「いま月利8%で回っている。追加で500万円入れようと思っているが、どう思う?」

 大学時代の友人から、最近こんな相談を受けることが増えたと話すのは、IFA事業を営むJapan Asset Managementの堀江智生代表だ。こうした相談をしてくるのは、日本を代表する大企業の一流とされている社員だ。優秀で頭もよい30代、40代の働き盛りが、投資詐欺のターゲットになっている。

 「身近な先輩などから持ち込まれるケースが多いようだ。『オレはこれで10万円が30万円になった』とか」(堀江氏)。サクラなのか実際に信じているのかはいろいろだが、信頼する友人経由で、怪しい投資話が持ち込まれるというパターンが増加している。

 8月25日には、22歳女性が、同級生からのSNSがきっかけで仮想通貨の運用をうたう投資に手を出し、そのために行った150万円の借金を苦に自殺したニュースが流れた。また、27日には40代男性が、マッチングアプリで知り合った人物からFXの運用を誘われ、計1億円を振り込んだという詐欺事件もニュースになっている。

 昔から投資詐欺はあったが、最近は若者や会社員など、普通の人々に被害が広がっている印象も持つ。これはなぜか。

 「SNSの広がりはきっかけの1つで、資産形成への関心が強まっていることが理由の1つではないか」と堀江氏は話す。

 確かに、Twitterでも「いくらもうかった」とか「こんな投資をすれば間違いない」など、投資に対する距離感が近くなってきている。投資への関心が高まる事自体は悪いことではない。問題は「どうせ投資するなら、年で5%ではなく、毎月5%もらえるものがいい、と思ってしまう」(堀江氏)ことだ。

●月利5%以上はほぼ詐欺だ!

 詐欺かどうかの見分け方として、まず「月利5%以上はほぼ詐欺、月利という言葉を使うのはほぼ詐欺」だと堀江氏は言う。

 複利を考えなくても、月利5%は年利に換算すると60%にも達する。こんな利回りの商品が存在するのか? それを考える際には、リスクフリーレート+リスクプレミアムが利回りになるという投資理論が参考になる。

 リスクフリーレートとは、全くリスクがない投資商品へ投資した場合の利回りだ。世界的にいえば、それは米国の国債への投資であり、ざっくり利回りは3%となっている。リスクプレミアムとは、そこに上乗せされる利回りのことで、これが大きいほどリスクも大きいことを意味する。例えば今、米国株式の期待利回りが6%だと言ったら、リスクフリーレート3%にリスクプレミアム3%の組み合わせでできているということだ。

 ではリスクプレミアムは、どんな場合にどのくらいになるのか。「4割くらいの人が潰れるんじゃないかと思っている会社の社債利回りで10〜12%程度。ギリシャが一番やばかった時で30%くらい」だと堀江氏。年利60%の投資のリスクの高さが分かる。

 「旨味のある投資を100%否定することはできないが、そんな美味しい話が世の中に出回っていて、しかも自分のところに回ってくるかというとそんなことはないと考えるべき」(堀江氏)

●ライセンスを確認

 もう一つの詐欺の見分け方が、投資先が認可された免許を持っているかどうかだ。例えば、株式や債券などの金融商品の提案にも免許が必要だ。IFA事業者は、金融商品仲介業者の免許を持っており、証券会社が扱っている商品だけを案内できる。またFXや先物、オプションなどについては提案できない。

 もう一つ、投資助言業ならば、個人に対して「この株を買うといいですよ」とアドバイスしてお金を取れる。逆に、金融商品仲介業者は顧客から直接お金を受け取ることは禁止されている。

 投資案件を持ってきた先のWebページにこうした免許が載っていれば、ある程度は安心できる。金融庁が認可した会社や認可した商品への投資になるからだ。

 逆に、免許が不要な商品への投資は、失っても困らない額でやるべきだと堀江氏。詐欺ではないとしても、投資先のリスクを把握して、リターンが適切かを判断するのがたいへん難しいからだ。「詐欺で多いのは不動産を証券化してファンドにしたもの。FXなどのシステムトレードも肌感覚では9割詐欺。聞こえがいいのでお金を集めやすいが、言っていることが本当かどうかの判断もできない。基本的にやらないのが無難」(堀江氏)

●すべての世代に金融教育が重要

 個々人の対策も必要なことだが、業界としてはこの状況にどう対処すればいいのだろうか。投資への関心が高まるのは良いことだが、詐欺の増加は投資意欲を萎ませることにもつながる。

 「規制を作ってもいたちごっこな気がしている。悪いやつは抜け道を見つけていってしまう。ユーザーの金融教育は重要度が上がっていくだろう」(堀江氏)

 金融庁は国家戦略として、すべての世代を対象に金融教育を推進していくことが必要だと提言する方針だ。投資家個人個人が金融リテラシーを身に着けて、判断できるようになるしか、詐欺への対策法はない。

 4月からは、高校の家庭科で金融教育の授業も始まった。とはいえ、家庭科教師自身の金融リテラシーが高いというわけでもなく、生徒と一緒に学びながらというのが実情だという。金融広報中央委員会が公表している「金融リテラシー調査 2019年」によると、日本人の金融リテラシーは、世界各国と比較しても低い。

 こうした背景の元で、証券会社もIFA事業者も運用会社も金融教育に力を入れている。しかし、金融業者による教育は、投資商品を売るがためのものだと思われがちという難しさもある。証券会社が行う投資教育であれば、経済や銘柄の分析方法などが中心になる傾向があり、それは暗に最終的に自社で株式を売買してほしいという思いが入ってしまう。だから「販売と教育はかなり意識的に分けないと、ユーザーが話を聞いてくれない」と堀江氏は言う。

 一方で、販売を全く意図しない金融教育も難しい。それはあくまでCSRの範囲内の活動となり、掛けられるコストや継続性に課題があるからだ。

 仮想通貨やファンド化商品など次々と新しいものが生まれる投資商品。そして、今や投資は一部の人のものではなく、誰もが気にするものとなってきた。急速な状況の変化に対し、投資教育はやっと始まったばかり。「資産所得倍増計画」の実現には、業界の制度だけでなく、ユーザーの地道な金融リテラシーの向上も不可欠だということを、忘れてはならないだろう。