●連載:マネジャーのお悩み相談室

思うようにチーム運営ができない、部下がいつまでも成長してくれない──こうしたマネジャーが抱える悩みにお答えします。回答者は、ベンチャー企業向けのマネジャー育成プログラムなどを手掛けるEVeM代表取締役の長村禎庸氏。

●今回のお悩み

 「指示待ち人間」的な部下が多く、チームの業務が計画通りに進みません。

 毎日メンバーに指示を飛ばす日々ですが、それでも思うように行きません。どうすればもっとスピーディにチームが動きますでしょうか?

●答え

 マネジャーが全部指示をしなければならないのは大変ですよね。メンバーが自発的に動いてくれればチームのスピードは上がります。そのためには、メンバーが自発的に動くようなマネジメントを心掛ける必要があります。

●指示待ち人間はこうして生まれる

 指示をしなければ動かない人間のことを世間では「指示待ち人間」と呼びます。まず、指示待ち人間が生まれる2パターンのやりとりをご紹介します。

 例えば、「新規事業を作りたい。飲食店のレジがデジタル化されて、計算も全てタブレットでできるサービスのTOP画面イメージを作成してきて」とマネジャーがメンバーに指示をしたとします。とても分かりやすい指示ですよね。

 イメージを持ってきたメンバーに対し「じゃあ次は、このボタンを押した後の画面について具体的なイメージを作成してきて」と指示をします。これも分かりやすいですよね。イメージを持ってきたメンバーに対して……と細やかな指示を繰り返していきます。

 どうでしょうか?マネジャーはこの調子で細やかな指示を繰り返し、メンバーは指示待ちになっていきます。

 マネジャーは「もっと自分で考えてよ……」と思うでしょうし、メンバーは「指示が細かいな」と思うはずです。

 そこで、細かい指示がめんどくさいと感じたマネジャーが、指示をざっくりに変えたとします。

 「新規事業何か考えてよ」という指示に変えました。メンバーはそのざっくりとした指示に対し「どの分野ですか?」「どれくらいの売り上げを目指しますか?」「どれくらいの納期ですか?」などさまざま質問をするでしょう。結局マネジャーから細かい指示をすることになり、メンバーはその指示待ちになります。

 細かく指示をしても、ざっくり指示をしても、結局は指示待ち人間が生まれてしまいます。

 「もっと自分で考えてよ」という願いが叶わないのであれば、「じゃあ1つ1つやること指示するしかないじゃないか」となり、指示待ち人間に囲まれながら仕事をしているマネジャーさんは多いのではないでしょうか。

●指示待ち人間であふれることの弊害

 指示待ち人間であふれてしまうとどのような弊害があるのでしょうか?

 まず1つ目は、相談者の方が悩まれているようにチームのスピードが格段に落ちます。何かお願いしたいときに都度細かい指示をしなければならないわけですから、マネジャーの時間がかかります。メンバーもマネジャーから次の指示があるまで動けないわけですから、チームとしての動きはかなり遅くなります。

 2つ目は、マネジャーのストレスです。指示をしないと動けないメンバーに囲まれたマネジャーは次第にイライラしてきます。このような状態はマネジャー自身にとってもよくないですし、メンバーにマネジャーのイライラが伝わればメンバーのやる気も削がれます。マネジャーのストレスに端を発し、チーム全体を士気を下げてしまうのです。

 3つ目はメンバーの離散です。次の指示があるまで動けないような状態は、当然メンバーにとってやりがいあふれる状態とは言いがたいでしょう。メンバーは成長実感を感じることができず、離職などでチームを離れていきます。

 このように、指示待ち人間であふれると多くの弊害があります。

●メンバーが自発的に動くためには 

 「指示待ち人間」というのは、指示を待つメンバー側を揶揄(やゆ)して生まれた言葉なのでしょう。しかし、メンバーを揶揄する前に、マネジャーの皆さんに「自分はどういう指示をしているのだろうか」ということを振り返ってほしいと思います。

 1つ目の指示「新規事業を作りたい。飲食店のレジがデジタル化されて、計算も全てタブレットでできるサービスのTOP画面イメージを作成してきて」だと、指示が具体的すぎて、メンバーが自分で考える余地がありません。

 この抽象度で指示をされてはメンバーはその通りにやらざるを得ません。メンバーがその通りにやらざるを得ない指示を繰り返すうちに「指示をし続けるマネジャー」と「指示を受け続けるメンバー」が生まれます。

 2つ目の指示「新規事業何か考えてよ」だと、ざっくりしすぎています。これだけではメンバーは動けません。動かないメンバー、質問を繰り返すメンバーをみて「指示待ちだな」とマネジャーは思うでしょう。

 指示は具体的すぎても抽象的すぎてもダメで、「程よい抽象度」で設定することがポイントになります。

 この例では、「飲食店向けの業務支援ツールの分野で新規事業を企画してみて」といった程度の指示だと、メンバーは自発的に調べ事をし、アイデアを考え、企画を練ることができます。また、企画を考えた後も、自分で考えた企画なので自走しやすくなります。

 「あいつは指示待ち人間だ」と嘆く前に、自分がどんな指示をしているのかを振り返ると良いでしょう。具体的すぎても、抽象的すぎても、指示待ち人間を生んでしまいます。

●「指示待たせ人間」にならないために

 指示待ち人間を生むようなマネジメントになっていないか? マネジャーの皆さんには一度考えてほしいと思います。

 指示待ち人間であふれることの弊害の3つ目に挙げた「メンバーの離散」は特に深刻な弊害だと思います。

 いくら優秀なメンバーを採用しても、マネジャーが「指示待たせ人間」であれば、メンバーは離れていきます。何度採用しても、何度も離れていきます。

 つまり、そのマネジャーが運営するチームのOSが「メンバーを活躍させるOS」になっていないのです。このようなチームは、どんなテコ入れをしようが成果を残すことはありません。

 マネジャーの皆さんはぜひ一度、ご自分のマネジメントを振り返り、才能ある優秀なメンバーの活躍の芽を摘んでいないか、確認してみてください。

●著者:長村禎庸(株式会社EVeM 代表取締役 兼 執行役員CEO)

2006年大阪大学卒。リクルート、DeNA、ハウテレビジョンを経てベンチャーマネージャー育成トレーニングを行うEVeM設立、現在同社代表取締役。DeNAでは広告事業部長、AMoAd取締役、ぺロリ社長室長兼人事部長などを担当。ハウテレビジョンでは取締役COOとして同社を東証マザーズ上場に導く。 EVeMでは創業2期で数百人のベンチャー経営者・マネージャーにマネジメントトレーニングを提供。2022年に書籍「急成長を導くマネージャーの型」も発売。