Googleは、8月20日に「Pixel 4」シリーズの廉価版にあたる「Pixel 4a」を発売する。販売開始に先立ち、8月14日からは予約を受け付ける。Google自身が運営するオンライン販売サイトのGoogle Storeで購入できる他、キャリアでは、ソフトバンクが取り扱いを表明済みだ。

 ストレージの容量やカラーにバリエーションはなく、128GB、Just Blackの一択になる。Google Storeでの価格は、税込みで4万2900円。Pixel 4シリーズの中で最も安いPixel 4の64GB版と比べても、半額以下の価格設定になっている。発売に先立ち、短い期間ながらPixel 4aの実機を試用できた。ここでは、そのレビューをお届けしたい。

●ハイエンドモデルと戦えるカメラ性能、ただし超広角撮影には非対応

 Pixelシリーズは、Google自身が手掛けるスマートフォン。ハードウェアとソフトウェア、AIを組み合わせて、最先端の体験を提供するのが同社の狙いだ。その廉価版にあたるのが、型番の最後に「a」のつく端末。2019年に投入した「Pixel 3a」がPixelとして初のミドルレンジモデルで、Pixelのエッセンスを、より多くのユーザーに体験してもらうことに主眼が置かれている。Pixel 4aでも、そのコンセプトは踏襲されている。

 ハードウェアとソフトウェア、AIを組み合わせた成果が最も分かりやすいのは、やはりカメラだ。Googleのアプローチは、スマートフォンを手掛けるその他のメーカーとは大きく異なり、どちらかといえば、ハードウェア以上にソフトウェアやAIに重きが置かれている。ミドルレンジモデルでもデュアルカメラは当たり前、中にはトリプルカメラの端末もある中、Pixel 4aは潔く、カメラは1つのみ。超広角カメラも望遠カメラも搭載されていない。

 それでも、メインカメラの性能はPixel 4とそん色ないという。ハードウェアはもちろん、AIを使った各種処理もほぼそのまま継承されている。Pixel 4で定評のあった「デュアル露出補正」や「夜景モード」「超解像ズーム」「ポートレートモード」は、Pixel 4aでもしっかり利用できる。実際、それぞれのシチュエーションで写真を撮ってみたが、確かにPixel 4との大きな違いは感じられなかった。

 夜景モードは、ネオンが輝く街を明るく撮れるだけでなく、ほとんど光のない真っ暗な部屋でも被写体をしっかり捉える。超解像ズームはPixel 4より最大倍率が低く、7倍までとなっているが、確かに撮った写真を後からトリミングするより精細だ。拡大すると、どうしても粗さは目立つものの、等倍で見る分には十分なクオリティーといえる。ポートレートモードも、ボケがやや不自然な印象はあるものの、前景の人物と背景がしっかり分離されている。

 ハードウェア中心のアプローチでは、暗所に強くするために、サイズの大きなセンサーを搭載する。ズームも、ペリスコープ型のレンズを載せたり、高画素のセンサーから一部を切り出したりする方式が一般的だ。ポートレートモードも、深度測定用のセンサーを使うことが多い。一方で、こうした手法は、端末の厚さや重さ、コストとトレードオフになる。コンパクトで廉価なPixel 4aで夜景モードや超解像ズームが実現できたのは、GoogleがソフトウェアやAIを重視していたからこそだ。

 価格の高いフラグシップモデルでは、最新のデバイスを惜しみなく採用でき、相対的に見ればソフトウェアやAIの比重が小さくなる。その意味では、廉価版のPixel 4aの方が、Googleの強みを発揮しやすい。その意味では、Pixel 4以上にPixel 4aは“Google的な端末”だ。少なくとも、カメラの画質に関しては、ミドルレンジの中で頭ひとつ抜けた存在になっていると評価できる。

●パフォーマンスも高いが、ハイエンドモデルには一歩及ばない

 とはいえ、ミドルレンジモデルのため、フラグシップモデルのPixel 4と全く同じ性能というわけにはいかない。違いが出るのは、画質ではなく処理速度だ。Pixelのカメラは、撮影後に機械学習による処理をかけ、バックグラウンドで写真を生成する。撮影直後に写真を開くと、ボンヤリとした処理前の画像が、徐々に精細になっていく様子を確認できる。専用の画像処理エンジンである「Pixel Neural Core」を搭載したPixel 4と比べると、この処理にやや時間がかかる印象を受ける。

 もちろん、こうした処理はバックグラウンドで行われるため、何枚か写真を撮ってから見返す分にはいいが、仕上がりをチェックしてから再撮するかどうかを決めるときには、写真の完成を待たなければならない。写真の撮り方によっては、この点が気になる場合もありそうだ。

 ただし、Pixel 4aの処理能力は決して低いわけではない。AIで写真を後処理するための負荷が非常に大きいだけで、一般的な動作はむしろスピーディーな方といえる。プロセッサにはSnapdragon 730Gを採用しており、メモリ(RAM)も6GBと必要十分なスペックを備えているため、ブラウジングをしたり、SNSを閲覧、投稿したりする分には、ハイエンドモデルとそん色ないスムーズさだ。ゲームなどのアプリもきちんと動く。

 本来ならば、ここでベンチマークテストの結果も披露したいところだが、「AnTuTu Benchmark」がセキュリティの懸念でPlayストアから削除され、公式サイトからダウンロードできるアプリも「Google Playプロテクト」での警告が出てしまう状況のため、ここでは結果の掲載を控えておくことにした。また、発売前の端末のためか、「GeekBench 5」や「3D Mark」といったメジャーなベンチマークアプリもPlayストアからダウンロードできなかった。

●FeliCaやeSIM搭載がうれしい半面、質感は価格相応か

 日本版のPixel 4aは、FeliCaに対応しており、おサイフケータイやGoogle Payを利用できるのも、うれしいポイントだ。モバイルSuicaやiD、QUICPay、楽天Edy、nanaco、WAONなどに対応しており、電子マネーの種類はApple Payよりも多い。SIMロックフリースマートフォンでは、まだ搭載の有無が分かれる機能なだけに、きちんと日本仕様をフォローしてきた点は評価できる。

 eSIMに対応しているのも、うれしいポイントといえる。物理SIMとしてはシングルSIMだが、eSIMのプロファイルをダウンロードすればデュアルSIM化が可能。eSIMを一般に広く提供する国内キャリアは、IIJmioと楽天モバイルのみで、まだまだ選択肢は少ないが、物理SIMの1回線目と別に設定することで、データ通信料を節約することが可能だ。

 なお、発売前の端末になるため、両キャリアとも利用の可否は発表していない。筆者が契約するIIJmioのeSIMプロファイルをダウンロードしてみたところ、正常にデータ通信できたことは付け加えておきたい。APNもプロファイルダウンロード後に自動で設定された。

 ミドルレンジモデル並みの価格ながら、カメラや処理能力はどちらかと言うとハイエンド寄りのPixel 4aだが、やはり価格相応なところもある。分かりやすいのは、端末の質感だろう。ガラスやメタルといった素材をふんだんに使っていたPixel 4に対し、Pixel 4aはポリカーボネートのユニボディー。Pixel 4も、素材感を強調したデザインではないため、一見似ていると思われるかもしれないが、触ってみると違いは一目瞭然。ポップな印象はあるものの、チープさを感じることは否めない。

 同価格帯のミドルレンジモデルでは、金属やガラスを使うのが一般的になりつつある中、ポリカーボネートのボディーは質感で負けている印象を受ける。ポリカーボネートの素材感を生かしたポップなカラーリングをするという手もありそうだが、残念ながらPixel 4aは冒頭で記載したようにJust Blackのみ。カラーバリエーションを減らしてコストダウンしたのかもしれないが、選ぶ楽しみがないのは少々残念だ。

 また、ストレージは128GBで、Pixel 4の最小構成よりも多いが、microSDに非対応のため、もう1つ上の選択肢は欲しいと感じた。写真についてはGoogleフォトを有効活用すればストレージは空けておけるものの、画質を劣化させずに保存できる容量には限りもある。いずれにしても、長く使うのであれば、写真はGoogleフォトに、音楽はYouTube Musicにと、同社のクラウドサービスを有効活用する必要がある。

 不満点もあるが、カメラ性能や処理能力は、一般的なミドルレンジモデル以上。特にカメラの写りに関しては、ミドルレンジの中ではトップクラスと太鼓判を押せる。この価格帯で強かったHuaweiがGMS(Google Mobile Service)を採用できなくなり、その座を奪おうと各メーカーが相次いでミドルレンジモデルを投入している中、Pixel 4aは台風の目になりそうな1台といえそうだ。