2022年8月30日、イオンリテールは、イオンスタイル新浦安MONAに新業態の冷凍食品売場「@FROZEN(アットフローズン)」を導入。約1500品目を扱い、日本最大級の品ぞろえを誇る。

 オープンから2カ月が経過したいま、1食2000円を超える高級なディナー向けメニューが一番人気となり、アットフローズン全体で計画費の約2倍の売り上げにのぼっているという。

 人々が外食を控えるようになったここ2年ほどの間に、冷食業界がどのように変化し、消費者は冷食に何を求めるようになったのか。イオンリテール 食品本部 デイリーフーズ商品部の青木郁雄部長に聞いた。

●1500品目を陳列、ご当地餃子や海外メニューも

 アットフローズンが導入されたのは、千葉県浦安市にあるイオンスタイル新浦安MONA。フロアマップを見ると、872平方メートルの店舗面積のうち約50%が冷食売場となっている。

 売場は用途別に3つに分けられている。下ごしらえ済みでラクに調理できる食品「Cook」(約300品目)、温めるだけで本格的な味が楽しめるメニュー「Heat」(約800品目)、国内外の名店のスイーツやパンなどを集めた「Eat」(約400品目)だ。

 特にディナー向けメニューとスイーツに注力している。既存店では1000円以上の冷食を取り扱うことはほとんどないが、アットフローズンでは、「値段を気にせず試食しておいしい商品を選んだ」そうだ。

 アットフローズンでは、冷食ならではの「優位性」「利便性」「専門性」に加えて、「豊かさとおいしさ」「グローバルな食体験」をビジョンに据えている。明らかな高価格帯商品や海外メニューに加え、ベビーフードやシニア食まであり、従来のスーパーとは一線を画す品ぞろえだ。

●総菜から「冷食」へ転換。計画費2倍の売り上げに

 なぜイオンがアットフローズンを導入したかというと、直近の冷食カテゴリー売り上げがコロナ禍以前に比べて3割以上も増加している事実があるためだ。

 「冷食の売り上げはコロナ禍以前から右肩上がりでしたが、外出が制限されるようになって、伸びが加速しました。冷凍技術の進化により、冷食がおいしくなってきていることも踏まえ、本格的な参入を決めました」(青木氏)

 とはいえ、既存店の冷食売場を大規模に広げるのはスペースの問題で難しい。そこで新業態のアットフローズンとして通常の冷食売場と切り離し、広めの総菜売場とイートインスペースをアットフローズンに転換することにした。

 「コロナ禍以前、『中食』と呼ばれる総菜の伸びが顕著に見られました。そのため、バラエティー豊かな総菜販売とイートインスペースを組み合わせて2017年にスタートしたのですが、コロナ禍でイートインの需要が落ち込んでしまい……。浦安はファミリーから単身、シニアまで幅広い方が住むエリアですし、冷食の需要が高いだろうと考えました」(青木氏)

 時期を同じくして、それまでは冷食をつくらなかった専門レストランが、新たなビジネスチャンスとして冷食に目を向けるように。高性能の業務用フリーザーも小型化し、小さなレストランでも導入しやすいサイズになっていた。

 こういった背景から冷食業界が盛り上がり、日本最高峰の冷凍食品をうたう高価格帯の「Z’s MENU(ジーズメニュー)」や、横浜と仙台にオープンした冷食販売店「T●(Oにマクロン)MIN FROZEN(トーミン・フローズン)」などが話題に。イオンでもアットフローズンの導入にいたった。

 8月30日にオープンしてから、予想以上に好調だという。

 「夕方にドカンと来客の波があるわけでなく、午前中はシニア層、日中は主婦層、夕方以降はサラリーマンや学生など、コンスタントに来店いただいていますね。従来の冷食売場と比較して、お客さまの年齢層は確実に広いです。ディナー向けメニューとスイーツがよく売れ、アットフローズン全体で計画費の2倍ほどの売り上げとなっています」(青木氏)

 リッチでレアな商品が予想以上に分かりやすく売れている。一方で、従来の冷食売場での主力商品(手ごろな価格の餃子など)は、通常の半分ほどしか売れないそうだ。

●一番人気「俺のフレンチ」は冷食らしからぬ味

 9月の月間人気商品を尋ねると、2000円を超える高級商品が2つもランクインしていた。

1位:俺のフレンチ 牛ホホ肉の赤ワイン煮込み(2138円)

2位:グローリー サンザシ飴(321円)

3位:ピカール 4種類のマカロン(1497円)

4位:SLクリエ―ション 明洞で食べた参鶏湯(3218円)

5位:梅の花 古市庵浪花寿司(1077円)

 「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」を食べてみたところ、冷食とは思えない品質に驚かされた。肉は湯煎で15分以上と調理時間はかかるが、ほろほろとしたやわらかいホホ肉と濃厚なデミグラスソース、食感がしっかり残っている野菜は満足度が高かった。レストランで食べる味にかなり近いのではないか。

 最先端の冷凍技術を使った日本酒も試飲。フレッシュな香りや風味を強く感じ、その日本酒の特徴がしっかり主張している印象だった。他の日本酒も試したくなった。

 ユニークなスイーツとして展開されていたのが、飲むティラミス。解凍時間を調整すれば好みの固さで飲めるといわれ、やや短い解凍で飲んでみたところ、ストローでうまく吸えなかった。本格的なティラミスで味は申し分なくおいしかったが、解凍加減は難しかった。

 「以前は、冷食というと、お弁当向けのおかずやパスタやうどんなどのランチメニューが中心でした。ディナー向けは唯一餃子ぐらい。アットフローズンの人気商品を見ると、消費者が冷食に求めるものが明らかに変化していることが分かります」(青木氏)

●季節感があり、飽きない冷食売場に

 アットフローズンは計画比の約2倍の売り上げと反響を得ているものの、すぐに店舗拡大は考えていないという。

 「あくまで実験的な店舗という位置付けであり、何もかもが売れているわけでもありません。しっかり検証することが先決です。とはいえ、外食価格が上がってきているなかで、手ごろでおいしい冷食の需要が落ちることは考えづらい。1000円を超える商品でも、外食と比較すればだいぶ安く抑えられますから。1店舗で終わらせたくないとは思っています」(青木氏)

 1店舗目で確実な成功パターンを見つけてから、着実に伸ばそうという姿勢だ。今後の戦略として、青木氏は「季節感のある売場づくり」を挙げた。

 「10月はハロウィーン向けのコーナーを設けて、その後はクリスマスやお正月向けの商品展開をします。従来の冷食売場は季節感がほとんどなく、メーカーが新商品を出す春・秋のタイミングに商品が入れ替わる程度でした。アットフローズンは季節感を大事にして短いサイクルで商品を入れ替え、飽きられない工夫をしていきます」(青木氏)

 引き続き、有名店など他社ブランドの商品を探っていくそうだが、自社ブランドのバリエーションを増やす努力もしている。例えば、皮を向いたバナナの冷凍。近年、バナナが値上がりして買いづらくなっているが、ヨーグルトやスムージーに少しだけ使いたい人はいるはず。そこで冷凍にトライしているが、どうしても茶色く変色してしまうそうだ。

 「しらたきやこんにゃくなども鍋料理に少し使いたいときに便利かなと思いますが、水分が多すぎるので現状は冷凍できません。しかし、5年後、10年後にはできるようになるだろうという希望があります」(青木氏)

 冷食の確かな進化を感じられたアットフローズン。店舗の知名度が上がってきているのか、取材時、売場を撮影している外国人の姿も見られた。あらゆる食品が冷凍で買える時代は、そう遠くない未来にやってくるのかもしれない。

(小林香織)