4月に日本初となるフルリモート型の自動配送ロボット運行に関わる道路使用許可を取得したパナソニック。現在は、環境配慮型スマートタウン「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」(Fujisawa SST、神奈川県藤沢市)内で実証運行を行っている。240時間何事もなければ、今後、他拠点での実証運行を行っていくという。

 前編「国内初! 公道をフルリモートで走る配送ロボ、安全面はどう対応? パナソニック担当者を直撃」では、道路使用許可の取得までの過程について記したが、ここで気になるのはビジネスモデルだ。

 「ロボットを単に提供するだけでなく、コミュニティー内の人に寄り添いながらエリアごとに合ったサービスを提供するイメージです」と語るのは、パナソニックホールディングス テクノロジー本部デジタル・AI技術センター モビリティソリューション部の東島勝義部長。

 同社がビジネス展開を目指しているのは「X-Area(クロスエリア)」と呼ばれるロボット・遠隔監視・サービスサポートをそろえたプラットフォーム。

 街をエリアごとに分け、そのエリア内にある商業施設、観光地、オフィスビルなどのコミュニティーに合ったサービスを展開する。例えば、小売・フード配送であれば、フードデリバリー、小売店配送、定期配送サービスなど。移動型サービスであれば、無人移動販売や施設内移動サービス。セキュリティ面では無人警備サービス。エリアインフラでは配送サービスやごみ回収サービスを想定している。

 ほかには、広告向けに移動サイネージなど、現在稼働させている自動配送ロボット「ハコボ」を、さまざまな用途に合わせてカスタマイズしてサービスを提供していく。

●カスタマイズしてサービスを提供

 ソリューションの提供方法は、運用自体をパナソニックが行う場合もあれば、ロボットだけを貸し出すパターンもあるという。ただその際に、遠隔監視システムも一緒に提供する。

 「ロボットだけだと止まった際にすぐに対応できない。遠隔監視システムを一緒に提供することで、“サービスを止めない、ダウンタイムをなくす”という観点から、価値は非常に高いと思ってます」(東島氏)

 「クロスエリア」を実現するため、さまざまなパートナーと実証実験も進めている。例えば、楽天や西友とともに茨城県つくば市でスーパーの商品を配送する実証実験を5月28日から7月31日まで実施。東島氏は「地元で複数店舗が集まっているローカルな場所で、タイムリーにサービスをお届けするにはどのような形がいいのか検証しました」と話す。

 今年3月には大阪メトロ、BOLDLYらと実証実験を行った。これは、大阪・関西万博会場内外の輸送を担うために複数の自動運転車両を運行させ、渋滞がなくエネルギー効率の良い次世代都市交通システムの構築を目指したものだ。パナソニックが遠隔監視室、顔認証システムとハコボ、電動車いす「PiiMo」を提供。ほかの自動運転車などが入り乱れている中でも衝突事故はなく、遠隔監視・操作できたことに手応えを感じたという。

 「こうした大阪メトロとの取り組みのように、クロスエリアのなかでは当社のロボットだけでなく、ほかのパートナー企業のロボットや、大きな搬送車などを含めさまざまなモビリティが走っていてもいいと思います。私たちは、そのエリアごとのマネジメントを行っていきたい」(東島氏)

 料金体系はサブスクを想定しているという。メンテナンスや、ユーザーが実際に使用する際にその業務をサポートするアフターサポートも含まれる予定だ。25年以降の実装を目指す。

●来年の道路交通法改正に向けて

 4月に国会で可決された道路交通法改正案の中で、自動配送ロボットは「遠隔操作型小型車」として位置付けられた。予定通りに施行されれば23年4月以降、登録制で公道での走行が可能になる。

 「現在は原付自動車の扱いなのでナンバーの取得が必要ですが、23年以降は必要なくなります。それに代わるものとして登録番号が記載された標識を、初心者マークのような形でロボットに表示することが義務付けられるようです」(東島氏)

 道交法の改正により、自動配送ロボットの道路使用許可は届け出制になる。そうなれば実証運行をそこまで行わなくても、申請が通れば路上で自動配送ロボットの走行が可能になる。そのため、安全面の担保が今よりもさらに重要になってくるだろう。そうした背景があるため、パナソニックが所属するロボットデリバリー協会では、現在規制作りを行っているという。

 東島氏は、「23年4月以降に届け出がなされていないロボット、われわれは野良猫からもじり『ノラ自動配送ロボ』と呼んでいますが、そうしたロボットが公道を走ると危険を伴います。そこで、ロボットデリバリー協会では安全基準面で議論を進めています」と話す。

 自動配送ロボットの国際標準も、ベルギーが幹事国のTC125などで今後策定予定だ。東島氏は「ロボットデリバリー協会内では、国内の業界基準を定める国内部会と、国際標準策定に関して働きかける国際部会に分かれています。両方の部会と連携しながら議論を進めています。国際標準の策定には時間がかかると思います。おおむね3年ぐらいでは」と話す。

 今後、国際標準策定に日本の意見をどこまで反映できるか分からないが、海外だけが基準を先行的に作るわけではなさそうだ。

 国内基準の策定については、警察と連携しながら議論を進めている。東島氏は「23年4月以降に警察に届け出を申請する際に、ロボットデリバリー協会で安全を確認したという証明書を添えることが推奨されています。安全基準に関しては、例えば、通信が途切れた際にどうするのかなど、私たちが今まで実証実験で気づいたようなところを項目に含めていこうかと話し合っています」(東島氏)

 改正道交法が予定通りに施行されれば、自動配送ロボットの実装化がぐっと現実味を帯びてくる。

 Fujisawa SSTで自動配送ロボットの走行を見学したが、思っているより街のなかに溶け込んでいると感じた。取材中も子どもたちがロボットに触れたり、立ち止まってのぞいたりしている光景を何度も見た。

 物流業界がひっ迫し、期待が高まる自動配送ロボット。普通に街なかを走行しているSF映画の光景はすぐそこに迫っている――。

著者:太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)