早いもので2022年も折り返しの時期になった。新入社員が入社して3カ月目に入る。4月は研修期間、5月に本配属はされるもののまだまだ慣らし期間。しかし、6月になったら「そろそろ何か成果を出してほしい」と思うものだ。営業という成果が見えやすい職種であればなおさらだ。できるだけ早く戦力になってほしい。

 だからと言って昔のように「契約が取れるまで帰ってくるな!」などとパワハラめいた教育をするわけにもいかない。そんなことをすれば大問題になるし、そもそも逆効果だ。新入社員にやる気になってもらい、成果を出してもらうのにはどのようにコミュニケーションを取るべきか、どうしたら自発的に営業という仕事に取り組んでくれるか。その方法について紹介していく。

●新入社員は冷めている?

 一昔前の子育てではよく「手がかかる子ほどかわいい」といった言い方をした。いわゆる“悪ガキ”は手がかかるものの愛着が生まれるもの。しかし、今は手がかからない子どもが増えている印象を受ける。筆者の娘に反抗期はなく、友人からは「今の子は手はかからないが、どこか冷めている感じがする」といった話を聞く。1人の親として「若者のモチベーションを上げるのは難しい」と感じる。

 これは新入社員に対しても言えることかもしれない。手のかかる社員は少なくなったものの、「結果を出して絶対にトップ営業になります!」といった熱い若者もまた多くないように思う。言われた仕事はそつなくこなす反面、やはりどこか冷めている。部下を持っている人であれば、指示待ち社員を“自ら積極的に動いて結果を出す社員”に変えたいと思うものだ。

 以前、営業部のマネジャーに対して研修をした際に「今の新人は何も聞いてこないから距離が縮まらない」「どこでつまずいているのか分からずフォローできない」といった声が参加者から上がった。

 今の営業現場はチームメンバーの管理監督業務に専念しているマネジャーは多くなく、自身も営業として最前線に立ちながら部下を育てるプレイングマネジャーが増えている。リクルートワークス研究所が発表した「マネジメント行動に関する調査2019」から、約9割のマネジャーは「自分の仕事時間の一部を何らかのプレイング業務に割いている」ことが分かった。ただでさえ忙しい営業職の業務に部下の育成という役割が追加されているのが実態だ。

 この状況を考えると、上司の忙しい雰囲気から、「話しかけづらい」と感じている新入社員もいるかもしれないと推測できる。そうは言っても、業務を進めるうえで「疑問点の解消」は重要だ。なぜ上司に話しかけられないのか、新入社員側にはこんな理由があるのかもしれない。

●誰かに相談するという習慣が失われた世代

 新卒として入社する世代は、いわゆる「デジタルネイティブ世代」に当たる。幼少期からインターネットが身近に存在していた1990年以降に誕生した世代を指す。学生のころからスマートフォンを使いこなし、分からないことはインターネットで検索して解消。簡単に情報にアクセスできる状態が当たり前なので、そもそも人に相談する、質問するといった習慣が身に付いていない可能性も考えられる。そして、それが仕事の場でも起こっているのかもしれない。

 自分で調べてやってみて、成功や失敗の経験から学ぶというサイクルも重要だ。一方で成果を出すためにはハイパフォーマーから学ぶことも必要だと思うのが筆者の考えだ。新入社員に見せて、やらせて、改善点をフィードバックする。新入社員側が積極的になれないのであれば、まずは上司が歩み寄り、自分のやり方に巻き込んでいくしかないだろう。

●新入社員への具体的な働きかけはどうすればいい?

 実際に、筆者が若者とコミュニケーションを取っている方法を例に挙げてみたい。筆者は13年前から大学の講師をしている。この春、3年ぶりにリアルの大学の授業が再開した。以前から感じてはいたものの、今期はとくにコミュニケーション能力が低い学生が目立つ。

 こちらが声をかけるまで話をしてくれない学生がほとんどだ。一度話し始めれば、会話が弾むことが多いにもかかわらず、積極的にコミュニケーションを取ってくる学生は極めて少ない。

 この状況を改善するために工夫していることがある。授業の課題をメールで提出する際に「今日の授業について必ず一つ質問するように」とアナウンスするようにした。すると多くの学生から質問が寄せられた。授業で回答するときもあれば、直接説明することもある。メールというツールを媒介することで、コミュニケーションが取れるようになった。

 「なにか分からないことがあったら質問するように」と伝えても「忙しそうだし、こんなことを聞いていいのか」「自分で調べたほうがいいかもしれない」と遠慮する新入社員もいるだろう。ツールを利用し、新入社員に対して「1日一つ疑問点をメールで送る」といった業務を習慣化させるところから始めてみる。コミュニケーションのきっかけを増やすことが目的なので、質問が無ければ「1日の活動報告」でもいい。

 「上司にもっと気軽に質問していい」「分からないことは聞いていい」といった部下の心理的安全性を高める動きが上司側に求められる。このような積み重ねが「成果を出す営業」の第一歩となる「自分から情報を取りにくる部下」を育てることにつながる。

 その後も直接相談をしてこなくても、営業プロセスでつまずいている箇所を見つけてマネジャー側から継続的に話しかけに行くことも不可欠だ。例えば、なかなか新規アポが取れない新人営業には「新規アポ獲得に苦戦しているみたいだが、どの辺でつまずいているのか?」と具体的に聞いてみるといい。

 「テレアポでは緊張して言いたいことが言えない」「相手のリアクションが見えないのが不安」など新人も具体的な悩みを返してくれるだろう。まずは「自分も新人のころは苦手だった」とできない状態を受け入れ、トークスクリプトの作成やロープレなどの解決策を提示する。

 トークスクリプトの作成とロープレまでをセットで一緒に行い、「明日からこのスクリプトで30件アタックしてみて、報告してくれるかな」と具体的な行動目標を共有する。翌日、時間を取ってうまくいった点とうまくいかなかった点を分析し、次回に生かす。新規アポの獲得という成功体験を数件獲得するまで根気強く並走することが重要だ。一度、自分の中で成功体験を得ると、「あの時できたのだから」という気持ちで取り組めることも少なくない。

●部下のマネジメント「言ってはいけないワード」とは?

 新入社員に報告を求める際に、大切なポイントがある。“質問や相談について否定的な意見を言わない”ということだ。せっかくの質問に対して「そんな事も分かっていなかったのか?」などと言ったらどうだろう。コミュニケーションを取ろうという意欲を削ぐことになるのは間違いない。

 どれほど基本的な質問や相談だとしても「なかなかいいところに気が付いたね。ベテランになるとそういった部分が見えなくなるんだ。ありがとう」「昨日はこんな活動をしたんだね。なかなかやるじゃないか」とまずは肯定する。質問がしやすくなることで、質問数も増えるかもしれない。褒められれば仕事のやる気にもつながる。

 話しやすい空気づくりや小さな会話の積み重ねによってコミュニケーションのハードルを下げ、関係構築していくことが、成果を出す営業に育てるためにまずマネジャーがやるべきことだと言えるだろう。