今年も35℃を超す酷暑日が続いている。この夏の暑さを背景に、近年ヒットしているのがモバイルタイプの「清涼家電」だ。

 例えば、手に持って風を送る小型の「ハンディファン」は2018年に日本市場でも大ヒット。若い層を中心に持ち歩く人が広がっている。

 そしてハンディファンに続くヒット商品として注目を集めているのが、首筋や背中を効率的に冷やす「ネッククーラー」だ。

●ネッククーラーの火付け役はサンコー

 ネッククーラーを国内市場で最初に製品化したのが、秋葉原に拠点を置くサンコーだ。

 ハンディファンは、暑い日に使っても熱い風が吹くだけになってしまう。ならば、冷蔵庫くらいに冷えた物を体に貼り付ければいいと同社は考えた。

 そこで、電流を流すと熱が移動し、片面が冷たく冷える性質を持つ「ペルチェ素子」に注目した。パソコン用のCPUクーラーの部品としても使われるこのペルチェ素子を利用してネッククーラーを開発。15年に初代モデル「USBひんやりネッククーラー『こりゃひえ〜る』」(4980円・当時)を製品化した。

 首に巻き付けて電源をオンにすると、首に接するプレート部の温度が外気温より10℃下がり、ひんやり感を長期間味わうことができるのだ。

 こうして誕生したネッククーラーだが、サンコーはその後もモデルチェンジを繰り返していく。そして20年に発売した「ネッククーラーNeo」は、販売台数31万台のヒットとなる。さらに21年発売の「ネッククーラーEvo」では、シリーズ最多となる47万台の大ヒットを達成しているのだ。

 22年4月には、初代モデルから数えて6世代目となる「ネッククーラーSlim」(6480円)を発売。

 よりスリムで軽く、それでいて外気温-17℃の冷却に対応。発売から3カ月で販売台数は11万台(2022年6月末時点)を突破しているという。

 サンコーのネッククーラーは7年間のシリーズ累計で92万台を売るヒット商品となっているのだ。

●ソニーの「REON POCKET」の初代モデルは2日で売り切れ

 ビジネスユーザー向けのネッククーラーとして注目を集めているのが、ソニーの「REON POCKET(レオンポケット)」。シャツの首の裏の下当たりに固定する仕組みで、ソニーは「着るクーラー」を謳う。

 初代モデルが登場したのが、19年7月。クラウドファンディングで成功した後、20年7月に一般発売を行ったところ、初回出荷分の1万台を2日で完売している。

 そして21年発売の「REON POCKET 2」は初代モデルを大きく上回る台数を販売。22年4月に発売された「REON POCKET 3」は、ソニー広報によれば「想定以上の販売ペースで推移しており、直近の気温が上がってきた日が販売のピークで、1日1万台強売れた」という。すでにソニーの公式ストアでは完売しており、在庫は一部ショップのみ。入手困難になりつつあるようだ。

 ソニーによればREON POCKETの開発経緯は、担当者が17年に出張で上海に行ったとき、38℃の外気温と、エアコンが効きすぎたホテル内の温度差に体調を崩しそうになったことがきっかけだという。そこからベースとなるウェアラブルの小型温冷機器のプロトタイプを作成、改良していった。

 ソニーでは現在、REON POCKETを従業員に利用してもらうことで、屋外での暑さ・寒さ対策だけでなく、室内のエアコンの温度設定も見直すことを想定。製品を通して、温暖化対策と省エネに貢献できるプロジェクトとして考えているそうだ。

 REON POCKETのターゲットは、主にビジネスユーザー。REON POCKETを入れて固定できるポケット付きの専用ビジネスシャツやインナーウェアといった対応アイテムを用意しているのも面白い。

 REON POCKETは22年から香港での販売もスタートしており、想定の2.5倍以上の販売を達成するなど、グローバルでの展開も始まっているという。

●28℃で凍るネッククーラーが、21年から大ヒット

 ネッククーラーには、サンコーやソニーのような電源を使うタイプだけでなく、28℃以下で凍る性質を持つPCM素材を使ったタイプもある。代表的な製品の「ICE RING」は、21年に4万個を完売するなど大ヒットを記録。22年は、同社以外にも多くのメーカーや」ブランドから同様の製品が販売されており、ハンディファンのように大きく広がりを見せている。

 このタイプのネッククーラーは、C字型のチューブにPCM素材を装填したもので、冷蔵庫や水に濡らして28℃以下にすることで凍らせ、首に装着。溶けるときに体の熱を奪ってくれる仕組み。クーラーの温度が上がった場合は、再び水道水などをかけて28℃以下にして再び凍らせることで、繰り返し体を冷やすことができる。

●ネッククーラーの一般化に期待

 記録的な猛暑が続く中で広がりを見せる、ネッククーラー。

 暑い屋外はもちろん家の中で使用すれば、冷房温度をアップさせることができるため、節電にも役立つ。

 ペルチェ素子を利用した電気式のネッククーラーは、モバイルバッテリーの低価格化や小型化など、技術進化によって実現した。またPCM素材を使ったネッククーラーは、もともと宇宙服に使う技術で開発された素材を転用して生み出されている。

 今後、さらに技術が進化することで、長時間使えるようになったり、効率的に冷やせるようになったりなれば、酷暑でもより快適に過ごせるようになるだろう。また新たな別素材が転用・開発される可能性もあり期待度は高い。

 夏の最高気温が毎年のように更新されていることから、ネッククーラー市場が今後、大きく拡大していく可能性は非常に高い。

 新規の大ヒットカテゴリーとして、ますます目が離せない存在といえるだろう。

(コヤマタカヒロ)