「大阪王将」の不祥事につられて、「餃子の王将」の株価も下落している。

 SNSでの暴露を発端に発覚した大阪王将店舗のずさんな衛生管理は、同ブランドの運営企業であるイートアンド(2882)の株価を1割ほど引き下げた。一つの暴露が、同社の時価総額を25億円ほど吹き飛ばしたことになる。

 これが「自業自得」の場合はまだいいが、市場では社名が似ているばかりに「とばっちり」で風評被害に遭う事例が後を絶たない。

●無関係の王将フードサービスに飛び火?

 今回は、そんな「大阪王将」の事件が「王将フードサービス」(9936)に飛び火した。足元では持ち直しているものの、SNSでの暴露が本格化していた月曜日から火曜日にかけて、同社の株価は7000円から一時6880円程度まで下落。

 株価だけで見るとマイナス1.8%ほどとそれほど大きな下落率ではない。しかし、王将フードサービスの時価総額は1620億円であることから考えると、時価総額でいえばイートアンドを上回る約27億円のマイナスであり、その影響は小さくない。

 なお、「大阪王将」は確かに「餃子の王将」からのれん分けによって生まれた企業である。しかし、資本関係や業務関係はないことから、もはや両者は完全に独立しているといっていい。やはりSNSでの暴露による株価下落は、「とばっちり」と言わざるを得ない。

 実はこのような事例は決して少なくない。今回はそんな数多くのとばっちり風評被害事例から5つのケースをピックアップした。

●「スタジオよんどしい」と「よんどしい」

 非上場企業同士のとばっちり事例もある。『マクロス7』や『ベルセルク』といった大型タイトルを制作しているアニメスタジオの「スタジオよんどしい」が、偶然にも似た名前の「よんどしい」が倒産した際に勘違いされたことがある。

 この事例ではまとめサイトやSNSの口コミを中心に一挙に拡散され、アニメスタジオ公式アカウントからは当時の困惑している様子がみて取れる。

 本件は非上場企業ということもあり、件の公式アカウントも注目に乗じて採用募集を行うポジティブな姿勢を見せることもあって、この問題はそこまで大問題にならなかった。しかし、「倒産」に関する誤った情報の拡散は信用の毀損(きそん)を招く恐れがあるし、上場企業であれば株価の大暴落と混乱は避けられない。やはり単に笑える事例というわけにもいかないだろう。

●ありがた迷惑?とばっちりで株価が上がる事例も

 実は、似た社名に関する風評被害による株価下落とは反対に、勘違いによって似た会社名の株価を大きく上げる事例も少なくない。

 もちろん、これは素直に喜べない事例である。なぜなら、これは勘違いが発端の株価上昇であることから、最短で当日ないしは週の終わり頃には上昇は帳消しになるからだ。いくら株価が短期で上がっても、「自社の相場を荒らされてしまった」という意味では喜べない。

 ここからはそんな「勘違い買い」事例をピックアップする

●米「Zoom」と「ズーム」

 Zoomと聞いて真っ先に思いつくのはオンラインミーティングツールのZoomではないだろうか。2020年のコロナショックからいち早く立ち直り、社会的なオンラインミーティング需要を追い風にして大幅に業績を拡大したZoomだが、この会社はもちろん米国企業であり、日本では上場していない企業だ。

 しかし、そのZoomと奇しくも名前が一致してしまったズーム(6694)がストップ高になるまで買われたのである。ズームの事業は音楽用の電子機器メーカーということで、大幅に“勘違い買い”が入ったのである。

 これにはさすに会社側も驚いたのか、「当社は、ビデオ会議サービスを運営する米国のZoom Video Communications, Incとは一切関係ありません。」とIRページで公表せざるを得なかったようだ。

●「ヤマト(非上場)」と「ヤマト・インダストリー」と「ヤマト」

 ほかにも、液体のりの金字塔である「アラビックヤマト」を製造する「ヤマト」の勘違い事例もピックアップしたい。

 その発端は、20年1月に東工大の研究チームが発表したがん細胞の消失に関する報道にある。これは、薬剤に液体のりの主成分である「ポリビニルアルコール」を混ぜ合わせることで、がん細胞の治療効率が大幅に向上したというものであった。

 そもそも、このニュースの中では「ポリビニルアルコール」を分かりやすく伝えるための例えとして「液体のり」を挙げたに過ぎず、アラビックヤマトががんに効くという報道でもなかった。それでも、「液体のり」のワードに反応した市場参加者が、似た名前のヤマト・インダストリー(7886)をストップ高にしたり、建設業で全く業態が異なるヤマト(1967)にも買いを入れてしまったのだ。

●「郵政」と「郵船」

 このような「勘違い買い」の事例は、時に超大型企業の株価すら動かすことがある。15年の郵政3社上場の際に、海運株の日本郵船(9101)でも発生していた。

 日本郵船は、郵便の「郵」の字がついていることで日本郵政グループ関連であると勘違いされやすいが、実は三菱グループに属している会社である。同社における名前のルーツは1875年に解散した国策会社の「日本国郵便蒸気船会社」にあると見られている。

 三菱グループの総帥であった岩崎弥太郎は、そこから汽船と事業を譲り受けて「郵便汽船三菱会社」と改称し、そこから合併などを経て「日本郵船」という社名となったという経緯がある。そのため、大昔は郵便物の海運がメインの事業であったようだが、現在は郵便物を取り扱っていない。

●グリーンランド(島)とグリーンランド

 最後に、もはや社名ではないが、北極圏にあるデンマークのグリーンランド島と、グリーンランド(9656)にも勘違い買いが入ったことがある。

 これは、2019年にトランプ米大統領(当時)によるグリーンランド買収構想が報じられたことによる。これを受けて熊本県の遊園地「グリーンランド」を運営する「グリーンランドリゾート」に大きな買いが入ったのだ。

 時の米国大統領が遊園地に目をつけたということであれば、なんともおかしなニュースであるとも思えるが、トランプ前大統領ならあり得ると思わせる不思議なキャラクター性もこの勘違い買いを引き起こしたのかもしれない。

●とばっちりには事後のスピーディーな告知が重要

 このように、自社とは関係のないところで似た社名の会社が不祥事を起こしたり、逆に卓越した結果を残したりすることで自社の株価や評判が乱高下してしまうケースは決して少なくない。

 ある意味で天災のようなもので防ぎようがないものではある。しかし、天災も起こった後の対応が重要であるのと同じく、とばっちり事例も、ズームの事例のように、IRなどでいち早く風評を防ぐリリースを出すといった対応で傷口を小さくすることは可能だ。

(古田拓也 カンバンクラウドCFO)