●教えて! ビジネスマナーの新常態

コロナ禍をへて大きく変わった私たちの働き方。ビジネスマナーにも、時代に合わせて大きく変化するものがあれば、全く変化しないマナーも存在する。「こんなとき、どう対応するのが正しいの?」といった疑問に、NPO法人日本サービスマナー協会の特別マナー講師、井手奈津子さんが回答する。

 連載7回目は、敬語について。取引先など社外の相手に対して、自社の社員を紹介する際、上司であっても社長であっても呼び捨てにし、へりくだって表現するのがビジネスマナーだ。一方で、自社とはいえ外部委託の社員や、他社から出向で来た社員もいるとして「一律で呼び捨てにするのは違和感がある」との声もSNSなどで散見される。この違和感は、どう考えればいいのだろうか。

――自社の社員を呼び捨てにするビジネスマナーに違和感を抱くとの意見を目にします

井手講師: 敬語の使い方の問題ですね。敬語には「上と下」の関係性のほかに、「内と外」という考え方があります。外の人に対しては丁寧な言葉で敬語を使い、内については、へりくだる。例えば、究極の内は家族ですよね。家族の中では「お父さん」「お母さん」と呼んでいる場合も、大人になると家族以外の人には「父」「母」と呼んで話しますよね。職場も同じです。社内では「A社長」と呼んでいても、社外の人に対しては社長も内側なので「A」もしくは「社長のA」と呼び捨てにする。これが日本語の構造となっています。

――日本語の構造としてそのような作りになっているのですね

井手講師: 外部委託や出向で来られた方を呼び捨てにして社外の人に紹介することをためらう気持ちは理解できます。ただ、外部委託の社員や、グループ会社から出向で来ている社員の方とはいえ、顧客など第三者の立場から見ると、同じ組織の社員として映ります。自身の立場から見れば、実際には完全な内というわけではないのですが、第三者である相手から見てどうなるのかという点がポイントです。

――敬語は特に新入社員で難しく感じられる方が多いのかもしれません

井手講師: 企業へマナー研修に赴いた際に「敬語の使い方に混乱してしまう」という質問はよく受けます。敬語は上司と部下の上下関係だけの時はシンプルで分かりやすいです。しかし、ビジネスの世界では、内と外の関係が発生します。社内では上下関係だけなので、新入社員は上司に尊敬語を使って話せば問題ありませんが、そこに第三者であるお客さまが入ってきた途端に、内と外の関係が発生し複雑に感じてしまうのです。

――やはりトレーニングや慣れが必要になりますね

井手講師: 気持ちは理解できます。私も新入社員だった当時、初めてお客様の前で上司を呼び捨てにしなければいけない時に、とても緊張したことを覚えています。誰しも最初は、上司を呼び捨てにするのは緊張します。それでも経験を積めば慣れてくるので、そこまで心配する必要はないでしょう。

講師紹介:井手奈津子(NPO法人日本サービスマナー協会 特別マナー講師)