Xperia初の5Gモデル「Xperia 1 II(エクスペリア ワン マークツー)」がドコモ、auから販売された。最新スマホを求める人にとって、5G対応かつソニー製のXperiaは待ちに待ったモデルだろう。

 新しいXperiaの象徴ともいえる21:9の4K動画にも対応した縦長ディスプレイに加えて、カメラや処理性能を強化。イヤフォンジャックやワイヤレス充電など、前モデルのXperia 1では非搭載だった実用機能も追加された。

 5G対応や性能だけでなく、実用性も大幅に向上した最新モデルXperia 1 IIの実際の使い勝手について詳しく見ていこう。

●Xperia 1 IIの特徴をおさらい

 最大の特徴は、縦長21:9の6.5型有機ELディスプレイ(1644×3840ピクセル)と、フロントステレオスピーカーだ。動画配信サイトでも増えてきた映画などのシネマスコープ4K HDRの映像をほぼ全画面で快適に楽しめる他、2つのアプリを同時に表示できるマルチウィンドウも使いやすい。

 背面には超広角16mm、望遠70mm、標準(広角)24mmの1220万画素トリプルレンズカメラと、3D iToFセンサーを搭載。ツァイスレンズを含め、ソニーの一眼デジタルカメラαシリーズを意識した仕様だ。

 撮影アプリも標準のカメラアプリとは別に、ソニー製デジカメ風の撮影アプリ「Photography Pro」(購入後のアップデートで追加)と、業務用ビデオカメラVENICE風の映像撮影アプリ「Cinematography Pro」を搭載する。製品名の「Xperia 1 II」も、ソニーのデジタルカメラ「RX100VII」や「α7 III」などの命名方法と共通した部分がある。

 サイズは約72(幅)×約166(高さ)×約7.9(奥行き)mm、重量約181gと、前モデルのXperia 1と比べて、多機能化しつつも、ほぼ同じサイズと重量を維持した。大画面なので縦方向にやや長いが、スマホを使いこなしている人にとっては、縦長画面の便利とのバランスを考えると納得できるサイズ感だろう。大きめの手ならギリギリ片手親指操作もできる。側面は角を丸めた平面になっており、薄い金属の延べ棒を持っているような感覚だ。

 カラーはドコモとauともに、背面ガラスパネルの光沢が美しい、ブラックとホワイトを用意。ドコモのみ用意されるパープルは、角度によって異なる色合いが上品だ。

 Xperiaファンにとって特にうれしい機能が、電源と指紋認証センサーを一体化したボタンの復活だろう。フラグシップモデルとしては2017年発売のXperia XZ1以来の復活となる。現状、スリープ解除の操作と同時に指紋でロック解除できる仕組みは使いやすい。

 ただ、今どきのAndroidスマホとしては珍しく、顔認証には対応していない。自宅などマスクを装着していない状況では顔認証が楽なので、他社製品と比べると不便に感じる。ディスプレイ内蔵の指紋センサーも考えられなかったのか? という疑問も残る。

 イヤフォンジャックも復活した。詳しくは後述するが、ゲームプレイやビデオ会議で便利な機能だ。充電はワイヤレス充電に改めて対応。USB Power Deliveryによる、最短30分で約50%の急速充電にも対応している。

 この他、防水(IPX5/IPX8)、防塵(じん)(IP6X)や、おサイフケータイ、NFC、microSDスロットに対応。付属のアンテナを装着すればフルセグとワンセグも視聴できる。Wi-FiはWi-Fi 6(IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax)に対応した。

●大画面で楽しめる映像・オーディオ再生

 Xperia 1 IIは、2019年に大幅なモデルチェンジを果たしたXperia 1の21:9縦長の有機ELディスプレイをそのまま引き継いでいる。

 特に便利なのは、Android標準の2つのアプリの同時表示「マルチウィンドウ」だ。縦長画面なので、2つアプリを表示しても、それぞれを使いやすい画面サイズで見やすく操作しやすい。自宅でのスマホ利用が増えている現状、ネット動画を楽しみながらLINEやSNSを操作、ビジネスアプリを使いながらビデオ会議といった使い方が楽なのはうれしい。

 操作方法だが、ホーム画面に「21:9マルチウィンドウ」アイコンを用意。ここから、好みの2つのアプリを選べ、事前に設定した2つのアプリの同時起動もできる。また、2画面操作中に境界線をタップすると「マルチウィンドウスイッチ」が表示され、それぞれの画面を横にスワイプするだけでアプリを切り替えられるのも便利だ。

 動画再生は前述の通り、21:9のディスプレイにより4K HDRのシネスコサイズの映画などを全画面で楽しめる他、ソニーの映像補正の利用や、近年の4K HDR制作などの映画ならBT.2020の色域の映像を忠実に再現するクリエイターモードで快適に視聴できる。

 ステレオスピーカーはXperia 1と違い、左右ともフロント配置となった。これにより、映画やゲームをより迫力ある音で楽しめる。音量や音質もスマホの小さい本体サイズとしてはかなり良好。自室のデスク周りで音楽配信サービスをBGMとしてかけっぱなしにするといった用途にも耐えられるレベルだ。

 先述の通り、イヤフォンジャックがハイエンド機としてはXperia XZ1以来2年ぶりに復活した。最近のハイエンドスマホでは削られがちな機能だが、アクションや音楽リズムゲームの音を遅延なしに楽しみたい場合や、手持ちの高音質な有線イヤフォン、通話対応の有線ヘッドセットを使いたい場合、スピーカーにつなげたい時に便利だ。

 音質はかなりクリアで、高音や低音を強調するといったクセがなく非常に聴きやすい。スマホのイヤフォンジャックとしてはアンプ出力にも余裕がある方で、ハイレゾ楽曲も適度な音量で聴ける。専用プレーヤーのアンプには及ばないとしても、スマホ内蔵のイヤフォンジャックとしては良心的な設計といえる。

 なお、以前のXperiaやウォークマン向けに販売されていた有線のノイズキャンセリング対応イヤフォンの、ノイズキャンセリングやバイノーラル録音といった機能は利用できないので注意しよう。

 この他、従来の圧縮音源の音質をハイレゾ相当に高める「DSEE Ultimate」も搭載している。Bluetooth向けのハイレゾ総統のコーデックについては、aptX HD、aptX Adaptive、LDACを利用可能だ。

●ゲームのヘビーユーザーにうれしい機能を追加

 アプリや操作性だが、大きな変更点として日本語入力の「POBox Plus」がGoogleの「Gboard」に、写真管理の「アルバム」も「Google フォト」を利用する形になった。

 写真管理については、機能面でもバックアップの面でもフォトが便利なのは確か。だが、文字入力についてはGboardも多機能とはいえ、POBox Plusの予測変換や設定の分かりやすさが失われるのは残念なところだ。2001年のau C406S以来長らくソニー系列の携帯電話、スマホで使われてきたPOBox系列の予測入力が途絶えるのも名残惜しさがある。

 一方で、ゲーミング機能「Game enhancer」についてはこだわりが見られる。Xperia 1以降、ようやくゲーミング機能が充実してきたが、ゲーム以外の操作による誤操作を防ぐ「コンペティションセット」や、タッチエリアの一部無効化、スクリーンショットの連写や、動画録画の実況向けボイスチェンジャー機能など、攻めた機能を数多く搭載している。

 中でもコアゲーマーにとってうれしいのは「HSパワーコントロール」だ。これは、高負荷なゲームアプリを動作中に、充電器から供給される電力をXperia 1 IIのCPUやGPUなど、システムの動作だけに利用するモードだ。バッテリーをあえて充電しないことで、バッテリーに負荷を与えず発熱を防げる。

 この機能が特に便利なのは、バトルロイヤル系のゲームだろう。1プレイが長いだけに、発熱を抑えられるのはうれしい。Xperia 1 IIの大画面もあいまって快適にプレイできる。MMORPGも同様だ。また、音楽リズムゲームの高画質PVを流しっぱなしにする動画プレーヤーを、あえてゲームアプリとして登録し、連続動画再生するといった用途も考えられる。

 処理性能だが、プロセッサにQualcommの「Snapdragon 865」を搭載、メインメモリは8GBだ。Xperia 1など前世代のSnapdragon 855搭載モデルと比べて、1.3〜1.4倍程度性能が向上しており、処理性能不足を感じることはない。

 ストレージ容量は128GBでmicroSDスロットも搭載。容量面で不便を感じることはないだろう。バッテリー容量は4000mAhで、12時間ほど持ち歩いてヘビーに利用したが、バッテリー残量は40%ほど残った。スタミナは良好な部類といえる。

●5Gの利用機会は少ないが、通信量無制限のプランが魅力

 2020年の春夏モデルは5G対応が最大の特徴とされるが、現時点で各社とも5Gのエリアは非常に狭い。利用する無線周波数帯の高さや他の無線システムとの共用問題もあってか、現時点では多くが点でのエリア展開となっている。今は「5G=通信量が無制限のプランを契約するためのパスポート」と考えた方がいいだろう。

 ちなみに、今回au版のXperia 1 IIを試用しており、auがエリアマップに載せている5G対応の渋谷の神南エリアと横浜の関内エリアで接続を試したが、実際には5Gに接続できなかった。一瞬だけ画面のアンテナ、ピクト表記が5Gに切り替わることもあったが、通信を開始すると4Gに戻ってしまう。結局5Gで安定して通信できたのは、渋谷モディ内のau SHIBUYA MODIにある、auの5Gデモブース周辺のみだった。

 これには幾つか理由がある。まず、auのXperia 1 IIが5Gで対応する周波数バンドは、Sub6(3.7GHz帯)のn77とn78だ。いわゆるミリ波(28GHz帯)のn275には対応していない。このため、ミリ波しか対応していない5G基地局では5Gによる通信を利用できない。

 さらに、auのXperia 1 IIは、Sub6(3.7GHz帯)のn77とn78のうち、n77は将来のソフトウェアアップデートによる対応となっている。つまり、現在auのXperia 1 IIで利用できるのは5Gエリアのうち、n78に対応した基地局のみとみられる。

 エリアマップには5G対応のスポットが描かれているが、どの周波数帯・バンドの5Gを利用できるかは記載されていないので、実際にXperia 1 IIで5Gに接続できるかの参考にならない。これは、ドコモの場合も同様で、5G対応エリアだがSub6非対応なのでXperia 1 IIで5Gを体験できない場合はある。Xperia 1 IIを購入して5Gを体験するには、エリアマップだけでなくそのエリアが対応している周波数の情報収集は必須となる。

●デジカメとしては悪くないが大幅な補正には非対応

 カメラ構成は先述の通り、超広角16mm、望遠70mm、標準(広角)24mmともにツァイスレンズを採用した1220万画素トリプルレンズカメラと、3D iToFセンサーを搭載する。なかでも、標準(広角)24mmカメラは1/1.7型大判センサーやデュアルフォトダイオードによる高速なAFを搭載。夜景も明るく撮影できる。また、本体側面のシャッターキーも引き続き搭載する。

 望遠はXperia 1の52mmから70mmになり、より遠くの被写体を引き寄せて撮りやすくなった。52mmはカメラ好きにとっての標準画角なのでなくなるのは微妙だが、その代わりに物理的に近づきにくい遠くの被写体を撮りやすくなった。

 今回、借用機はPhotography Proを試せないモデルだったのと、カメラは別記事で詳しく紹介しているので、ここでは基本機能と絵作りなどの注意点を記載しておく。

 カメラの撮影傾向だが、Xperia 1 IIは実際の撮影シーンを極端には補正せず撮影する、デジタルカメラ専用機に近い絵作りのモデルだ。シーン認識や瞳認識、ドキュメント認識や、夜景撮影時に自動でかかるロングシャッターなどの機能もあるが、現実の光景をやや鮮やかに見せる程度の補正にとどまる。露出補正は基本に忠実で、ホワイトバランスの精度も高い。

 だが、最近の人気ハイエンドスマホのカメラのように、HDRやAI、機械学習などを利用して、明暗差の激しいシーンや逆光、曇りで映えないシーンなどを、現実の風景とは懸け離れるが、人にとっては明るく鮮やかで理想的な“映える”写真へと大幅には補正してくれない。

 分かりやすい例として、理想的な光線下の写真と、明暗差の激しいシーンを撮ってみた。理想的な光線下だと、全体的に明るく適度に鮮やか。理想的な発色にはなっており、青空などが不自然に強調されすぎることもない。

 下の写真はやや日が落ち、光の反射や影で変に明暗差がついているシーンだ。これはこれで、肉眼の印象とそこまで変わらず撮影できている(ややアンダー気味)。だが、最近のHDRやAI、機械学習を活用したハイエンドや人気のスマホだと、青空はより明るくスッキリとした青になり、地上の被写体もやや明るくなり、左下の木々や影はやや明るく持ち上げられ、ある程度見栄えのする写真へ補正される。だが、Xperia 1 IIはそこまで器用な補正はしてくれない。

 もし、近年の他社ハイエンドスマホから乗り換えた場合、明暗差の激しいむちゃなシーンにカメラを向けても、ある程度まとまった絵作りの写真を撮れないことに驚くかもしれない。思った通りの写真を撮りたいなら、メインの被写体をタップして露出調整を積極的に使っていきたい。

 逆に、ベストな光線環境のシーンや狙ったシーンなら、Xperia 1 IIは下手な補正があまりかからず、しっとりとした写真を撮れることが多い。昔ながらのカメラ好きの方が理解しやすいカメラといえる。

 そしてPhotography Proだが、こちらはソニーのデジタルカメラαシリーズに寄せた思想の、ある程度マニュアル操作で撮るカメラアプリとなっている。カメラ好きには便利だが、初心者がシャッターを押すと理想的な絵作りの写真を撮れる、補正ありきのカメラアプリではない。こういった本格的な写真撮影アプリを搭載するのなら、標準のカメラはもう少し一般受けする絵作りに振ってもいいのではいいのではと感じた。

 逆に、写真の「Photography Pro」も映像の「Cinematography Pro」も、せっかく上位・業務製品のエッセンスに触れられるのが目的の撮影アプリなら、絞り(アイリス)や可変NDフィルター(減光量を変更できるフィルター)へ仮想的にでも対応するなど、ちゃんとした撮影体験ができる、使える機能にしてほしいところだ。

 また、αユーザーにアピールするなら、遠隔操作アプリ「Imaging Edge Mobile」の操作性の改善が先だろう。Xperiaでα風に撮影できても、本物のαの遠隔撮影ではタッチAFができない、絞りやシャッター速度を思った値に変更しづらいUI(ユーザーインタフェース)では興ざめだ。ソニーとしての連携をアピールするなら、Appleのように、買ってうれしくなるような機器間の連携にも力を入れてほしい。

●「SNSで映える写真」にも振ってほしい

 今回のXperia 1 IIは、スマホの操作に慣れた人ほど使いやすい理想的なモデルだ。高画質な映画やゲームを余計なノイズなく楽しめる平面ディスプレイに、縦長で2画面アプリ操作が楽で、高品質なステレオスピーカーやイヤフォンジャック、充実したゲーム機能など、スマホのヘビーユーザーにとってうれしい機能が詰め込まれている。ヘビーユーザーにとっての実用性では、今回の5G搭載モデルでもトップクラスと言っていいだろう。

 それだけに、カメラ周りの絵作りや細かいUIが、今どきではないのが気になる。特に日本のスマートフォン市場のXperiaは、老若男女問わず名前を知っている日本メーカーだから買うという場合も多いだけに、もう少しだけ今の流行である「SNSで共有しやすい・映える画像や動画を作る機械」という方向に振ってもいいのではないだろうか。今回、Photography Proの追加により、写真と動画撮影の本格撮影アプリがそろったので、ちょうどいい機会ともいえる。

 筆者としては、XperiaでαやVENICEを追いかけるよりも、VLOGCAMやRX0 IIの機能を持たせて、アクションカムや遠隔操作できるカメラとして使える方がうれしいのだが。