なぁ皆、就活って6月解禁だよな、、、?6割内定持ってるってのは嘘だよな?なぁみんな返事してくれよ──就職活動中の学生とみられるTwitterの投稿が注目を集めている。投稿には「就活もう終わった」「建築系だと、春休み明けで大体の人は内定貰(もら)っとる」など、就活中とみられるアカウントからさまざまな意見が出ている。政府の就活日程に関する方針と、就活生向けの民間調査の結果を比較し、この投稿の妥当性を検証する。

 注目のツイートをしたのはネルさん(@nerufoss)。Twitterアカウントのプロフィールには「23卒」との記載があることから、就活中の大学生とみられる。記事執筆時点(6月6日午後2時)で約5550リツイート、約6万1000いいねを記録している。ツイートには「もう4年生は内定貰ってるらしい。逆に貰えない人は中小探した方がいいのかも」「6月の就活解禁前に、青田買いをする企業も多い」など大企業は既に選考を終えていると指摘する意見がある一方、「残り4割はこれから!」と励ましの意見も出ている。

●23卒の内定率は65.4% リクルート調査

 就活サイト「リクナビ」を運営するリクルートが5月24日に発表した「就職プロセス調査 」によると、23卒の5月15日時点の内定率は65.4%(前年同期比6.2ポイント増)。「選考が進み接点を持つ企業数が減ってきている様子がうかがえる」という。

 業種別では「情報通信業」が内定率29%と、他業種と比較して突出しており、次点の「サービス業・その他」(同14.4%)の倍近い内定率を示している。従業員規模での内定率は「300〜999人」(同39.5%)、「1000〜4999人」(42.1%)、「5000人以上」(30.6%)となっており、従業員数が多い大手企業の3社に1社近くが既に内定を出しているとみられる。上記のツイートへの一部の指摘は数値面でも実証されているといえそうだ。

 「あさがくナビ」を運営する学情は56.9%(同4.6ポイント増、4月末時点)、「マイナビ」を運営するマイナビは47.3%(同6.4ポイント増、4月末時点)の内々定率があると、それぞれ発表している。

 5月15日時点の「リクナビ」に対し、4月末時点の「あさがくナビ」「マイナビ」で対象期間は異なるが、3調査に共通するのは、いずれも前年同時期と比べて内定率が増加している点で、大手企業を中心に選考時期が早期化している状況がうかがえる。学情調査では理系内定率が70.7%(同7.7ポイント増)、マイナビ調査では平均内々定保有社数は1.7社という各社で特色ある結果も示している。

●“6月1日解禁” 政府「あくまで要請で、強制ではない」

 企業が既に、多くの学生に内定を出していることが各社のデータから明らかになっている。だが、ネルさんが指摘した“6月解禁”というのも、実は一理ある。政府が経済団体に要請した方針では、3月1日以降が「広報活動開始」、6月1日以降が「採用選考活動開始」とされているためだ。

 政府は方針で広報活動と採用選考についてそれぞれ以下のように定義している。

広報活動とは、採用を目的として、業界情報、企業情報、新卒求人情報などを学生に対して広く発信していく活動をいう。その開始期日の起点は、自社の採用サイトあるいは求人広告会社や就職支援サービス会社の運営するサイトなどで学生の登録を受け付けるプレエントリーの開始時点とする

採用選考活動とは、一定の基準に照らして学生を選抜することを目的とした活動をいう。具体的には、選考の意思をもって学生の順位付け又は選抜を行うもの、あるいは、当該活動に参加しないと選考のための次のステップに進めないものであり、こうした活動のうち、時間と場所を特定して学生を拘束して行う面接や試験などの活動をいう

 こうした定義がある中、政府方針に反して、多くの企業が内々定を出している状況を政府はどう受け止めているのか。23卒の就活日程に関する方針を手掛けた内閣官房は、採用活動の日程が守られない現状について「学生に混乱をもたらすとともに、学生が学修時間などを確保しながら安心して就職活動に取り組める環境を大きく損なう」と指摘する。

●政府方針に“グレーゾーン”も

 政府の方針があるにも関わらず、企業が早期選考を進める背景の一つが“グレーゾーン”の存在だ。

 就活には企業に応募するための「エントリーシート」(ES)とWebテストが存在するが、政府は採用選考活動に関する注釈で「エントリーシートの提出、Webテストやテストセンターの受検などによる事前スクリーニングについては、日程・場所などに関して学生に大幅な裁量が与えられていることから、上記の採用選考活動とは区別する」と明記している。

 この解釈を内閣官房に確認すると「採用選考を目的としないものであれば、6月1日以前にES提出とWebテストを実施することは認めている」と回答した上で「説明会参加のためのESなどは制度上あり得るが、採用選考を目的としたものは全て『選考』という扱いになる。選考活動に直結するESの受け付けやWebテストの実施は6月1日以降が望ましい」との認識を示した。3月の広報活動解禁以降、一部企業が早々にESの受け付けを締め切る背景には、政府のグレーゾーンの存在があったのだ。

 その一方で、政府の方針も「あくまでお願いベースであり、強制ではない」(内閣官房)とも指摘しており、内閣官房は「学生が学業に専念できるよう、企業にはできるだけ制度を守ってほしい」と企業に呼び掛けている。

 政府はその他、「広報活動または採用選考活動の開始日より前に行うインターンシップなどについては、募集対象を卒業・修了年度に入る直前の学年に在籍する学生に限定しないこととし、広報活動や採用選考活動と異なるものであることを明確にすること」「卒業・修了後少なくとも3年以内の既卒者は、新規卒業・修了予定者の採用枠に応募できるようにすること」なども方針に盛り込んでいる。

●早期選考促進の背景に経団連の指針

 他方で、選考の早期化を進めたい企業側の気持ちも理解できる。優秀な人材は、早期に確保しなければ、他社に取られてしまう恐れがあるためだ。特に理系人材は、企業間で人材の獲得競争が加速している。

 企業の早期選考化を進めた“元凶”が、かつて日本経済団体連合会(経団連)が主導した「採用選考指針」(「倫理憲章」とも呼ばれた)だ。指針では、現行の政府方針同様、企業の広報活動や選考解禁日に関する方針を示していたが、経団連加盟企業以外は対象外となっていた。

 そこを外資系企業や新興のIT企業、ベンチャー企業が「抜け穴」として突き、優秀な学生をインターンなどで早期に確保する動きが多発した。つまり、経団連の指針を順守した企業が、損する事態を招いたのだ。

 こうしたことから、大手企業でも早期インターンなどで内々定を出すケースが徐々に増加。経団連の指針が事実上の紳士協定で、強制力もなく、罰則規定がなかったことも、企業の早期選考を促進した。その後、経団連は、指針が形骸化しているとして、20年卒を最後に採用選考指針を廃止。21卒以降は政府が、企業向けの方針策定を引き継ぎ、現在に至る。

 「早起きは三文の徳」という言葉があるように、早期に就活を開始し、インターンなどに積極的に参加した学生が、企業から早期内定をもらうのは「努力の対価」として当然のことだ。政府は方針を策定する理由に、学業への専念などをことさらに強調しているものの、研究が忙しい理系の学生や教育実習に参加する学生、公務員試験の受験を目指す学生など一部を除き、多数派とみられる文系の学生を中心に、優秀な学生こそ、学業と就職活動を両立できるという見方もあるだろう。

 大学入学直後から就活を意識する学生がいる一方で、就活日程に関して混乱が生じているのも事実だ。学生だけでなく、政府方針の解釈を巡り、企業側が混乱している可能性もある。政府はこうした事態を受け止め、就活日程の方針を撤廃し、通年採用を本格導入するのか、それとも政府方針に強制力を持たせるのかなど、態度を明確にする時期に来ているのではないか。