山崎製パンが8月1日に発売した「薄皮ハンバーグ&ケチャップパン」がSNSを中心に話題となり、人気を集めています。同社の「薄皮シリーズ」といえば「薄皮つぶあんぱん」「薄皮クリームパン」「薄皮チョコパン」「薄皮ピーナッツパン」「薄皮白あんぱん」の5つが定番商品で、いずれも甘い系です。なぜ、新商品として総菜系のパンを開発したのでしょうか? 同社マーケティング部の中山雄介さんに聞きました。

 今回の開発にあたって重要だったのが「夏」という季節です。「パン業界において夏場は、総菜系の需要が伸長する季節です。そこで、弊社の菓子パンの主力商品である薄皮シリーズでも総菜系を発売できないかと企画しました」(中山さん)。メインターゲットには、薄皮シリーズは甘い系が多いという理由でこれまで手に取ったことがない消費者や、総菜系を好む若年層を設定しました。

 同社は以前も薄皮シリーズから総菜系の商品である「たまご」「ツナ」を販売しています(いずれも2013年発売)。総菜系の代表格である「たまご」「ツナ」のように、パンと相性が良い中身は何か。開発を進める中で、実際にいくつかのフィリング(具材)を試してみたところ、薄皮シリーズの特徴であるしっとりとしたパン生地との相性が最も良かったのがハンバーグでした。

 開発過程ではハンバーグの味付けに苦労したとか。「ハンバーグだけで食べる場合と異なり、パン生地と合わせるとどうしてもハンバーグの味が弱まってしまうのです」(中山さん)。何度も味付けの試作を繰り返し、ほぐしたハンバーグにケチャップとコショウ入りの照り焼きソースを加えることで、それぞれが引き立つがっつりとした食べ応えを実現しました。

 薄皮ハンバーグ&ケチャップパンの人気ぶりに、中山さんは「想定を上回る売り上げで、その反響に驚いています」と話します。一躍人気商品となりましたが通年販売の予定はなく、9月末で販売終了となるそうです。

●「薄皮」というネーミングの由来

 薄皮シリーズは「普通のあんぱんより食べやすいサイズで、中身がずっしり入ったあんぱんを食べたい」という声から誕生しました。商品名の「薄皮」は、和菓子の薄皮まんじゅうのように、生地に対して中身がいっぱい入っていることから来ています。

 01年発売の「薄皮つぶあんぱん」を皮切りに、手軽に食べきれるサイズ感と5個入りでシェアしやすいスタイルが人気を博しました。長年支持されてきた薄皮シリーズですが、22年12月に大きな転換点を迎えます。原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇を「企業努力による吸収の範囲を超えた大変厳しいもの」だとして、内容量をこれまでの5個から4個入りに変更したのです。

 しかし、内容量を4個に変更するにあたって、パン1個当たりの満足感やおいしさアップを図るため、生地の工夫や中のあんのボリュームアップを実施。パン1個当たりの重さは、従来の5個入りに比べ約1割増えたそう。個数は減ったものの、薄皮シリーズの醍醐味であるたっぷり詰まった中身は健在のようです。

 同社は定番商品の他、薄皮ハンバーグ&ケチャップパンのような期間限定の商品を毎月発売しています。「今後もお客さまの新しいニーズに応えていくため、新製品開発については、総菜系に限らず、さまざまなチャレンジをしていきたいと思います」(中山さん)