「Z世代」と呼ばれる1996年以降に生まれた人たちが、2019年から大卒新入社員として働き始めている。その中で、上の世代との価値観の違いや、仕事への向き合い方をめぐる摩擦も起きている。

 広告関連業の人事課長は、あらためて今どきの新入社員の特性を知らされたと話す。

 「最近の新入社員は、基本的には“良い子”が多い。性格的にはガツガツしていないし、さりとておとなしいわけでもなく、あえて言えば言動にソツがないこと。5段階の成績ではオール4のイメージ。教科書通りにやることはすごく得意だし、ある意味で優秀だ。ただし、共通するのは“失敗を恐れる優等生”という感じ。だから教えてもらっていないことをやることを極端に嫌がる。何かミスをして叱っても『教えてもらっていませんから』と平気で言う。それでいて相手の懐に飛び込むのも苦手だ。へりくだって『教えてください』というのが嫌だし、教えてくれないのも嫌だ、という人が多い」

 ソツがなく教えられた仕事は忠実にこなすのだが、どこかに失敗したくないというプライドのようなものがあり、教えられていない仕事に挑戦しようとしない。またミスしても「教えなかったあなたが悪い」と、自分の失敗を認めようとしない。その結果、上司や先輩とこじれると、簡単に退職してしまう傾向があると、この人事課長は説明する。

 こんな特徴を持つ昨今の新入社員と、「先輩社員の1を聞いて10を知れ」とか「失敗を重ねてこそ成長につながる」などと教えられた昭和生まれの上司世代。波長を合わせるのは難しいだろう。

 Z世代が最初に手にした携帯はスマホであり、情報収集やコミュニケーションの手段としてインターネットやSNSを駆使する世代でもある。一方、SNSを通じて小・中・高・大学の横のつながりは幅広いが、上下の人間関係のコミュニケーションに不得手な人も多いと言われる。

 だからというわけではないが、働くことに対する意識や価値観も昭和世代とは大きく異なる。

●「オンリーワン意識」のキャリア観

 リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2022」(6月29日発表)によると、「定年まで現在の会社で勤めたい」新入社員は11.0%。「どちらかと言えば勤めたい」を含めても32.0%。「現在の会社で勤め続けることにこだわらない・どちらかと言えばこだわらない」人が57.5%に上っている。

 また、ラーニングエージェンシーが実施した「新入社員意識調査レポート」(4月22日発表)によると「将来会社で担いたい役割」の質問では「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい」が31.6%と最も高く、一方「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい」は23.5%。14年の調査開始以来、過去最低の低さになった。

 働く意味についても「仕事を通じて成し遂げたいこと」の質問では最も多かったのは「安定した生活を送りたい」(64.5%)、続いて「自分を成長させたい」(60.6%)、だった。今年は前年と順位が逆転し「安定した生活を送りたい」が5.2ポイントも増加し、トップになった。

 ここで見てとれるのは「就社」から「就職」意識への変化に加えて自己実現へのこだわり、つまりオンリーワン意識への変化だ。

 平成の経済停滞期に幼少期から中・高生時代を過ごしたことで、会社という自分を守ってくれるシェルターに対する信頼性が低下する一方、個人として知識やスキルを磨き、それを生かして多少のゆとりのある小さな幸せを維持できる人生を送りたいという思いがある。

●短期にリセットされる傾向

 複数の大学でキャリアコンサルティングを行い、Z世代の大学生を見てきた講師は「人あたりがすごくよく、真面目で感じもよさそうだが、本当は何をしたいのかよく分からない世代」とも指摘する。面接の練習では以前の学生に比べて緊張しないでよどみなく話すことができるし、授業後の質問や課題に関する文章を書かせても、未記入の学生は減ったそうだ。

 ところが自分が話したことや書いたことを翌週には忘れる学生が多いと言う。

 「面接の練習でこうしたほうがいいよと言うと『気が付きませんでした、本当にそうですよね。来週もう1回練習させてください』と言うのですが、翌週に練習しても、気が付きませんでした、と同じ対応をする。先週も同じことを言いましたね、と言ってもなぜか覚えていない。なぜだろうといろいろと考えてわかったのは、ネットやLINEの影響を強く受け、短期に集中して要領よく処理するのはすごく上手だが、それが終わるとリセットしてしまう。そのため課題を整理したり、深めたりすることはしない傾向がある」(講師)

 また、グループディスカッションの時間を30分与えても、20分で終わるケースが多いそうだ。

 「深いディベートをしたわけではなく、皆結論に満足していますとニコニコして報告しにくる。議論をしたがらないというより、早い時間で皆がいい気分でまとまったのだからこんなにいいことはないという感覚だ」(講師)

 そして「自分の考えを整理するなど集中できる限度」が20分程度と言う。これを検証するために学生に「スマホを見ないで会話できる時間の限度」についてアンケート調査を実施したところ、20分という回答が最も多かったという。ということは1時間の会議を設定しても彼ら、彼女らは20分を過ぎると息切れしてしまうということだ。

●ポイントは「短い時間軸での目標設定」

 では育成を含めてこの世代にどう対応すればよいのか。重要なのは「短い時間軸で目標を設定する」ことだ。

 多くの企業の新入社員研修を手掛けるコンサルタントはこのように説明する。

 「新人に将来の夢は何か、30年後にどうしたいかを聞いても何も出てこないし、相手にも響かない。また、自分が納得しなければ、やらされ感を抱いてしまう人が多い。そういう人には例えば『1年後に自分の後輩が入社してくるまでに一通りできるようになりたいと思わないか』と聞けばノーという新人はいないだろう。そのために3カ月後、半年後にこれができるようになろうと説明し、最初の1カ月に何をするか目標を設定する。個々の違いに応じて本人がどうなりたいかを親身になって聞くことが大事。一度腹落ちしたら行動が早いのもこの世代の特徴だ」

 もちろん、単に会社のために頑張ろうという精神論では通じない。また、この仕事をやってくれと指示しても「どうしてこれをやるんですか」と聞いてくる。

 コンサルタントは「丁寧に説明し、納得しないと動かない。仕事の進め方においても、仕事の成果が求められることは変わらないが、プロセスをちゃんと観察し、一つの仕事を達成したら『よくできたね』と認めながら大きな成果に導いてあげることが大事だ」とアドバイスする。

 確かに仕事を任せきりにせず、決して怒らず、相手に寄り添って丁寧に指導することは大事だ。でもこれができる先輩や上司はどれぐらいいるのかという不安もある。

●「ゆるブラック嫌い」と「安定志向」の共存

 この世代の理解を複雑にするポイントが、“ほどほど”の安定志向の人と、成長志向の強い「ゆるブラック」嫌いの人が共存していることだ。前述の調査で、仕事を通じて成し遂げたいことが「安定した生活を送りたい」(64.5%)、「自分を成長させたい」(60.6%)のツートップであったことからも分かるように、安定志向が増えている一方で成長志向が強い人も少なくない。

 特にZ世代に嫌われる傾向があるとして昨今話題になっているのが「ゆるブラック」企業だ。残業やストレスのないホワイトな労働環境を与えられ、実力を養う経験やストレッチもなく、成長実感も持てずにゆでガエルにされてしまう企業のことを指す。

 企業によってはコロナ禍でリアルの対面やコミュニケーション量が少なかった学生に配慮して、じっくり育成しようというところもある。ところが成長志向の「ゆるブラック」嫌いには我慢ならないらしい。

 あるサービス業の人事部長は「新人の中には『僕は即戦力です。早く実践で使ってください』と言う人もいれば、『どうして幼稚園児みたいな雑用をさせるのか』と、上司に文句を言う人もいる」と語る。

 早く一人前になりたいと、どこか焦っているタイプが一定数いるそうだ。会社としては配慮して丁寧に育成しているつもりでもそれが気に食わない新人もいる。まさに多様な働き方の価値観を持つ社員にどう対応していくのか、企業の育成力が試されている。

 しかも今は従来と違い、テレワーク下のマネジメント力も求められる。次回はこうした世代の育成などに対し、困難に直面するマネジャーの実態を報告したい。