キリンビバレッジが販売する「午後の紅茶」シリーズが好調だ。2022年上半期の累計販売数量は前年比104%で、2年ぶりに2300万箱を突破。そんなシリーズの好調を牽引したのが、「午後の紅茶 おいしい無糖」や「午後の紅茶 ミルクティー微糖」といった“甘くない”紅茶だ。

●“甘くない”紅茶へのチャレンジ

 「実は1990年の「『プレーンティー』発売以降、“甘くない”紅茶へのチャレンジを続けてきました」(同社マーケティング本部マーケティング部ブランド担当主務ブランドマネージャーの田代美帆さん)。2000年代に入るとヘルシー志向の高まりから無糖茶市場が盛り上がり始めたが、紅茶=甘いというイメージを脱却できず、試行錯誤が続いていたという。

 そうした状況を打破したのが、11年に発売した「午後の紅茶 おいしい無糖」だ。紅茶はスイーツと楽しむものというそれまでのイメージを覆し、緑茶やウーロン茶など他の無糖茶のように食事に合う味覚設計に変更。“食事にも合う本格無糖紅茶”として、おにぎりやカレーといった国民食との組み合わせで訴求したことも相まって人気を博し、発売年は当時の過去最高出荷箱数を達成した。

 以降10年連続で売り上げが伸長。現在では「午後の紅茶」シリーズ全体の売り上げのうち、約2割を占めるまで成長し、「午後の紅茶 ストレートティー/ミルクティー/レモンティー」に続く第4の定番商品となり、無糖紅茶という新しい市場の定着に成功した。

●“甘くないミルクティー”で大人層を獲得

 2019年、メーカー各社は新しい紅茶飲料を次々と打ち出した。サントリー食品インターナショナルはペットボトルコーヒー「クラフトボス」シリーズに紅茶を投入。伊藤園も8月に「TEAs' TEA NEW AUTHENTIC 生オレンジティー」を発売した。コカ・コーラシステムは9月にロングセラー商品「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」を発売25年目でフルリニューアルした。

 ライバル各社が甘い紅茶でしのぎを削る中、同社が発売したのが甘くないミルクティー「午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」だった。

 「午後の紅茶 おいしい無糖」が躍進しているとはいえ、依然として甘い商品が約8割を占める紅茶市場で、なぜ甘くないミルクティーを発売したのか? 「当時市場を席捲(せっけん)していたペットボトルコーヒーが女性層を獲得できていないこと、既存ミルクティーが甘いため大人層の離反があることに着目しました。コーヒーでもなく、甘いミルクティーでもない、“甘くないミルクティー”にこそ、大人層の気分転換のシーンにマッチする需要があると考えたのです」(田代さん)

 「午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」は、“甘くない微糖”というこれまでの午後の紅茶にはなかった味わいで、「大人女性がオンタイムで飲める飲料」として主に30〜40代の女性から支持を獲得した。同年の午後の紅茶シリーズで過去最高出荷箱数を記録し、9年ぶりのヒット商品となった。

 今年4月には、「午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」のリプレイス商品として、「午後の紅茶 ミルクティー 微糖」を発売。「ミルクティーを飲む頻度が減った理由として、『甘すぎる』ともう1つ多くあげられた『カロリーが気になる』に着目しました」(田代さん)。カロリー50%オフ(午後の紅茶 ミルクティー比)にしつつも、ミルクティーの濃厚な味わいを損なわないよう、ミルクや糖の調整を繰り返したという。

 「午後の紅茶 ミルクティー 微糖」は、糖やカロリーを控えたい40〜50代女性を中心に支持され、発売から約2カ月で1000万本を突破。先代の「午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」の売れ行きをはるかに上回るペースで推移しているという。

●ミルクティーで腸活?

 こうして甘くない紅茶という新分野を確立した同社が今、着目しているのが健康領域に特化した紅茶だ。「午後の紅茶の主なターゲットは女性です。そこで、女性の健康の悩みについて調査したところ、『腸内環境を改善したい』という悩みが多くあがりました」(田代さん)。そこから、「ビフィズス菌を増やす」や「腸内環境を整える」といった商品を、午後の紅茶シリーズから出せないかと考えたという。

 開発は、腸内研究において知見があり、商品開発実績もあるファンケルと共同で進めた。開発の中で最も苦労したのは、機能性関与成分の選定だという。まず、腸内環境の改善に適した成分をファンケルが幅広くピックアップ。その中から飲料としての製造適性があるか、紅茶にしたときに味を邪魔しないか、味覚への影響など、さまざまなポイントで選定する必要があった。その結果、最終的に選んだ機能性関与成分が「ガラクトオリゴ糖」だ。

 「成分が決まったからといって、その後の開発が順調に進んだ訳ではありません。機能性関与成分がしっかり担保できなければ、機能性表示食品として発売できないので開発は時間をかけて慎重に進めました」(田代さん)

 商品開発に約2年を費やし、5月に「午後の紅茶 アップルティープラス」を発売。紅茶飲料としては日本初となる腸内環境を改善する機能性表示食品として、腸内環境を改善する「腸活」への効能をアピールした。おいしさも評価された結果、30〜50代女性を中心に支持が集まり、発売から7週間で500万本突破した。

●午後ティーが生み出す次の1杯

 「午後の紅茶シリーズは、『缶の紅茶ってなんでおいしくないんだろう?』『本当においしいリーフティーの本格紅茶は作れないのだろうか?』という疑問から生まれました」(田代さん)。「冷やすと濁る」というアイスティーの特性を抑えて透明な液色を実現するクリアアイスティー製法など発売当時からの技術やこだわりを今に受け継ぎ、昨年で35周年を迎えた。

 35周年に際し、ストレートティー・ミルクティー・レモンティーの3種類は、大幅なリニューアルを実施。特に草生け的存在のストレートティーは過去10年の処方を全て洗い出し、イチから設計し直したという。

 また、紅茶の命である茶葉の配合については、ストレートティー、ミルクティー、レモンティー全てにおいて、これまでの味や午後の紅茶らしさを維持しつつ、よりおいしい紅茶にするため何十回も調整を繰り返して理想の配合バランスを追求した。

 「これからの紅茶市場は、コロナ禍で一時落ち込みが見られたものの、長期トレンドでは上昇傾向であり22年以降も伸長が見込まれます」(田代さん)。中でも、無糖・微糖カテゴリーはますます伸長すると分析し、「午後の紅茶 おいしい無糖」や「午後の紅茶 ミルクティー微糖」はまさにその立役者といえるだろう。

 その一方で、無糖・微糖カテゴリーに続くべく、健康領域など新しいカテゴリーの開拓にも取り組んでいる。日本の紅茶市場を牽引してきた午後の紅茶が生み出す次の1杯に注目したい。