ケータイショップは携帯電話会社(キャリア)にとって、ユーザーと直に接する重要なタッチポイントだ。それ故に、いつの時代もトラブルを含め注目すべき事案が尽きない。かつては「レ点販売」、近年は契約手続き時間の長さや、実際には上乗せ金である「頭金」が問題視された。つい最近では「転売ヤー」と端末単体販売拒否の問題もある。

 ユーザーとショップ間の事案だけではなく、キャリアとショップ、つまりキャリアと販売代理店との関係性も注目されている。

 ドコモショップ、auショップ、ソフトバンクショップといったキャリア名を掲げているショップであっても、実際はそのキャリアが運営している直営店はごくわずかだ。

 多くのリアルショップは契約を結んだ企業が「販売代理店」として運営している。ドコモの場合、本当の直営店は存在しない。100%子会社のドコモCS各社が運営しているショップが、実質的にドコモの直営店と言えるだろう。各社のWebサイトで数えてみたところ47店舗あるが、日本全国のドコモショップ約2300店舗の2%でしかない。ちなみにKDDIは全国30店舗、ソフトバンクは7店舗、直営店を展開している(2022年7月中旬現在)。

●違反続く販売代理店

 総務省の「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」(以下、検討会)は、21年9月に公表した報告書内で、販売代理店に対するキャリアの委託手数料の評価指標に、法令違反を助長する可能性が高いものがあると指摘していた。問題視したのは「高額プランの獲得率を評価する指標」と「事業法第27条の3の違反を助長するような手数料・奨励金体系等の仕組み」だ。

 「事業法第27条の3の違反」とは、通信料と端末代金の完全分離に背く行為のこと。具体的には、端末単体の販売を拒否することや、回線契約を伴う場合の割引の上限2万円(税抜)を超える割引、他キャリアのユーザーに端末購入サポートプログラムの提供を拒否すること、などだ。

 販売代理店に対するキャリアの評価指標は、これら違反行為を助長しているとして、改善が求められるとともに、携帯電話販売代理店に関する情報提供窓口の設置や継続的なモニタリングが行われてきた。キャリアも代理店に対して販売方法を指導するとともに、代理店に対する手数料や評価指標について、一定の対応は行われてきた。

 しかし、状況は改善されていない。

 先日7月12日に、検討会から「『消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書 2021』を踏まえた取組に関する提言(案)」が公開された。

 そこでは、現在でも広く不適切な行為が行われていること、また、こうした行為はショップスタッフ個人の判断で行われているケースは少なく、キャリアや販売代理店の営業目標、店長の指示といった外的な圧力に起因して行われるケースが大半を占めていると指摘している。

 情報提供窓口には、「キャリアが設定している現在の手数料や評価体系では、契約獲得を優先せざるを得ない」「目標値が高すぎる」といった声があったという。

 さまざまな対策が講じられたものの、こうした状況が続いており、改善するためには従来の対応だけでは十分とは言えないと指摘している。

 また、最近増えてきている「出張販売」にも言及。出張販売は「不意打ち的な販売」になりやすく、「イベント会社等から派遣された応援スタッフが不適切な営業を行う事例がある」とし、消費者保護ルールに違反する営業が行われやすい面があるとしている。

 そこで、キャリアに対しては、契約獲得だけでなく、ユーザーの満足度、例えば継続利用率やオプションの実際の利用率なども評価できるような指標に見直す仕組みにすること、目標値について販売代理店が十分納得するものとすべきだと提言している。目標値が過大で不適切な行為が助長される場合は、業務改善命令の対象となることをガイドラインで明確にするべきとも述べている。

●総務省が代理店の評価指標にまで口を出さざるを得ない状況

 評価指標という、キャリアと販売代理店のビジネスにおける契約内容まで総務省が入り込んだ。それだけ販売代理店にとって厳しい状況が続いているということなのだろう。

 有識者の1人は、転売ヤー対策が適切に行われ、1人が1台の端末を買う状況に戻れば転売がなくなり、環境が改善すると指摘している。というのも、販売代理店によっては、転売ヤーを問題視する一方で、契約獲得の目標値を達成するために、そうした不適切な販売も行っている事例があるからだ。今回の提言が実現されるとともに、転売ヤーなどへの不適切な販売ができなくなれば、キャリアが求める無理な目標値の達成が難しくなり、目標値自体が是正されるとの考えだ。

 確かに過大な目標値は是正されるかもしれないが、キャリアの契約獲得を重視する姿勢は変わらないだろう。

 現在のキャリアの収益は、法人向けビジネスや金融などの非通信収入が増えているとはいえ、通信料収入の割合が半分以上を占め、月額料金を支払うサブスクリプションモデルでは、契約者数が収入に直結する。携帯電話は広く浸透していて契約者数の大幅増は見込めない。そしてユーザーがキャリアを移行するハードルが限りなく低くなっている状況では、他社からユーザーを奪おうという意識が高くなり、販売代理店に獲得に対する期待が大きくなるのは当然だ。

 一方で、コスト削減や、将来のメタバース流行を見込んで、キャリアはショップのオンライン化を進めている。販売代理店は存続の危機を意識しながら、携帯電話の販売、サポートだけでなく、キャリアが始めるさまざまな新しいサービスへの対応を常に求められている。基本的にキャリア優位の関係性は変わらないとも思われ、ショップの苦労は今後も続きそうだ。

(房野麻子)