いと考えています」(岸本本部長)

●実際の利用者

 新制度に関して、ヤフー社員も好意的だという。

 新制度を利用してみたいか聞くと、「利用する」が11%、「利用を検討している」が22%、「機会があれば利用したい」が49%だった。

 移住を検討する理由について聞くと「安くて広い土地や住宅が手に入るから」(49%)、「気候や自然環境に恵まれたところで暮らしたいから」(48%)、「趣味と仕事を両立する暮らしがしたいから」(45%)、「これまでの働き方や暮らし方を変えたいから」(35%)、「ふるさと(出身地)や、なじみのある地域で暮らしたいから」(35%)などの意見が挙がった。

 すでに東京ではなく、地方に移住している社員もいる。

 ある社員は、地方でゆっくり過ごしながら働くことを選択し、静岡県三島市に移住。趣味のアウトドアを楽しみながら仕事に励んでいるという。

 ある社員は、新型コロナウイルスの影響で急にリモートワークにシフトし、部屋のスペースに限界を感じ、パートナーと3歳の息子と東京都内のマンションから軽井沢に移住したという。自然の中で働くことでストレスがたまらない環境に身を置くことができ、仕事に対するパフォーマンスがあがったとコメントしている。

●オフィスはどうする?

 制度がどんどんアップデートされ、社員のリモート率が高まるなか、オフィスはどうするのか。岸本氏は「オフィスの必要性を再定義し、実験エリアとしてさまざまなメリットの提供を目指している」と話す。

 例えば、自宅で集中できないからオフィスに行くという場合には、会話禁止の「集中エリア」で、「1人でとにかく集中したい!」というニーズに応える。

 オフィスに行ったら社員に会い、情報交換や議論をしたいという場合には、「コミュニケーションフロア」など、用途に合わせてオフィスの使い方も選べる状態を目指している。

●完全リモートではない ヤフーが考える理想の「働き方」

 居住地制限を完全撤廃するということは、ヤフーは全社をあげて完全リモートワークに切り替える方針なのだろうか。

 すると、岸本本部長は「ヤフーはフルリモートを目指しているわけではない」と話す。

 「会社が持続的に成長するために、社員全員にとって最適な働き方を考えています。社員一人一人に働き方の選択肢を提供し、自分なりにベストな状態で働くことで、ウェルビーイングが高まり、多様な人が活躍できる土壌が整うと考えています。実際、『どこでもオフィス』を拡充したことで、働き方がネックとなりヤフーで働くことを諦めていた優秀な人材、このような働き方を実現したからヤフーに興味を持ってくれた優秀な人材などの獲得につながっていると感じています。さらに、働き方の自由度が増すことで、選択・決断に責任を求められ、社員の自立にもつながります。今後も社員のウェルビーイングを高める選択肢を増やし、生産性向上、会社の成長を目指していきます」(岸本氏)