決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。「決算書で分かる日本経済」ということで、4回連続で地方銀行の決算を取り上げていきます。

1. 銀行は斜陽産業? 千葉銀行の業績を左右するポイント

2. 苦しいといわれる第二地銀の実態は? 福島銀行の業績ポイント

 今回取り上げるのは福島銀行です。地方銀行の中でも、苦しいといわれている第二地方銀行に分類される銀行です。

 福島銀行を含め地方銀行が展開している多くの地域では、人口減少と少子高齢化による地方経済の縮小が進んでいます。さらに、低金利が続いていることもあって苦しい状況にあります。

 これまでは企業の規模によって大手銀行と第二地銀のような小規模な銀行で顧客のすみ分けがある程度はできていました。ところが、低金利、地方経済の縮小が進む中で、収益源拡大のために大手銀行も優良な中小企業へも積極的に進出し始めています。

 比較的余力のある規模の大きな地方銀行では、他県への積極進出も行っていて、そういった状況下でシェアの奪い合いは激化しており、福島銀行のような第二地銀は苦しい状況にいます。

 今回は福島銀行からそんな第二地銀の状況を確認していきましょう。

●SBIグループの第4のメガバンク構想のうちの1つ

 ちなみに、福島銀行はSBIグループが掲げている第4のメガバンク構想において、出資を受けている銀行の1つでもあります。SBIの商品やシステムの一部を扱えるようになっていて、これは福島銀行にとっての強みでしょう。

 多くの地方銀行は低金利が長期化する中で、収益性が悪化していて投資余力は無くなっています。コスト的にも人材的にも、デジタル関連の投資が進みにくかったわけですが、SBIのシステムを利用できるようになることで、サービスの質は高まります。

 例えば地方銀行のネットバンキングを使ってみると分かりますが、UIやUXに関して、はっきりいうと使い勝手が非常に悪い銀行が多いのです。すべてを利用できるわけではないといえ、SBIのシステムを利用できるというのは、デジタル面に関しては他の地方銀行以上の武器を手に入れられているという側面もあります。

 そういった点に関しては、SBIと提携していることが強みになるでしょう。

●業績の縮小傾向が続く

 それではまずはここ数年の業績から見ていきます。

 経常収益(売上高)の推移から見ていくと、2017年3月期〜19年3月期までは右肩下がりとなっていて、20年3月期には増加したものの21年3月期は再び微減となっています。

 コロナの影響はあまり感じられないものの、縮小傾向が続いているという感じですね。

 利益面を見てみると、経常利益は減少傾向で18年3月期と21年3月期には大幅な赤字となっていて苦しい状況にあることが分かります。21年3月期が17.2億円の赤字ですから、利益面に関してはコロナの影響は大きかったようです。

●直近、黒字転換し業績が大きく回復

 続いて直近の業績を見ていきましょう。22年3月期の通期の業績です。

・経常収益は、0.3%増の131.8億円

・経常利益は、17.3億円の赤字→7.9億円の黒字

・純利益は、17.2億円の赤字→8.3億円の黒字

 売り上げは微増ながらも、黒字転換しており業績は非常に大きく回復していて好調です。

 利益水準も18年3月期以降で最も高い水準となっていて、22年の3月期はここ数年でも比較的好調だったことが分かります。

 単体の業績を見ていくと、経常収益(売り上げ)に関しては貸出金利息は1億円の増加となっているものの、有価証券の利息や配当金の収入が6億円減少していることもあり、減収です。

 減収の中で黒字転換した要因は、前期にあった有価証券関連の損失20億円がなくなったことです。21年3月期は大きな赤字となっていましたが、これには有価証券の関連の損失が大きく、その影響がなくなった今期は業績が回復しました。

●株式投資をロスカット

 ではどうして21年3月期には有価証券関連の大きな損失が出てしまっていたのでしょうか?

 14年からの3月末時点の株式型の投資信託の金額の推移を見てみると

・2014:4億円

・2015:127億円

・2016:172億円

・2017:145億円

・2018:141億円

・2019:212億円

・2020:99億円

・2021:0円

・2022:0円

 となっていて14年〜19年3月末までは株式型の投資信託を大きく伸ばしていて、それを20年3月期以降減少させ、21年3月期にはゼロにしています。

 アベノミクスによる大規模な金融緩和もあり低金利が続いていましたから、そんな中で貸し出しなどの業務の収益性は悪化し、有価証券運用の軸である債券利回りも悪化していました。

 一方で株高が続いていましたから、業績回復のためにも株式への投資での収益拡大を狙っていたことが考えられます。しかし有価証券の含み損益は、19年3月期には15億円のマイナス、20年3月期には新型コロナの影響による株安もあり40億円のマイナスと、投資は裏目に出ました。

 21年3月期には株式型の投資信託の残高がゼロになるとともに、有価証券の評価損益は3億円のプラスになっています。株式関連の投資がうまくいかない中で、含み損の株式型の投資信託をロスカットして一時的に大きな赤字を出しました。ちなみに18年3月期も赤字となっていましたが、その際にも有価証券関連の損失が影響していました。

 業績の苦しい福島銀行ではリスクを取った投資をする必要が出てしまい、それがあまりうまくいかず、大きな赤字が定期的に出てしまっていたようです。

 今は株式型の投資信託の金額はゼロとなっており、こういった一時要因による大幅な赤字転落といった可能性は低くなっています。

●金利上昇によって保有債券価格が下落

 株式の売却を進めた結果、3億円のプラスとなった有価証券の評価損益ですが、22年3月期には再び28億円のマイナスとなっています。この理由は、千葉銀行の際にも触れた通りで、金利上昇による既存債券価格の下落です。

 利上げが進むと既存の利回りの低い債券の価格は下落します。

 前回の千葉銀行と同じ説明になりますが、今回も語弊を恐れずめちゃくちゃざっくり説明すると、同じ米国債で1億円で年利1%のモノと年利5%のモノがあれば当然みんな5%の方が欲しいわけです。そのため、金利が上がると金利が低かったころの債券を買う人がいなくなるので、債券自体の価格を下げて9500万円などにして実質利回りを合わせないと売れなくなってしまうという話です。

 債券運用に対する文言を見ると、債券は満期まで保有するものが多いようです。

 株式を増やして収益を増やそうとしていたことから考えても、利回りの高い長期的な債券を多く持っている可能性が高そうです。

 となると満期までの期間は長いでしょう。欧米を中心に金利は上昇しているものの、その影響による債券運用の利回り良化というのには時間がかかる可能性がありそうです。

●預金も貸し出しも増加

 続いて預金や預かり資産の残高を見ると、預金は127億円の増加、預かり資産は68億円の増加となっています。

 預金に関しては、個人は6億円の減少となる一方で、法人に関しては89億円の増加となっていて法人が伸びています。

 21年3月期では個人預金は4902億円→5032億円、と大きく伸びていますから、給付金やコロナによる消費の停滞などがあり大きく預金が増加したところから、経済活動の正常化に伴って減少したということが考えられます。

 基本的にコロナに関しては預金面ではポジティブな影響があったと考えていいのではないでしょうか。

 続いて貸し出しの面を見ていくと増加傾向が続いていて、6136億円で過去最高を更新したとしています。

 コロナ禍で特に伸びているのが事業性の貸し出しですから、前回取り上げた千葉銀行と同様にコロナ対策として無担保で保証協会付き、利子補給型(借入の利息が後ほど県から補填される融資)のいわゆるゼロゼロ融資(担保ゼロ・利息ゼロ)が行われていたことが影響しているでしょう。

 無担保で保証協会が付いていた融資ということで、コロナで悪影響を受けた企業に銀行もノーリスクで貸し出せますし、これまでは資金的に余力があって借り入れをしてくれなかったような財務的に余力の大きい企業も、利子補給で実質無利息だからと借りてくれることが起きています。貸出面に関してもコロナはポジティブに働いていたと考えられますね。

 今後に関してはやはりゼロゼロ融資に関しては利子補給の期間が終わり、返済が始まる時期になってきます。財務的に余力のある企業が一括返済を進めたり、財務的に余力のない企業で貸し倒れが起きたりして、残高減少につながることでしょう。

 地域経済も拡大していくわけではありませんし競合環境も悪化している中で、再拡大は楽な状況ではありませんから、これからどうなっていくかには注目です。

●住宅ローン貸し出しも増加だが競合も

 さらに、これもまた千葉銀行同様に住宅ローンに関しても大きく伸びています。コロナ禍で在宅時間が増加し住環境への投資が進みましたから、そういった中で住宅ローンも伸びていたことが考えられます。

 ちなみに住宅ローンはコロナ以前の19年3月期から安定して伸びています。低金利が続く中で住宅ローンを組む人が増えているということでしょう。

 実際に統計データを見てみても、国内で30歳代での住宅ローンの残高は増加していますから、市場環境自体が悪くはないことも好影響を与えているでしょう。

 貸し出しの平均約定金利の19年3月期からの推移を見ると、住宅ローン金利は1.14%→1.07%→1.01%→0.96%と悪化傾向となる一方で、事業性の貸し出しに関しては1.47%→1.52%→1.52%→1.53%とわずかではありますが伸びています。

 事業性の貸し出しに関しては、競合の少ない地元の中小企業向けが大半ですし、利子補給型の貸し出しが増えていますので、そういった中でそれなりに高い金利を提示することはできていたのかもしれません。

 一方で住宅ローンに関しては今はネットバンクなどが積極的に全国展開していますから、全国の競合と争う必要があり低金利化が進んでいくことが考えられます。この傾向は今後も変わらないでしょうから、市場金利の上昇以上に住宅ローン金利を上昇させるというのは難しい状況が続くでしょう。

 となると人口減少や競合環境の悪化が進む中で、今後も住宅ローンからの利益を伸ばしていくのは容易な状況ではないでしょう。

 また、貸出金額自体が増加した結果、貸出金利息も増加していてコロナ前の19年3月期の6056億円→6732億円へと増加し、投資信託の解約益を除く本業収益も、4年連続で増加したとしていて好調です。

 千葉銀行のような地域経済が成長している大手の銀行だけでなく、福島銀行のような第二地銀であっても、コロナの影響はポジティブに働いていたということですね。

●有価証券運用損は出し切ったが、長期的な環境は厳しい

 福島銀行は、業績は悪化傾向にはあるものの、預金や貸し出しという面ではコロナの影響はポジティブに働いていて好調となっています。

 有価証券運用に関しては株式型の投資信託を増加させてリスクを取った運用をしていましたが、それがうまくいかず大きな損失を出していました。しかしロスカットして現在は株資型の投資信託に関してはゼロになっていますから、今後は大きな赤字となる可能性は低そうです。

 とはいえ有価証券運用に関しても長期債券を満期で保有しており金利上昇の好影響を受けにくい可能性があります。ゼロゼロ融資の返済が始まったり、地域経済が縮小していく中で業績をさらに伸ばしていくことは楽な状況ではないと考えられます。

(筆者プロフィール:妄想する決算)