餃子をメインとする代表的な中華チェーンの「大阪王将」と「餃子の王将」で今後、調理の過程が大きく異なっていく可能性が高まっている。大阪王将では、人力に頼っていた調理を代行する、TechMagic(東京都江東区)が開発した調理ロボット「I-Robo」の導入が決まった。一方、餃子の王将では、あくまで人力による調理を追求。店員の調理スキルを磨くべく「王将調理道場」を開設している。機械化によってプロと遜色ない調理を目指す大阪王将に対して、餃子の王将は職人の養成に重きを置いている格好だ。

 人手不足に悩む飲食業界では、日本語がおぼつかず、業務遂行も未熟な外国人に店舗運営を任せざるを得ないケースも目立ってきている。限られた人員で、どうすれば安定した料理を提供し続けられるのか。各社で取り組みが始まっているのだ。

●調理から洗浄までを担うロボットを導入した大阪王将

 イートアンドホールディングス傘下の大阪王将(本部オフィス・東京都品川区)は、全国に大阪王将を347店(2023年5月末現在)展開している。6月2日には、調理ロボットの研究開発を行うTechMagicとの協業を発表した。23年夏から店舗にテスト導入する算段であったが、後ろ倒しになり、9月からスタートする予定となっている。

 大阪王将が導入するI-Roboは、調理するメニューに応じて、加熱温度・加熱時間・鍋の回転スピード・回転方向を柔軟かつ適切に変えて調理ができる優れものだ。調理作業にとどまらず、調味料の供給・攪拌(かくはん)・加熱・調理後のフライパンの洗浄といった一連の作業も自動で担う。

 TechMagicは18年2月に設立。食を取り巻く多くの企業が直面する人手不足を解消し、生産性を高めるために、ハードウェアとソフトウェアの技術を高度に融合した自動化に取り組んでいる。柱は2つ。1つは、厨房内で発生する一連の調理工程を省人化する調理ロボット事業。もう1つが、セントラルキッチンや食品工場で発生する洗浄後の食器仕分けや、食品の定量盛り付け・加工・運搬などの単純作業を自動化する業務ロボット事業だ。

 飲食業界では人手不足が大きな問題となっているが、特に料理人の確保と育成は喫緊の課題だ。大阪王将では「職人クオリティの料理を、調理ロボットで提供できないか」といった思いがあり、その実現を目指す。現実化すれば、非常に画期的なことだ。

 なお大阪王将では、各店ごとに独自メニューを開発して提供する試みを行っている。具体的には、地域に根付いた「町中華」とチェーン店のハイブリッドという、新たなビジネスモデルを打ち出している。従来より高度なことに取り組んでいる中で、人材の確保で苦戦して改革を後退させるわけにはいかない事情がある。

●売り上げ好調も、けん引役は食品事業

 イートアンドホールディングス全体の業績は、決算月の変更があったため単純に比較はできないものの、好調を示す。23年2月期の売上高は約330億円(前年同期比7.0%増)で過去最高。コロナ前の19年3月期は約291億円だった。23年2月期の営業利益約9億円(同9.7%増)も過去最高だ。

 しかし、その内訳を見ると外食事業がけん引しているわけではないようだ。冷凍餃子などの食品事業と外食事業の売り上げが、18年3月期にはともに140億円ほどで拮抗していたものの、直近ではパワーバランスに変化が見える。23年2月期では食品が約200億円に対して、外食が約129億円。食品の割合が高くなってきている。コロナ禍で巣ごもり消費が拡大したことで、冷凍食品が伸びた一方で外食が苦戦を強いられた結果と見える。しかし、冷凍食品事業はブランド力が強い外食チェーンがあってこそなので、外食の復興にも力を入れている。

 大阪王将では、工場で麺・餃子の皮と餡(あん)を製造しているが、野菜や肉を切る作業は店舗で行う。餃子も、別々に送られてきた皮と餡を店で包んでいる。現状の調理は職人の技術に依存する部分が多く、キャリアアップのために資格制度を導入しているが、どうしても料理にブレが生じていた。そうした課題解決に、調理ロボットを役立てる。

●テークアウト需要を追い風に成長する餃子の王将

 一方、王将フードサービス(京都市)が全国に732店(23年3月期末時点)を展開する餃子の王将は、餃子を中心にコロナ禍の間もテークアウト需要が多く、比較的好調に推移した。

 23年3月期の売上高は過去最高の約930億円(前年同期比9.7%増)となり、営業利益も過去最高の約79億円(同14.7%増)となった。今期(24年3月期)に入ってからも、8月までの直営店・既存店売上高が全ての月で前年同期を超えている。

 さて、同社が好調の要因の一つに挙げているのが「調理技術の向上」である。18年、京都市内の本社に「王将調理道場」を設置。店長を対象に、メニューの調理法をあらためて教育し、料理人としてのスキルアップを図っている。

 人間が料理する以上、同じ料理を作っても、どうしても味のブレが生じる。そこは許容して、ある一定の水準を設け、調理技術をブラッシュアップしていくことを主眼としている。店長の料理がしっかりすれば、スタッフにも教えられるという観点から、まずは道場で店長を鍛錬している。

 コロナ禍では、感染拡大防止のため本社に店長たちを集める形ではなく、オンラインで道場を開いた。このように、調理技術を磨き上げる仕組みができているのが、餃子の王将の特徴だ。

 向上した調理技術を生かして、プレミアムメニューの「極王シリーズ」(極王炒飯、極王天津飯、極王天津麺、極王焼きそばの4種)、通常メニューのハーフサイズで提供される「ジャストサイズ」などを開発。メニュー数を増やすことで、舌の肥えた人、少なめの量を希望する人など既存以外の客層を開拓して、顧客層の拡大に寄与している。

 餃子の王将では、全国に4カ所ある工場で、餃子や麺を製造して、各店舗に配送している。それ以外は全て店内調理でまかない、肉や野菜のカットも現場で行っている。餃子も、以前は工場で製造した皮と餡を各店に配送して、店内で成型していた。しかし、あまりにも時間がかかり、店員が疲弊するため、工場で成型してチルド配送する体制に改めた。

 このような業務改革によって店員が調理や接客に集中できるようになったのも、業績の向上に一役買っている。

●「標準化」の一歩先が課題か

 さて、他の中華チェーンに目を移してみると、東京都を中心に神奈川県・埼玉県・長野県に20店ほどを展開しているKVC一番館(東京都中野区)の「中華食堂一番館」は、炒飯調理機「ロボシェフKVC460」を活用している。

 ロボシェフKVC460は、業務用機器メーカーのエム・アイ・ケー(さいたま市)と共同開発。調理スタッフが鍋を振らなくても、材料を手順通りに投入するだけで本格的な炒飯が完成するのがメリットだ。炒飯だけでなく、中華料理に欠かせない炒めものにも対応している。調理能力が乏しいアルバイトでも、肉や野菜などの炒めを安定的に仕上げることができる。どんな料理でも、3分以内に顧客へ提供することを目指して06年から導入。今では全店舗で活用している。

 中華食堂一番館が、ロボットの導入によって料理を標準化できたことを参考にすると、大阪王将の将来像をある程度予見できる。大阪王将も、料理の出来栄えを標準化するのは間違いなくできる。店による味のバラつきは今後、解消されていくだろう。一方で、調理技術を磨く機会がなくなるデメリットもある。店員のモチベーションをどのように保つかという、新たな課題が生じてくる。合理的な調理システムを手にした中華食堂一番館は成長の頭打ちを迎えており、この伸び悩んでいる理由を大阪王将は突き詰めてほしいものだ。

 人間が料理しないことで「料理に面白みが欠けるのではないか」という懸念もある。しかし、機械で大量に作った冷凍食品の炒飯がこれだけ市民権を得ているのだから、やり方次第で解決できると筆者は考える。

●ロボット未導入の日高屋

 首都圏に440店(23年2月期末時点)を展開する、ハイデイ日高(さいたま市)の「日高屋」では、今のところ、調理ロボットを導入する予定はない一方、将来的なことはあくまで“白紙”のようだ。日高屋の店舗では外国人のアルバイトが目立つ。人手不足を解消するため、将来は導入する可能性も十分あると、筆者は見る。

 日高屋はセントラルキッチンで麺・餃子・スープの製造や野菜・肉のカットを行い、店舗へ配送している。店舗では、届いた食材をマニュアルに沿って調理・提供する。餃子の王将や大阪王将のような店舗限定の料理がほとんどなく、どの店でもメニューがほぼ一律な点も特徴だ。その意味で、両王将と比べてもチェーン店らしい特色を持っている。

●リンガーハットのIH調理機

 中華とは異なるが、隣接分野である「ちゃんぽん」のチェーンとして、577店(23年2月期末時点)を展開する「リンガーハット」では「自動鍋送り機」を導入。下調理したちゃんぽんを鍋に入れてスイッチを入れると、自動的に3台連結したIH調理機を順番に鍋が送られていく。店員は最後のIH調理機へと鍋が送られた後、盛り付けを行う。

 各IH調理器ごとに攪拌・投入・加熱の工程を割り振り、同じ火加減で調理が行える点がメリットだ。加熱のムラがなくなり、個人のコツに頼ってきた調理の技術を数値化でき、誰が厨房に立とうが均一な品質で、顧客に提供できるようになる。

 同じく導入している「IH自動野菜炒め機」では、具材を入れてボタンを押すだけで、釜部が自動で回転してまんべんなく食材を炒められる。このようにリンガーハットでは、厨房の自動化が進み、個々の店舗が小さな工場のようである。日本語もおぼつかないような外国人を雇用し、かつ省人化しつつ、品質を保った料理を安定的に提供するには、リンガーハットくらい思い切った取り組みをしないといけないのかもしれない。

 ロボット調理へ本格的に取り組む大阪王将に対して、あくまで人力による調理技術の研鑽(けんさん)で味の向上を目指す餃子の王将。どちらが正解なのかは正直、分からない。例えば、都市部から離れると、顧客のコスト意識が強まり「安さが正義」派が増える傾向にある。都市部では多少価格が高くてもこだわりが評価されるが、地方ではそうなりにくい。店舗立地によっても戦略の成否は左右されるのだ。

 両チェーンは立地も顧客層もこれまで似ていたが、どの顧客層をメインのターゲットに選ぶかで、店舗の在り方が大きく分かれていく可能性が高い。大阪王将では町中華を意識して、あえて他チェーンが狙わない空白地帯にリロケーションしているように見える。それがロボット調理とどのような相乗効果をもたらすか。興味深い展開になってきた。

(長浜惇之介)