11月26日に京成電鉄、京急電鉄、北総鉄道、都営地下鉄浅草線でダイヤ改正が実施された。この4者(3社+1交通局)は相互直通運転をしているため、同時にダイヤ改正を実施する。

 京成電鉄はスカイライナーのうち青砥駅停車列車を新鎌ヶ谷駅にも停車させた。京急電鉄は日中の最速列車「快特」のうち半分を「特急」に格下げした。北総鉄道は線内の区間運転を増やした。都営浅草線は京急と京成に挟まれた調整役のようなところがある。列車の運行本数も少し変わるけれども、主に直通先の種別や行先が変わる。

 ところで、鉄道のダイヤ改正は3月中旬が多い。新年度からの需要変動に合わせるためと、会計年度に合わせる形で新路線の開通、廃止も行われるからだ。まずJRグループ各社が連絡して新ダイヤをつくり、JRと相互直通する民鉄や地下鉄のダイヤも変動する。新幹線停車駅で連絡する地方鉄道も新幹線に合わせる。まるでドミノ倒しのようだけれど、これらを総じて「全国ダイヤ改正」と呼ぶ。

 しかし、京成電鉄、京急電鉄、北総鉄道、都営地下鉄浅草線の3社1局の主なダイヤ改正は、11月前後である。JRと線路の規格が異なるため相互直通運転をしないからだ。その代わり、航空ダイヤの影響を受ける。

 京成電鉄は成田空港、京急電鉄は羽田空港に乗り入れている。空港の運用時間の拡大縮小や航空機の発着ピーク時間を見越してダイヤ改正を実施する。その航空ダイヤはほぼ世界統一で11月と3月に変更される。これは欧米の夏時間の開始と終了に合わせるためだ。日本の民間鉄道が世界の航空事情とリンクしているとは興味深い。

●不ぞろいの京成スカイライナー発車時刻

 11月26日のダイヤ改正で筆者が注目したところは「スカイライナーの上野駅発車時刻」だった。スカイライナーは、京成上野駅・日暮里駅と空港第2ビル駅・成田空港駅を結ぶ空港連絡特急だ。日暮里駅〜空港第2ビル駅はノンストップで、「都心〜成田空港最速36分」がウリだ。スピードこそ最高のサービスだからである。

 スカイライナーは1時間当たり3往復の頻度で走る。かつて京成上野駅発車時刻は毎時00分、20分、40分だった。朝夕ラッシュ時は通勤輸送が優先されるため少しズレる。けれども、基本は京成上野駅発00分、20分、40分だ。JRから乗り換える人にとっては日暮里駅発05分、25分、45分だ。この分かりやすさもサービスのひとつである。

 ところが、2020年2月26日のダイヤ改正でこの原則が崩れた。一部のスカイライナーの発車時刻が3分繰り上がった。京成上野駅発毎時00分、17分、40分になった。その影響で日暮里駅発時刻も変わった。海外へ出張、旅行に出掛ける人は乗り遅れに注意しよう。もっとも2年以上も経っているから定着したといえそうだ。

 11月26日のダイヤ改正で、この変則的なダイヤが解消されるか否か。結果として解消されなかった。京成上野駅発車時刻は毎時00分、17分、40分、あるいは毎時00分、20分、37分だ。17分だけではなく、37分発も設定されて複雑度を増した。

 京成電鉄にとってこのダイヤは不本意ではないか、と筆者は思う。元通り、京成上野駅発00分、20分、40分に戻したかったはずだ。しかし、今回のダイヤ改正ではかなわなかった。

 そもそも、なぜ17分発、37分発のスカイライナーが設定されたかといえば「青砥駅に停車するため」だ。青砥駅は京成押上線が接続しており、都営地下鉄浅草線と相互直通運転を実施している。さらにトンネルの向こう、京急電鉄からも直通する列車がある。それらの乗客のうち、いままでアクセス特急で成田空港へ向かっていた人をスカイライナーに乗せようと考えた。

 しかし、青砥停車は2つの意味で問題がある。1つはダイヤ設定、もう1つは所要時間増加だ。先にダイヤ設定の問題を説明する。

●20分サイクルという「縛り」

 青砥駅は京成本線と押上線が合流する。分岐点は青砥駅の隣の京成高砂駅だ。直通列車は成田スカイアクセス線、京成本線の両方で設定されているから、直通列車と京成線、北総鉄道の列車が青砥駅〜京成高砂駅で合流、分岐する。

 青砥駅〜京成高砂駅間は複々線化されているため交通量を維持できる。問題は京成高砂駅だ。立体交差と分岐器によって列車を振り分ける。そこに高砂検車区という電車の車庫の入出庫用線路が加わる。このやっかいな線路配置を、京成電鉄本線、都営浅草線直通、京急電鉄直通、北総鉄道の列車が共有する。だからダイヤ改正は4者の合意が必要だ。京成電鉄だけの都合でダイヤを変更できない。

 複雑な列車運行を整理するために、京成線、都営浅草線、京急線電鉄、北総線のダイヤは「20分サイクル」パターンとしている。接続点を20分サイクルで発着すれば、自社線内で多少の変更は可能だ。スカイライナーが20分おきに走る理由も20分サイクルだからである。いや、スカイライナーを20分おきに走らせるために20分サイクルになったかもしれない。いずれにせよ、スカイライナーは京成上野駅発00分、20分、40分になった。

 しかし、スカイライナーを青砥駅に停車した場合、停車時間が加わるから20分サイクルを維持できない。1分停車させるためには、到着時の減速、発車時の加速が必要で、つまり3分が必要だ。高砂駅を3分遅れで発車させると20分サイクルが崩れる。ではどうするか。その3分だけ、上野駅で早発することで解決した。これが17分発、37分発になった理由だ。

 高砂駅の臨時停車は京成電鉄単独で実施した。京成上野駅発車時刻で解決したから、都営地下鉄浅草線や京急線側のダイヤ改正は不要だ。しかし、11月26日のダイヤ改正は4者同時のダイヤ改正である。京成側がスカイライナーの運行間隔を工夫して、京成上野駅発00分、20分、40分に戻せるかもしれない。筆者の期待はそこにあったけれど、予想は外れた。4者が協定した20分サイクルは崩せなかったというわけだ。少しの変更が車両のやりくりや乗務員の手配に影響するから、東京都交通局や京急電鉄の準備が追いつかなかったかもしれない。あるいは京成側の譲歩である。

●青砥駅・新鎌ヶ谷駅停車でスカイライナーの空席を埋める

 スカイライナーを青砥駅に停める。もう1つの問題は所要時間の増加だ。特急列車の最大の魅力はスピードだ。所要時間を増やしたくない。なぜなら、乗客は「移動は無駄な時間」と思っているからだ。そこに至る考えは2年前にここで書いた。

「急行電車の混雑」「エスカレーター歩行」はなぜ生まれるか リニアの必要性と"移動"の意味(20年8月7日の本連載)

 スピードアップは良いことばかり。ライバルの列車より速いほうが乗客を獲得できる。速く目的地を折り返してくれば、必要な車両数も少なくて済む。

 乗客が求める特急の最大のサービスはスピード。次に乗り心地となるだろう。所要時間を短縮するためには、停車駅を減らしたい。理想としては始発駅で満席にしたい。もし空席があれば、その席は売り上げにならないからだ。列車の席は運行が終ったら売れない。空席は在庫にならずただ消えるだけ。丸損だ。

 そこで空席を埋めるためにどうするか。特急料金を下げて需要を喚起する方法もある。しかし、それでは全列車の収益が下がる。そこで「一部の列車の停車駅を増やし、利用者の乗車機会を増やす」という考えが生まれる。スカイライナーの場合は青砥駅停車が有効だった。当初は早朝夜間の臨時列車として始まったけれど、それが日中にも拡大された。

 実はこの時の青砥駅臨時停車では、京成上野発00分、20分、40分は維持されていた。早朝夜間は列車が少ないから20分サイクルに触れずに調整可能だったし、日中に拡大されたときもスカイライナーが減便されていたから、京成線内の列車時刻の変更で対応できた。ただし、11月26日のダイヤ改正はスカイライナーの全列車を復活させるから、厳密に20分サイクルを維持する必要がある。

 それならいっそ、すべてのスカイライナーを青砥駅に停めてしまえば20分サイクルを維持できる。直通先の影響も最小限で済む。しかし、スカイライナーのイメージダウンは必至だ。もう「都心から成田空港までノンストップ」とはいえないし、「日暮里〜空港第2ビル間36分」という宣伝もできない。日暮里〜空港第2ビル間は39分になるし、40分になるかもしれない。遅いというイメージがつくと、ライバルJRの成田エクスブレスに客を奪われかねない。だからスカイライナーの最速列車は維持したい。

 全列車の青砥駅停車はしない。その代わり、11月26日のダイヤ改正で青砥駅停車パターンのスカイライナーを新鎌ヶ谷駅にも停めた。新鎌ヶ谷駅当たりまで来ると20分サイクルダイヤでも余裕があるから停車駅増加は問題ない。

 新鎌ヶ谷駅は成田スカイアクセスのうち、北総鉄道線の区間だ。いままで北総鉄道線内の全駅を通過したスカイライナーが新鎌ヶ谷に停まれば、沿線の人々にとって成田空港に行きやすくなるし、日暮里・上野と新鎌ヶ谷間の着席指定列車として快適な利用を促せる。いままで平日早朝に1本だけあった印旛日本医大駅発、千葉ニュータウン停車の「臨時ライナー」と合わせて、北総線のサービス向上になる。

 これは北総線の値下げと合わせて、高運賃問題で高まっていた不満のガス抜きになるかもしれない。北総線高額運賃訴訟のきっかけは「スカイライナーが通過して線路使用料が入るのに、北総線の運賃が下がらない」だった。最も、現在の枠組みでは新鎌ヶ谷駅停車のスカイライナーの収入もすべて京成電鉄になるから、北総線運賃問題に関しては根本的な解決にはならない。

●スピードか乗車機会増加か、板挟みの特急列車

 所要時間短縮をとるか、停車駅を増やして旅客を獲得するか。スカイライナーに限らず有料特急列車にとって悩ましいところだ。小田急ロマンスカーも「新宿〜小田原間ノンストップ」の列車は少ない。国鉄時代の東海道新幹線「ひかり」も地域の要望のままに停車駅を増やし続けて「ひだま」と揶揄(やゆ)されていた。まるで「こだま」みたいな「ひかり」という意味だ。ひかりの停車駅が増えたため、速達欲求を満たす列車として「のぞみ」が生まれた。

 京急電鉄も特急停車駅が増えたため、新たな速達列車として「快速特急(現・快特)」を設定した。その後、日中の特急のほとんどを快特にしたけれど、11月26日ダイヤ改正で快特3本のうち1本が特急になった。これも停車駅増による集客を狙った施策だ。

 実は、スカイライナーも京成本線運行時代に同じ悩みを抱えた。1978年の運行開始時は「成田空港へノンストップ」とはいえ、終点の成田空港駅(現・東成田駅)はターミナルから離れておりバス連絡だった。そこで79年から京成成田駅に停車し、成田山参拝客を見込んだ。91年に成田空港ターミナルビルの地下駅に乗り入れたけれども、日中時間帯は空席が目立った。そこで06年から京成船橋駅も停車した。千葉県主要都市と成田空港を結ぶという集客はできたけれども、速達性は下がっていく。

 10年に北総鉄道から延長する形で「成田スカイアクセス線」が完成し、スカイライナーは現在のルートとなった。都心〜成田空港ノンストップ時代が再び始まった。京成本線時代の所要時間は51分、それが成田スカイアクセス線で36分に短縮された。

 そんなスカイライナーも、また「停車駅増で集客」に傾きつつある。青砥駅・新鎌ヶ谷駅の停車によって「速いスカイライナー」と「遅いスカイライナー」ができてしまった。いっそ南海電鉄の空港連絡特急「ラピートα」「ラピートβ」のように、速達タイプの「スカイライナーα」と停車タイプの「スカイライナーβ」と呼称を分けてもいいかもしれない。

 「スカイライナーβ」には千葉ニュータウン駅を追加してもいい。千葉ニュータウンを振興し、北総線沿線を盛り立てる手段として、スカイライナーの停車が貢献するだろう。もしかしたら、11月26日のダイヤ改正は、スカイライナー新時代の始まりといえそうだ。

(杉山淳一)