東京駅は、日本各地へと向かう新幹線の巨大ターミナルである。通勤電車の利用者数は首都圏の他駅よりも少ないものの、長距離列車の利用者数は多い。

 東京駅からは、おおまかに分けて2種類の新幹線が運行されている。「西へ向かう新幹線」と、「北へ向かう新幹線」だ。

 「西へ向かう新幹線」は、東海道新幹線、山陽新幹線、九州新幹線で、2022年秋に開業する西九州新幹線もその仲間に加わる。九州新幹線の車両は東京駅には来ないものの、新大阪や博多で乗り継ぎができるようになっており、1つのグループとしてまとめられる。

 また、西九州新幹線は遠い将来、九州新幹線との接続が予定されている。現状では新鳥栖〜武雄温泉間の開業はどうなるか分からないものの、佐賀県の動向次第で開業のめどは立つだろう。

 「北へ向かう新幹線」は、東北新幹線、北海道新幹線とミニ新幹線の秋田新幹線、山形新幹線、さらに高崎経由で新潟へ向かう上越新幹線と、高崎から分岐する北陸新幹線である。どの新幹線の車両も、東京駅までやってくるのが特徴だ。

 「北へ向かう新幹線」は大宮から分岐を繰り返すのに対し、「西へ向かう新幹線」は基本的に1本のルート、鹿児島中央まで(現段階では)分岐がない状況になっている。となると、それぞれの新幹線が取るシステムや戦略は異なるのである。

●「西へ向かう新幹線」のシステムと戦略

 「西へ向かう新幹線」は、東海道新幹線を中心としたシステムとなっている。ビジネス戦略も、東海道新幹線が中心だ。

 東海道新幹線は「N700A」と「N700S」の16両編成が中心となっており、東京〜名古屋〜新大阪を速達輸送する「のぞみ」がメインのダイヤと、はっきりと決まっている。「ひかり」は1時間に片道2本程度、「こだま」も1時間に片道2本か3本。しかし「のぞみ」は、最大1時間に12本運行ができる。「のぞみ」を中心に、東名阪を最短時間で結ぶことがメインのシステムとなっている。

 そのシステムに適合したサービスが「エクスプレス予約」だ。新幹線のみの乗車を基本としたネット予約システムで、アプリの使い勝手は多くの人から高評価を得ている。年に何度も利用する乗客をターゲットとしており、その人数の多さに合わせてすべてがシステム化され、多くの「のぞみ」を供給して使いやすくすることを基本戦略としている。

 その戦略を縮小したのが、山陽新幹線や九州新幹線である。新大阪〜博多間は「のぞみ」がやはりメインであり、東京方面と直通している。新大阪から山陽新幹線だけを利用する人もいるものの、東京との直通を何よりも大切にしている。こちらでも「のぞみ」は、16両編成である。東京〜新大阪〜博多間を高速で行き来し、さらには新大阪〜博多間の主要駅を行き来する人のために、「のぞみ」は設定されている。

 だが山陽新幹線での「のぞみ」は、東海道新幹線とはちょっと異なる。主たる停車駅のほかにも、列車によって姫路、福山、徳山、新山口に停車する。ここでは、完全に主要駅間の速達列車とするわけにはいかないのだ。

 一方、新大阪からの目線だと対九州のルートがどうしても必要になる。そこで「みずほ」「さくら」といった山陽新幹線と九州新幹線の直通列車が必要となる。

 「みずほ」は「のぞみ」に相当し、下り8本、上り8本しかない。熊本や鹿児島中央と、新大阪を結ぶことをメインとした列車だ。一方「さくら」は本数が多く、熊本から先は各駅に停車する列車もある。「みずほ」の少なさを補っている。

 東京から博多までは16両編成の新幹線が目立つものの、山陽新幹線区間だと「こだま」で8両編成の車両があり、九州新幹線では8両編成と6両編成の車両しかない。東京から乗り継いでいくと、編成が短くなっていくことが分かる。

 しかし、そんな「西へ向かう新幹線」でも、チケットレスサービスは「エクスプレス予約」で共通のシステムとなっている。東海道、山陽、九州は、区間によって異なる列車を走らせても、あくまで1つの「エクスプレス予約」でまかなえるサービスを提供している。全体的に整ったサービスを提供し、中心となっているのは、JR東海の東海道新幹線である。

●多彩な側面を見せる「北へ向かう新幹線」

 東京駅からは、北へも新幹線が発車している。これらの「北へ向かう新幹線」は、路線に応じたきめ細やかなサービスが特徴だ。東京からの主な行き先だけでも、新函館北斗、秋田、新庄、新潟、金沢と、さまざまな地に向かう。その上で直通を大切にしている。

 区間運転の列車では、盛岡、仙台、那須塩原、高崎、長野など、きめ細やかに設定されている。「西へ向かう新幹線」が基本、博多方面にしか向かわない(新大阪や広島を途中駅とする)と考えると、ありようがまったく異なっているのだ。

 それゆえに、行き先に合わせたサービスを提供していくことになる。東海道新幹線のように、特定形式で車両を固めるということはないのだ。

 例えば東北、北海道、秋田、山形新幹線だけでも、E5系、E6系、E2系、E3系と4種類の車両がある。上越、北陸新幹線では、E2(上越のみ)系とE7系・W7系がある。東北新幹線の通勤客向け列車では、「はやぶさ・こまち」の間合い運用でE5系とE6系の併結列車もある。

 東海道新幹線の画一化されたサービスと比べると、興味深いサービスもある。例えば特別車両「グランクラス」だ。「はやぶさ」「かがやき」では、軽食と飲料・茶菓子の提供といったサービスがある。「はくたか」でも同様のサービスはあるものの、10月1日で終了となる。

 その他の列車でも、座席のみの「グランクラス」サービスが存在する。

 グリーン車より優等の座席車を提供しているのは、「北へ向かう新幹線」のみである。一方、チケットレスサービスも「西へ向かう新幹線」とは異なっている。「北へ向かう新幹線」は、JR東日本の予約サービス「えきねっと」と一体となった「新幹線eチケットサービス」で、交通系ICカードやモバイルSuicaと親和性が高い。「西へ向かう新幹線」の交通系ICカードとは、別のICカードを提供する「エクスプレス予約」とは異なるのだ(ただし、交通系ICを使用する「スマートEX」というサービスもある)。

 JR東日本がSuicaの普及を企業戦略の中心に据え、その延長線上で「新幹線eチケットサービス」を導入していると考えると妥当だろう。では「西へ向かう新幹線」と「北へ向かう新幹線」、それぞれの違いの背景に何があるのか?

●特性に合わせたビジネスの展開

 「西へ向かう新幹線」は各種産業の集積地であり、大都市は大きく連なっている場所を走っている。それゆえ、特に東海道新幹線では高頻度運行が必須となっており、それに合わせた座席やチケットレスサービスを提供している。

 一方「北へ向かう新幹線」は、観光客やビジネス客、通勤客など多様な層の利用を前提としており、それに合わせて快適な(あるいはぜいたくな)「グランクラス」サービスなどを提供し、予約システムも「えきねっと」と一体化している。

 東海道新幹線は、東海道本線のビジネス需要がひっ迫する中で生まれ、山陽、九州と延伸を続けても、その流れの中に新幹線が存在している。9月に完成する西九州新幹線の車両は、東海道新幹線、山陽新幹線と同じN700Sだ。こちらでは6両編成、デザインなどは水戸岡鋭治氏によるもので特徴を出しているものの、基本的なところは変わらないのである。

 東北新幹線などは、需要喚起や利便性向上の中で生まれたもので、それゆえにさまざまなサービスを提供する余地があり、工夫も可能になっている。

 東京駅から出る各新幹線は、特性に合わせた戦略を取っている。最適化こそが、高速鉄道ビジネス成功の秘けつである。

(小林拓矢)