外食業界のデジタル化が目まぐるしく進んでいる。配膳をロボットが行ったり、会計を機械で無人化したりと、従業員の業務をテクノロジーが代わりに行う技術の進化が止まらない。

 そんな中、「45秒に1皿パスタを作る」という優秀なシェフもびっくりな機能を持つ機械が登場した。

 45秒に1皿パスタを作る「P-Robo(ピーロボ)」は、プロントコーポレーションとTechMagicが共同で開発した調理ロボットだ。6月30日に、東京・丸の内ビルディング内にオープンするプロントコーポレーションの新業態店舗「エビノスパゲッティ」で1号機が稼働を始める。

●「45秒に1皿パスタを作る」P-Roboとは、どんなもの?

 P-Roboは、フライパンへの具材の供給から、調理、フライパンの洗浄までを自動で行う。同時に4つのフライパンを扱い、4食分の作業を進める。加熱には高出力のIHを用い、底の深いフライパンを高速で回転させることで、短時間で均一な味付けのパスタに仕上げる。

 1食目は約75秒、2食目以降は約45秒でパスタを提供し、1時間で最大90食を調理できる。従業員は盛り付け場所で待機し、パスタを盛り付けてお客に配膳する。

●「物珍しさだけでは続かない」 開発のこだわりは“味”

 プロントコーポレーションとTechMagicがP-Roboの構想を始めたのは2018年で、実用化には4年の歳月をかけたという。プロントコーポレーション常務取締役の杉山和弘氏は「開発に際し、最もこだわったのは“おいしさ”です」と話す。

 「調理ロボットの物珍しさだけでは、なかなかお店は続かないと考えています。ロボットなのにおいしい、ということにこだわって開発しました。均一な味のおいしいパスタをロボットが次から次へと調理し、きれいな盛り付けやサービスは、おもてなしの心を持った人が行います。人とテクノロジーが融合することで、持続可能な飲食ビジネスのモデルができると確信しております」(杉山氏)

●「非現実的」との反対意見 それでも開発に至ったワケ

 開発に当たっては、苦労もあったという。杉山氏は「社内の一部では反対意見もありました。金額はお伝えできないのですが、高い開発費をかけることに社内の反発がありましたし、(開発自体が)『非現実的だ』という声もありました。そんな投資をするくらいだったら、新しい店舗を出した方がいいと言われたこともあります」と振り返る。

 TechMagicの白木裕士代表取締役兼最高責任者も、周囲の意見は厳しかったと話す。

 「当社は2018年の2月に『スマートフォンからワンクリックの操作で、できたてでおいしい料理を作る調理ロボットが当たり前になる世の中を作りたい』と考えて創業いたしました。投資家の方々など周囲から、『調理ロボットは早すぎるのではないか』など厳しいお言葉をいただきました」(白木氏)

 そんな中でも、杉山氏が白木氏に「調理ロボット、面白いね」と声をかけて開発の構想が進んでいったという。その決断の背景には、強い人手不足への危機意識がある。

 杉山氏は「外食業界の人手不足は深刻で、グループ会社で外食の人材派遣業をしているプロントサービスでも受注数の半数も供給できない状態でした」と振り返る。そんな中で、「調理ロボットなら外食業界の人手不足を解決できるのではないか」と考えた。

 ただし、プロントコーポレーションの社内の声からもあったように、このロボットの開発には高い費用が掛かっている。その分、店舗の運営コストを下げることで相応の効果を得られるのだろうか。

 杉山氏に尋ねると、「コスト削減にはつながりますが、まだ実際の検証はできていません。ただ、間違いなく教育費や採用費は下がると考えております。当社では料理スタッフをアルバイトの学生さんなどが担当することが多くありますが、数年で卒業してしまいます。スタッフが入れ替わるたびに調理をイチから教えるのはすごく大変ですが、それがゼロになるのでかなり負担が軽減します。働く人にとっても『難しかったらイヤだな』という心の障壁がこれまであったと思いますので、その分採用も楽になるのではと思います」と答えてくれた。

●5年で50店舗の導入を目指す

 プロントコーポレーションとTechMagicは今後、P-Roboをプロントコーポレーションの他店はもちろん、その他の企業の店舗にも導入していく予定だという。特に、フードコートや大型店舗などでの活躍を見込んでいる。

 「本来であれば、当社のビジネスの拡大のみにこのP-Roboを活用するのが(ビジネス上)良いとは思うのですが、それよりもこの素晴らしいロボットを活用して、外食業界全体が盛り上がることの方が意義があると考えました。ですので(他社など)さまざまな場面での導入も含めて5年で50店舗での導入を目指しています」(杉山氏)

 1人の従業員よりもかなり速いスピードで次々とパスタを作るP-Roboは、外食産業の人手不足緩和の第一歩となるだろうか。パスタに限らずロボットの調理が当たり前の世の中が、遠くない未来に実現するかもしれない。