日本のアウトドアブームは最近、落ち着いてきたようだ。

 アウトドア用品メーカーとしてトップブランドといえるスノーピークの純利益はわずか100万円と、赤字には転落しなかったものの見るも無残な状態に陥っている。それは、競合の多さによる収益の低下もあるが、ブームが落ち着きつつあることも示している。

 ソロキャンパーの減少が、全体としてのブームの衰退に影響を与えているのも間違いない。ソロキャン女子の漫画やインフルエンサーの影響によって、急速に増えたソロキャンパーだが、急速に増えたということは数回の経験で満足したり、自分には合っていないと気付いたりして、他の趣味へと移行する人々もいるのだ。

 いくらアウトドア好きでも、一人でテント設営や料理をしてのんびり過ごすだけでは、リラックスできたとしても飽きが来る人もいるだろう。自宅とは異なる非日常を味わったとしても、それを習慣化してしまうと非日常感は希薄になるからだ。

 さらにファミリー層においても、キャンプを楽しむのは子どもが小さいころが大半で、その後は習い事や受験などでアウトドアを楽しむ余裕がなくなってくる。子育てが一段落して夫婦だけでまたキャンプを楽しむケースも増えているようだが、それはキャンプブームを再燃させるほどの勢いにはならない。

 その結果、アウトドア用品の販売は低下し、リサイクルショップにアウトドア用品があふれんばかりに並べられるという事態になっているらしい。

 その一方で、キャンピングカーの人気はまだまだ衰えを見せていない。クルマの保有台数が頭打ちになっている現在でも、キャンピングカーの保有台数は伸び続けている。

●キャンピングカー人気は衰えていない

 2月上旬に開催された「ジャパンキャンピングカーショー2024」を取材したが、初日は金曜日にもかかわらず一般の来場者もかなり多く、熱心なファンが展示車をつぶさに観察していた。

 前回あたりから会場の雰囲気で感じることは、日本ならではの軽トラックや軽バンをベースとした軽キャンピングカーの展示が減り、ハイエースよりも大きなベース車両が増えていることだ。

 これは従来、欧州で製作されてから輸入されているキャンピングカーのベースである「フィアット・デュカト」がベース車両の状態で正規輸入されることになり、国内ビルダーがデュカトベースの大きなキャンピングカーの製作を本格化しているからだ。

 さらに国内ビルダー大手のトイファクトリーがドイツのハイマーグループの代理店となり、今回のキャンピングカーショーでもデュカトベースのキャンピングカーをさまざまなブランドごとに展開していた。

 欧米では歴史と市場が桁違いであるため、テーマごとに異なるブランドが立ち上げられ、それぞれに仕様のグレードがあり、豊富なラインアップを誇るのだ。

 国内の巨大な工場でキャンピングカーを続々と製作する大手ビルダーでも、ハイエースより大きなボディをベースとしたキャンピングカーを製作するのは投資もリスクも大き過ぎる。まずは輸入販売という手段を選んだのも理解できる。

 それにしても熟年オートキャンパーの熱心ぶりには少々驚かされた。家は3軒建ててようやく理想にたどり着く、と言われているが、キャンピングカーも手に入れて乗り回しているうちに、不満な部分が気になり新しいキャンピングカーに買い替えたくなるものなのか。

 現在のキャンピングカー人気は、2台目、3台目へと買い替えて、より大きくリッチなキャンピングカーを求める層が増えていることを意味しているのだ。

●マナー低下で厳しくなっていく規制

 時間とお金に余裕がある熟年夫婦層をターゲットにするのはいいが、オートキャンプを取り巻く環境はそうしたムーブメントを応援したり、支持したりする傾向を見せているところは少ない印象だ。つまり、このままではオートキャンプも一過性のブームとしてしぼんでしまう可能性もある。

 これはオートキャンプや車中泊のマナー低下もあるが、高速道路料金制度の見直しなどで割引の適用が減っていくことも影響していきそうだ。キャンピングカーによる長距離旅行を歓迎している自治体の観光協会もあるが、規制が厳しくなっているところもある。

 マナーの悪いキャンパーにより、道の駅では車中泊禁止になるところも出てくるなど、規制を強化する動きが見られるのだ。キャンプ場でも火災の危険や土中の生物保護のために直火によるたき火は禁止されているところが多いが、それを守らない利用者の続出で利用に制限が加えられてしまったケースもある。

 罰則の強化や防犯カメラの設置を望む利用者などいないはずだ。そもそも自然の中で開放的な気分を味わうためのアウトドアが、がんじがらめの規制によって窮屈な思いをするようになってしまったら本末転倒だろう。

 規制や人目などを気にせずにリラックスしたいからキャンプ場を利用するのであり、快適にキャンプ場を利用し続けようとするのであれば、やはり定められたルールは最低限守るものと認識したい。みんながそれさえ守っていれば、その場所は継続的に快適なまま利用できるのだから。

●キャンピングカー業界が果たす役割

 自然豊かなキャンプ場に巨大な看板で禁止事項がデカデカと書かれていたら、それだけで興ざめしてしまう人は少なくないはずだ。そういったしがらみから開放されて、のんびりと過ごしたいからこそ、アウトドアへと向かうのだろう。

 しかし開放的な気分に浸るあまり、守るべきルールを忘れて暴走してしまう層も一定数存在しているようだ。

 自治体が地元の行楽客のために管理しているキャンプ場なら閉鎖するだけで済むが、民営のキャンプ場では死活問題にも発展しかねない。さらにそれはジワジワとアウトドアブームを下火へと追いやることになりかねないのだ。

 キャンピングカービルダーなどキャンピングカー関連企業が加盟する、オートキャンプを推進する団体は、これまでもオートキャンパーのマナー向上につながるよう、さまざまなイベントやインターネットによる情報発信、広告などを通じて啓蒙活動を行っている。

 グランピングはともかく、オートキャンプに関しては日本のマナーやモラルを知らない外国人観光客はほとんどいないだろうから、日本人に対してルール厳守を徹底させるのはそれほど難しいことではないのではないか。

●震災によって存在意義が高まった面も

 今年の元日に発生した能登半島地震によって、多くの被災者が自宅や家族を失い、避難所での生活を余儀なくされている。そういったところにキャンピングカーを派遣する動きもあった。これにより、非常時のキャンピングカーの有益性を伝えられたのは、今後のキャンピングカー業界にはプラスに働きそうだ。

 今後自治体は、公営のキャンプ場にバンガローだけでなく、キャンピングトレーラーやキャンピングカーを設置して、万が一の災害に備えることも増えるのではないだろうか。それができれば、断水した後に2週間も風呂に入れないという事態は避けられるはずだ。

 またキャンピングカーオーナーは一般の乗用車よりも高齢化が顕著であるから、今後ペダルの踏み間違いや、運転中の体調急変による交通事故なども増えていく可能性もある。したがって、キャンピングカービルダーは自動車メーカーと協力して、安全運転支援システム(レーンキープアシスト、衝突被害軽減ブレーキなど)やドライバー異常時対応システム(体調急変時の自動停車および救援要請)の導入を積極的に進めるべきだろう。

 ドアtoドアで観光地を巡ることができるという点では、キャンピングカーは高齢者にとって便利なモビリティと言うこともできる。しかし移動が楽だから体力が衰えても旅行できる、という考えは危険だ。

 クルマの運転には一定以上の運動機能や認知能力が必要なことは言うまでもない。それなのに、運転免許を取得しているだけで運転する権利があると思い込み、運転能力が低下しているにもかかわらず免許返納を拒否したり、運転能力を維持するための努力を怠ったりする高齢者があまりにも多い。

 こうしたキャンピングカーオーナーの運転能力維持に対する意識も変えていく必要がある。キャンピングカー業界は、売るだけでなく、ユーザーの高齢化に伴う配慮や意識改革を働きかけていけば、長く健康的に車中泊による旅を楽しむドライバーを確保することになるはずだ。

(高根英幸)