コロナ禍で高まるECサービスの需要拡大で、物流業界の人材不足は深刻さを増し、必然的にラストワンマイルでの自動配送ロボット活用に期待がかかっている。そんな中、パナソニックは4月、日本初となる保安要員なしのフルリモートでの自動配送ロボット運行の道路使用許可を取得した。気になるのは安全性だ。

 パナソニックホールディングス テクノロジー本部デジタル・AI技術センター モビリティソリューション部の東島勝義部長に、社会実装を見据えたビジネスモデルも含め、話を聞いた。

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 今回パナソニックが取得したのは、警察庁の定める「特定自動配送ロボット等の公道実証に係る道路使用許可基準」における区分3相当だ。この区分が許可されたことで、同社は、自動配送ロボットで実証実験を行う際、保安要員なしのフルリモート型で行う事が可能になった。

 現在は、神奈川県藤沢市の環境配慮型スマートタウン「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」(以下、Fujisawa SST)内で、自動配送ロボット「ハコボ」を4台稼働させた配送の実証実験を行っている。

 すでに保安要員はおらず、オペレーターが東京・汐留の「Panasonic Laboratory Tokyo」にある遠隔監視センターから監視し、必要に応じて操作を行う。ロボットの最高速度は6キロだが、街での走行時は4キロに設定。人でいうと早歩きぐらいのスピードだ。

 2020年11月からFujisawa SSTで運行を開始し、21年には処方箋医薬品配送サービス、お弁当配送サービス、焼きたてパン配送サービスなどのサービス実証を実施。5月からは「湘南ハコボ モール」という実証実験を始めており、FujisawaSST内にある店舗や近隣店舗で販売している卵、パン、イタリアンなどを住民に配送している。

●どのような過程で道路使用許可を取得した?

 日本初となるフルリモート型の道路使用許可、パナソニックはどのような過程で取得したのだろうか。東島部長は「20年11月に実証実験を開始してから、段階的にできることを増やしていった結果、今回の許可につながった。警察、国土交通省などと密に連携をとってきました」と語る。

 20年11月当初は、遠隔オペレーター1人に対し、ロボット1台の運行からスタートした。その後、ロボットの台数を徐々に増やし、2021年8月に現在のオペレーター1人で4台を監視する体制となった。当時は、ロボット1台につき保安要員も1人付いていた。

 ロボットと保安要員の距離は最初5メートル以内だったが、21年8月に10メートル以上まで広げた。そうして段階的に安全運行を心がけた結果、今回の許可につながったという。走行実績も1200キロを超えている。

 「警察も保安要員なしのフルリモート型は今まで前例がないので、どちらかというと私たちからよく提案をしていました。『次はロボットを増やします、今度は保安要員との距離を5メートルから10メートルにします』と。その都度、警察に安全性を確認してもらっていました」(東島部長)

 保安要員なしの運用で気になるのはロボットの安全性だ。安全性を担保するため、実証運行中はロボットに搭載したカメラとセンサーからデータを抽出。その中から重大な事故につながる恐れのある“ヒヤリハット”の場面をデータベース化して分析した。その結果、課題が見えてきたという。

 「Fujisawa SSTは、信号機のない横断歩道が多くあります。ほかにも、子育て世代が多く住んでいるので、子どもの飛び出しも多く、路上におもちゃなども落ちています。狭小道路も多いので、すれ違う時に不安を与えないようにしないといけない。また、車・バイクに加え自転車に乗っている人も多いといった課題が見えてきました。

 今までは遠隔監視をしながら、保安要員が対処することが多かったのですが、フルリモートの場合はオペレーターとロボット自身で対処しなければならない。そのため、それらの課題に対して一つ一つ潰しながら安全性を高めていきました」(東島部長)

 例えば、子どもや自転車などが近づいてくるとAIが検知してロボットは自動で止まり、狭い道路で人とすれ違う際などに危ないと感じた場合は、オペレーター側で操作して止めるなど、時と場合に応じて対応した。

 また、横断歩道を渡っている最中に、危険を察知したり通信が途絶えたりすると、ロボットは自動で止まってしまう。そうなると自動車との衝突事故の危険性があるため、AIが自動で判断し、安全な場所まで移動してから止まるように学習させた。

 ロボットには安全制御ユニットも搭載している。これは、機械類の安全性に関する国際規格「IEC 62061」に基づいて安全性を評価し、適合証明書が発行されている。急に人が飛び出してきても緊急停止ができる。また、Fujisawa SSTの拠点から自転車で駆け付ける体制も敷いているという。

●1人4台監視では実用化は難しい「10台が目安か」

 オペレーター側は1人で4台を監視しているので、どうしても危険を見逃してしまうことがある。そこにはAI検知が生かされている。走行中に危険を予測検知することで、遠方の人や近接車両等の移動物体、路上落下物などを即座に発見し、遠隔監視・操縦を行うオペレーターに通知し、補助している。

 実際に遠隔操作センターを見学したが、オペレーターは基本的に危険を察知して停車したロボットに対し、周辺の安全性を確認して再発進させる操作が多かった。

 ただ、1人で4台を監視している今の状態では実用化は難しいと東島氏。「1人で10台ぐらい見ないと、コスト的に労働力不足や労働環境の改善とまではいかないかなと思います。そのあたりをどうするかは今後の課題ですね。人間1人で10台を見るのは現実的ではないので、AIをさらに賢くする必要があると思います」

 操作画面は、高齢者や主婦、体に障害がある人でも簡単に操作できるようなUI/UXを心がけた。特別な技能がなくても1〜3週間程度研修をすれば1人前のオペレーターになれるという。

 コントローラーは、ゲーム機用と似たものを使用。ロボットの再始動にはタッチパネルを採用するなど、実証実験を積み重ねることで操作性を向上させた。

 現在の道路使用許可は、Fujisawa SSTの走行に限定されている。今後は、240時間フルリモートで運行し、何事もなければ他拠点での実証を目指す。その際、藤沢と類似している環境では、他拠点でも簡易的な申請でサービス実証ができるようになるという。

著者:太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)