ローソンは9月から、本格的なデザートドリンクを提供するカフェ事業「MACHI cafe+」(以下、マチカフェプラス)を始めた。フレッシュフルーツを使用したスムージーを主軸においており、注文を受けると店内の厨房区画でドリンクを1から手作りで調理する。なんと、バナナを切るところから始めるのだ。

 昨今コンビニ業界は「効率化」「省人化」が叫ばれているが、ローソンはなぜ、このような“手の込んだ”事業を開始しようと思ったのだろうか。商品本部 ナチュラルローソン商品部の鷲頭裕子部長と、マーケティング戦略本部 プロモーション部の笠井詩織さんに話を聞いた。

●ローソンが提供する本格的なカフェ事業「マチカフェプラス」

 マチカフェプラスは、店内厨房スペースを活用し、新たにフレッシュバナナ、冷凍フルーツなどを使用した“デザートドリンク”を提供するカフェ事業だ。レジで注文を受けた後、店内厨房でバナナを剥いてフルーツやミルクなどの素材を組み合わせ、ミキサーでスムージ―を作っている。ホイップの追加にも対応する。ローソンでは店内で弁当やサンドイッチなどを調理する「まちかど厨房」を展開しており、その厨房スペースを有効活用する。

 店舗展開は店舗従業員の知識やスキルに応じて社内認定している「ファンタジスタ」の在籍を条件とし、マチカフェプラスのコンセプトに同意している店舗とする。ファンタジスタ制度とは全国の従業員が挑戦できるローソン独自のステップアップ制度。ファンタジスタになるためには、ファンタジスタプログラムの受講とWeb試験の合格が必要となり、店舗オペレーションに関する知識とスキルを兼ね備えることで、各分野のスペシャリスト=ファンタジスタとして認定している。ファンタジスタは、接客・FF(ファストフード)・マチカフェ・まちかど厨房の4部門で構成している。

 現状は関東を中心に5店舗でマチカフェプラスを導入している。10月21日に「ローソン久が原一丁目店」(東京都大田区)を取材した際は、バナナを使用したスムージーを7品と「ミックスフルーツソルベ」を販売していた。

●マチカフェプラスを導入した狙い

 マチカフェプラスは一見手間がかかる、ハードルの高い事業のように感じるが、どういった経緯で導入に至ったのか。笠井さんは「マチカフェプラスは『接客』『従業員とお客さまのコミュニケ―ション活性化』を目的に考えられた事業だ」と話す。

 「ローソンには『ファンタジスタ』と呼ばれる接客のプロフェッショナルがいます。ファンタジスタの方々がお店のファンを作ってくれているから、ローソンを選んでもらう理由になっていると考えています。従業員から『接客を通じてもっとお客さまと関わりたい』という意見が挙がっていたことに加え、コロナ禍で『人と人とのつながり』が希薄になるなかでお客さまも接客の場を喜んでくれるのではないかと考え、厨房区画を活用し、注文を受けてから商品を調理するビジネスに挑戦しました」(笠井さん)

 食事や軽食ではなく、カフェ事業に挑戦したことにも狙いがあるという。

 「ファンタジスタやオーナー、店長を集めてシンポジウムを開催した際、『コーヒー以外のカフェメニューを提供するのはどうか』『ローソンはデザートが強いので、その強みを生かしてドリンクを開発できないか』という意見が集まりました。お客さまの1番近いところにいる従業員の意見をカタチにすること、今後のローソンの発展につながるのではないかと考え、商品開発を進めました。店内の厨房で自由に調理できる強みを生かし、スムージーを販売することに決めました。スムージ―専門店の需要が増加していたことも理由の一つです」(鷲頭部長)

●メニュー開発も工夫 「手間は少なく、商品数は多く」

 マチカフェプラスでは「甘いデザートドリンク」「砂糖不使用の健康系ドリンク」の2種類を扱っている。鷲頭部長は「市場ではどちらかに特化している企業が多いが、両方を提供することをマチカフェならではの強みにしようと考えた」という。

 「商品ごとにいろんな素材を増やしていくと調理の時に迷ってしまうと考え、扱う素材は少なく、複雑なオペレーションを必要としない商品開発を意識しています。年齢や性別問わず人気が高いバナナを軸に置いたメニュー構成にしました。牛乳とバナナをベースにして、ブルーベリーを足したり、イチゴシロップを入れたり、限られた素材を有効活用し、商品数を増やしていきました」(鷲頭部長)

●「競合は置かない」 ライバルにはない独自性で勝負

 コンビニ大手で同様の取り組みを挙げると、セブン-イレブンの「セブンカフェスムージー」、ファミリーマートのフラッペが思い浮かぶ。こちらは機械で簡易的に商品を仕上げる、いわば「自動販売機」「レンジでチン」のような仕様だ。鷲頭部長は「マチカフェプラスは独自路線。カフェ、喫茶店、専門店のいいところどりをした事業だ」と話す。

 「マチカフェプラスは店内で調理しており、フレッシュなバナナを使用しているため、本格的な味わいや香りが提供できます。厨房があるからこその武器を生かし、自由度の高い商品提供、鮮度の高い商品を販売できることが差別化につながると考えています。『何屋さん』ということにとらわれず時代背景やニーズに対応し、いろいろな商品にチャレンジしていきたいです」(鷲頭部長)

 季節ごとにメニューチェンジも実施する。10月25日からは秋冬向けのメニューとして「シングルオリジンコロンビア」(180円)、「シングルオリジンコロンビアラテ」(249円)の販売を始めた。今後はホットドリンクを中心に新商品を投下する予定だという。

●25年度までに全国の500店舗での展開を目指す

 21年6月から約1年間実証実験を行った際は、女性の購入が多く、平均で1日当たり約6000円の売り上げを記録した。今後は、1日当たり20〜30杯の販売を目標にしていく。

 「現状は女性やファミリー層を中心に支持されており、砂糖不使用シリーズは特にお子様連れのお客さまに人気です。また、午後2〜4時に売れているので、間食需要で手軽に甘いものを食べたいと考えている女性に刺さっているのだと考えています。マチカフェのコーヒー類とカニバリすることもありませんでした。今まであまり取り込めていなかったZ世代も獲得したいと考えています」(笠井さん)

 今後は25年度までに全国の500店舗での展開を目指す。周囲にカフェがない、子ども連れの来店が多い店舗への導入を検討するという。笠井さんは「マチカフェプラスのコンセプトが正しく伝わらないと、従業員が『負荷が多い』と感じてしまうと思います」と話し、マチカフェプラスに対する理解を深めるための場を用意していると話す。

 「とはいえ、マチカフェプラスは拡散するモデルではないと考えています。マチカフェプラスは従業員の技術力、接客力が肝になるビジネスです。注文を受けてから調理するのでどうしても待ち時間は生まれてしまうため、お客さまの満足度を高めるためにお店や従業員の努力が求められます。そういったサービスを提供できる店舗が着実に増えていくといいな、と考えています。今は関東での展開ですが、今後オーナーさんからの要望があれば、前提条件は崩さずに全国拡大を視野に入れていきたいです。本部から押し付けるのではなく、手を挙げてくれたオーナーさんと条件を考え、導入に向けて話し合っていきたいです」(鷲頭部長)