パワハラ被害に関するニュースが後を絶たない。もしかしたらあなたが勤めている、もしくは経営している会社にも、パワハラによって多大な精神的、肉体的苦痛を受けている被害者がいるかもしれない。

 「当社に限ってそんなことは……」と思うかもしれないが、前回の記事でも説明した通り、パワハラの加害者は無自覚であることが多く、また被害者は声を上げづらい。

 この記事では、パワハラが表ざたになった際のリスクや、パワハラ被害を未然に防ぐ方法、パワハラが起きてしまった際の対処法などを5つの項目にまとめた。自社に心当たりがある方もない方も、決して他人ごとと思わずに職場環境を振り返るきっかけとしてもらいたい。

●1.パワハラが表沙汰になった際のリスク

 もし、被害者が声を上げて自社内でパワハラが発生していたことが判明し、それが公になったら、組織はどのようなリスクにさらされるのだろうか。

1-1.使用者が負う責任

 まずは、使用者は法的責任と行政責任を負う可能性がある。

・不法行為責任

 使用者は、労働者が職務遂行中に第三者に損害を与えた場合、使用者責任として損害賠償責任を負う(民法715条)。

・債務不履行責任

 使用者は労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)。パワハラの発生は職場の安全配慮義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合がある。

・行政責任

 パワハラ防止法にのっとり、事業主が労働局から助言、指導、勧告といった行政指導を受ける可能性がある。

1-2.加害者が負う責任

 さらにパワハラ加害者は刑事責任と懲戒リスクを負う。

・刑事責任

 加害内容に応じて「傷害罪」(刑法204条)や「暴行罪」(刑法208条)、「脅迫罪」(刑法222条)、「名誉毀損罪」(刑法230条)「侮辱罪」(刑法231条)などが成立する可能性がある。

・懲戒リスク

 ハラスメント加害者として、就業規則にのっとって戒告、けん責、訓告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの懲戒処分を受ける可能性がある。少なくとも、組織内で居場所を失うことになりかねない。

1-3.企業活動への悪影響

 法的なリスク以外にも、企業活動にネガティブインパクトを与えるリスクは多々ある。主なものは、以下の2点だ。

・職場環境の悪化リスク

 従業員がパワハラ行為を受けることによる直接的な被害が甚大なのはもちろんだが、周囲のメンバーがパワハラ行為を目の当たりにしたり、組織上層部が事態を解決しようとしない様子を見たりすることで、メンバーは組織のコンプライアンス意識の低さや自浄作用のなさに愛想を尽かし、モチベーションが低下する。

 その結果、作業ミスの増加、生産性の低下、うつ病罹患者・休職者・退職者の増加などが考えられる。これらにより業績にも大きなネガティブインパクトを与える可能性がある。

・レピュテーション(評判)リスク

 パワハラが行政指導や社名公開、訴訟、マスコミ報道などへと発展することで、SNSや会社口コミサイトなどを通して「あの会社、パワハラが横行するブラック企業らしい」とのネガティブな情報が急速に拡散する。

 結果として「炎上」や「風評被害」などのレピュテーション(評判)リスクに直結し、求人募集や取引先拡大において悪影響を及ぼす。最悪の場合、現行の取引先からも「コンプライアンス体制が整備されていない未熟な会社」と評価され、取り引きが打ち切られることにもなり得る。

 ネットが発達した昨今においては特にレピュテーションリスクによる企業の社会的イメージ悪化は、もう取り返しのつかない事態となるだろう。普段、対外的に「ダイバーシティー」「健康経営」「SDGs」などと、耳に聞こえのよいトレンドワードを掲げている所こそ反動は大きい。そもそもパワハラを発生させないよう、日々の地道な取り組みが求められるのだ。

●2.パワハラを未然に防ぐには?

 このように考えると、パワハラは組織崩壊に直結する不祥事であり、発生してから事態を収拾しようとするのは困難だ。芽のうちにつみ取り、完全に撲滅しなければならない。そのために必要な4つのステップを紹介していこう。

(1)組織トップから明確なメッセージを発信する

 まずは組織方針を明確にすることが必要だ。具体的には、「パワハラは許されないことであり、組織として全従業員が取り組むべき重要な課題である」旨を組織トップから直接発信することが有効だ。

 パワハラ対策のみならず、「守りを固める」方向の取り組みは、現場の協力や一定割合の負担が必要なケースもあり、往々にして面倒がられ、協力を得にくいことが多い。しかし、トップがコミットメントする姿勢を示し、会社ぐるみで取り組むと決めれば、そこに大義名分が生まれるし、具体的なアクションも起こしやすくなる。具体的には、次のような趣旨のメッセージが効果的だろう。

・ハラスメントは人権問題であり、メンバーの尊厳を傷つけ職場環境の悪化を招く、容赦できない行為である

・当社では一切のハラスメント行為を見過ごさず、全てのメンバーが互いに尊重し合える、安全で快適な職場環境を実現する

・そのため、全てのメンバーは研修を受講し、ハラスメントにまつわる意識と知識の向上を求める。ハラスメント行為を発生させない、許さない組織にしよう

・ハラスメント被害に遭ったらすぐに相談すること。相談者のプライバシーは守り、決して不利益な扱いはしないと約束する

 組織としての方針が明確に定まれば、メンバーも問題点の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、その結果、取り組みの効果がより期待できる。

(2)ルールを決め、周知する

 次に定めるのは、パワハラ防止に関する組織内ルールだ。何がパワハラに該当し、パワハラをやってしまうとどんな罰や処分を受けることになるのか、メンバーにとって分かりやすく明文化していく。パワハラ加害者には往々にして自覚がない。だからこそルールを定め、「それはパワハラですよ」という目線合わせ、判断基準を統一しておく必要があるのだ。

 例えば、見通しのよい通学路を猛スピードで通り抜けていく車があるとする。道路に速度制限がない限り、その車を取り締まることはできないし、運転手に注意したところで「見通しがいいんだから問題ないだろう?」などと言い返されてしまうだろう。しかし、その道路に時速30キロの速度制限がついていれば、時速40キロで走る車はルール違反として取り締まることができる。「ルールを決める」とはそういうことだ。

 パワハラの定義自体は厚生労働省のものを用いるとして、パワハラ防止規定と罰則を設け、罰則の適用条件や処分内容、相談者への不利益取り扱いの禁止などを具体的かつ明確に定める。就業規則にルールを盛り込むとともに、この機に懲戒規定を見直すのもよいだろう。

 その際は、労働組合や労働者の代表などの意見を聞いたうえで進めることも必要だ。職場のパワハラ防止について「労使協定」を締結し、労使で協力して取り組むのもよい。なお就業規則を変更した場合は、その内容の周知が義務付けられているので、忘れず実施しよう。

(3)教育研修実施

 教育研修というとありきたりで、「そんなこと、既にウチでもやってるよ」などと思われるかもしれないが、実は研修こそ、職場でのパワハラ予防に最も効果が大きい手段なのだ。

 パワハラ加害者の多くは無自覚だと述べたが、だからこそ統一判断基準を設け、メンバー全員に研修を実施し、人それぞれで異なる「判断基準を統一すること」が必要なのである。

 教育研修は、可能な限り全員が受講し、かつ定期的に実施することが重要だ。研修内容には、トップのメッセージ内容を含めるとともに、組織として統一設定したルールの内容、取り組みの内容や具体的な事例を加えると効果的である。

 研修目的はもう一つある。統一ルールを周知することで「自分は聞いていない」「知らなかった」といった言い訳や、「これはパワハラか否か」という不毛なやりとりを生じさせず、パワハラにまつわるトラブルの解決を早める効果だ。

 社員全員に同じ研修を実施していれば、パワハラ行為が発覚して指摘をする際にも、「研修で、当社におけるパワハラ認定基準は説明しており、あなたは受講しているはず。それなのにあなたはパワハラに当てはまる行為をしており、ルールに違反している」と説明できる。

 逆に、単なる一般的指導に対して「パワハラだ!」と訴えてくる場合には、「あなたはパワハラだと主張するが、本件は研修で勉強した『パワハラに当てはまらないケース』に該当する。これは正当な指導の一環である」と、堂々といえるようになる。

 過去、パワハラにまつわる組織内トラブルに巻き込まれた方であれば、このように言い切れることがいかほど有効かお分かりいただけるはずだ。自組織には統一ルールがあり、そのルールを破った場合は処分するし、被害者は守られる、という前提が共有できて初めて、組織におけるパワハラ対策が機能し始めるといってよいだろう。

(4)パワハラにならない指導とコミュニケーションを徹底する

 ここまでの準備と目線合わせができれば、後は日常のコミュニケーションに配慮するまでである。ではどこまでが「指導」の範囲内で、どのような行動や発言からが「パワハラ」となるのだろうか。

 過去の判例では、たとえ業務遂行目的だとしても、

・感情的な怒号や粗暴な言葉遣い

・指示内容が抽象的、感覚的で伝わらない

・なぜ叱責されているのか理由が分からない

・相手の受忍できる限度を超える長時間や高頻度

 といった要素が含まれると、パワハラと判断されてしまう傾向がある。逆にいえば、「業務遂行や育成指導のために必要なもの」であり、「合理的な内容」で、「相手に対する人格的な攻撃が含まれない」ならばパワハラではないと判断されている。指導の際には理不尽な叱責と捉えられないよう、指示や指導の理由を明確にし、相手が不本意と感じるような言い回しや繰り返しは避けるよう配慮すべきである。具体的には、このような流れで実施するとよいだろう。

・指導の目的、相手にどうなってほしいかというゴールイメージを共有する

・相手の理解に合わせて言葉を選び、具体的に伝える

・相手のミスやトラブルによって、どんな問題や損失が発生しているのか説明する

・改善のために今後どう行動するか、本人の意見も聞きながら策定する

・業績が良くても、ルールを守れない者は評価できない、といった姿勢を伝える

・今後も問題が続くようであれば、就業規則に基づいた処分に該当する旨を伝える

・最後に、指導が伝わったか本人の言葉で説明させる

 このように指導していけば、部下としても何が問題で、何をなすべきか理解できるはずだ。指導の目的は相手を畏怖させて支配することではなく、主体的に行動が変わることである。

●3.パワハラになるケース/ならないケースを知る

 前回の記事で「職場のパワーハラスメントの6類型」として(1)身体的な攻撃、(2)精神的な攻撃、(3)人間関係からの切り離し、(4)過大な要求、(5)過小な要求、(6)個の侵害を挙げた(厚生労働省雇用環境・均等局公式「あかるい職場応援団」より)。

 これらを具体的に、オフィスでの日常的な場面を想定して「パワハラに該当するケース」と「該当しないケース」を説明しておこう。

(1)身体的な攻撃

 殴る・蹴るなどの身体的暴力はもちろんだが、「書類を投げつける」などの行為も、相手を威嚇する意図があればパワハラに該当する。また、他の5種類は「反復性」が問われるが、暴行・傷害の場合は一度でも行われればパワハラとなる。

 一方、「誤ってぶつかってしまった」などの過失であれば、パワハラには当たらない。

(2)精神的な攻撃

 必要以上に長時間の叱責をしたり、衆人環視の中で大声かつ威圧的な叱責をしたりすること。テレワーク環境下では、全員が閲覧できるチャットルームや一斉メールで、特定従業員の人格・能力の否定や罵倒する内容を送信するなどの行為が該当する。

 一方、遅刻を繰り返すなど社会的ルールから外れた労働者に対して、再三注意しても改善されないために一定程度強く忠告することや、その企業の業務内容や性質などに照らし、重要な問題行動をした労働者に一定程度強く注意するなどは、パワハラには当たらない。

(3)人間関係からの切り離し

 特定の従業員に対し、集団で無視して孤立させたり、恣意的な事由で仕事から外して別室に隔離したりすること。テレワーク環境下では、オンライン会議に特定の従業員を招待しない、特定の従業員からの連絡に応じず無視する、出社日などに特定従業員だけ出社させず、在宅勤務を強要するなどの行為が該当する。

 一方、新規採用の労働者を育成するため、短期間集中的に別室で研修などの教育を実施する、懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対して、通常業務に復帰させる前に一時的に別室で必要な研修を受けさせるなどは、パワハラに当たらない。

(4)過大な要求

 長期にわたって過酷な環境下での勤務を強要したり、必要な教育を行っていないのに達成困難な目標を課して未達に対して強い叱責をしたり、業務とは関係のない私用の雑用処理などを強制したりすること。

 テレワーク環境下では、頻繁な業務報告や過度な即返信の要求、深夜のWeb会議やチャットでの呼び出しなどが該当する。また、部下からは切り上げにくいオンライン飲み会を開催し、上司の話を聞くよう強要することも、「業務上不要なこと」に当てはまる可能性がある。

 一方、労働者を育成するために、現在の能力よりも若干高いレベルの業務を任せたり、業務の繁忙期に業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せたりすることは、パワハラではない。

(5)過小な要求

 懲罰として、普段はしないような雑用をさせたり、気に入らない部下に嫌がらせするため、仕事を与えずに放置したりすること。テレワーク環境下では、誰でもできる単純作業をさせたり、仕事を与えていないのに成果がないことを理由に低評価にしたりすることが該当する。

 一方、労働者の能力に応じて、一定の業務内容や業務量を軽減することはパワハラではない。

(6)個の侵害

 労働者を職場外でも継続的に監視したり、労働者の性的指向や病歴など機微な個人情報について、本人の了承を得ずに他者に暴露したり、私物を無断で写真撮影したりすること。テレワーク環境下では、オンライン会議中に従業員の部屋や家族などを見せるようしつこく要求したり、本人の同意なくZoom会議などの際に録画した映像を他者に見せたりすることが該当する。

 一方、労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況などのヒアリングをしたり、労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報について必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促したりすることは、パワハラに当たらない。

●4.それでもパワハラが起きてしまったら

 ここまでの対策を施したにもかかわらず、不幸にもパワハラが発生してしまった場合、組織としてはどのように対処すればよいのだろうか。

 まず、被害が顕在化してから対処が後手に回ることのないよう、できる限り初期段階でトラブルの芽をつめるようにしておきたい。そのために有効なのが「相談窓口の設置」だ。

 人事労務や法務部門、もしくはコンプライアンス担当部門の管理職や社内労働組合のトップを相談員として選任し、対応してもらえればすぐにでも設置できるが、相談員がパワハラ加害者となるケースや、加害者が相談員と個人的に密接な関係があるなど、被害者が相談しにくいと感じることもある。その場合は、産業医や顧問弁護士、顧問社労士に相談業務を委嘱したり、相談窓口対応を代行してくれる専門サービス会社など、外部リソースを活用したりなども検討するとよいだろう。

 いずれにせよ、相談担当者はハラスメントや人権について十分な理解を持ち、中立的な立場で相談対応ができ、解決に向けて取り組める人物である必要がある。セクハラ対応が必要となるケースも鑑み、男女含めた複数の担当者を選任することができれば望ましい。企業規模の問題で、複数担当者が選任できない場合は、最初から外部機関との連携体制を整備しておくことだ。

 相談は対面のみならず、電話やメール、オンラインなど多様な形で受け付け、相談内容について機密が守られることを約束しておく。ヒアリングを丁寧に行い、相談者の了解を得た上で、加害者やハラスメントの様子を見聞きした第三者に事実確認を実施する。事実確認の結果と物証、パワハラ類型、内部のハラスメント防止規定を基に、「パワハラと認定できるか否か」「認定できなかったとしても、何らかの対処が必要か否か」と判断し、対策を検討していく。

 このとき、どうしても「パワハラに該当するか否か」のみがクローズアップされがちだが、真に注目すべきは「加害者側の言動や考え、信念にどのような問題があったのか」、同様に「被害者側の行動や言動にも、加害行為を誘発させるような原因がなかったか」、そして「それぞれはどのように行動、発言すべきであったか」、といった原因究明であり、加害者(必要に応じて被害者側にも)に改善を促すことで、事態が悪化する前に解決につながることが期待できる。

 その後の対応としては、「加害者への注意・指導」「加害者から被害者への謝罪」「人事異動」「懲戒処分」などが考えられる。さらにその懲戒処分についても、軽いものから順に「注意」(訓戒・戒告・けん責)、「減給」「出勤停止」「休職」「降格」「諭旨退職」「懲戒解雇」といったものがある。これらは就業規則に基づき、事業主が従業員の秩序違反行為に対して課す制裁であり、問題行動への直接的な処分であると同時に、従業員全員に対し、当該問題行動が好ましくない行為であることを明確に示し、企業秩序を維持する目的もある。

 相談内容やその後の対処については、個別に相談記録票をつけて保存しておくとよい。懲戒処分をする際の根拠となるし、万一その後訴訟などに発展した際の証拠資料にもなるためだ。なお、対処内容の軽重について判断に迷った場合は、顧問弁護士や顧問社労士、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署などに相談するとよいだろう。

●5.パワハラが発生する根本原因から解決せよ

 「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査」(独立行政法人労働政策研究・研究機構)によると、パワハラが起こる背景や原因にはさまざまな要素が絡み合っており、中でも「過重労働とストレス」「職場のコミュニケーション不足」「管理職の余裕のなさや教育不足、マネジメント能力不足」「成果主義や業績向上圧力」などの影響が大きいとされている。まさに仕事柄労働環境が劣悪な「ブラック企業」と通じるところがあるのではなかろうか。

 一方で、ハラスメントとは無縁な「雰囲気の良い会社」ならどうだろうか。そういった組織はおしなべて業績が好調であり、そのため従業員のマインドにも余裕が生まれ、コンプライアンス意識を高めることにもお金を使えるし、無理な働かせ方をせずとも十分な報酬を用意できることから、必然的にコミュニケーション力やマネジメント力にも優れた人材が集まる、という好循環が生まれているのだ。

 当然ながら優れた上司であれば、自らの成功体験をロジカルに説明して部下に再現できるため、暴言や脅迫などのハラスメント的手法に頼らずともマネジメントを遂行できる。もちろん、パワハラなどとは一切無縁だ。

 すなわち、パワハラがまん延している企業の多くは、もうかっていないが故に低賃金で目標ばかりが高くなり、みな心の余裕がなく、当然コンプライアンスは後回しだ。

 そうなるとまともな人材は採用できず、営業成績を上げただけで自動的に上司となり、部下を動かすにもパワハラ的な言動しかできない……という悪循環となってしまうものと考えられる。

 パワハラが発生する根本原因は「もうかるビジネスを営めず、コンプライアンスを確保できるほどの余裕が持てない経営者とマネジメントの問題」といえるだろう。心しておきたい。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による「業績&従業員満足向上支援」、悪意ある取引先にまつわる「ビジネストラブル解決支援」、問題社員・ブラックユニオンに起因する「労務トラブル解決支援」を手がける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。

著書に「ワタミの失敗〜『善意の会社』がブラック企業と呼ばれた構造」(KADOKAWA)、「問題社員の正しい辞めさせ方」(リチェンジ)他多数。最新刊「クラウゼヴィッツの『戦争論』に学ぶビジネスの戦略」(青春出版社)