新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」が完全に解除されてから3カ月がたちました。宣言中に営業を休止した店舗も多くは営業を再開し、元通りとまでは行かないものの、街を歩く人の数も増えました。

 携帯電話販売店も、その点において同様です。キャリアショップでは3月末頃から時短営業や臨時休業といった措置を講じていましたが、6月からはおおむね通常通りの営業体制に戻りました。家電量販店や併売店(複数のキャリアを扱う携帯電話販売店)も、ごく一部を除いて平常通りの営業時間となりました。

 しかし、携帯電話の販売に携わるスタッフに話を聞いてみると、「通常通りに戻ったように見えて、まだまだ厳しい状態が続いている」という声が多数を占めます。

 一体、どういうことなのでしょうか。

●感染拡大を防ぐための措置が「面倒臭さ」を演出?

 緊急事態宣言が出たことに伴い、大手キャリアはキャリアショップの営業時間を原則として16時または17時までに短縮し、ユーザーには来店予約を強力に勧めました。NTTドコモやソフトバンクのように、ショップでの受付業務を制限する動きもありました。

 未知の部分が多い感染症の拡大を抑制する観点において、このような措置は致し方ありません。しかし、ユーザーの立場からすると「ショップで手続きをしたいのに予約がいっぱいで行けなくて困る」「ショップでの受け付けを休止している手続きをしたいのに電話窓口が混雑しすぎていつまでたってもつながらない」といった不便さを強いる措置でもあるわけです。

 6月に入って営業体制が元通りとなったことで、ユーザーに不便さを強いるようなことは少なくなった……と思いきや、複数のショップ店員から「お客さま目線に立つと時短営業や受け付け業務を制限していた頃とさほど変っていない」という声が寄せられました。

 一体どういうことなのか、もう少し詳しく話を聞いてみました。

 営業時間や受け付け業務こそ元通りになりましたが、ソーシャルディスタンスを確保する観点から待合席や受付カウンターの数を減らしました。また、来店の事前予約をしたお客さまを優先する取り組みをより強化しています。 結果として1日に応対できるお客さまの人数は、時短営業をしていた頃と大して変わりません。

 ここ数カ月で、お客さまの中に「予約がないと(店頭で)手続きできない」というイメージが定着したようです。合わせて、Webや電話窓口でもできる手続きは多いという周知も進んだのかもしれません。 というのも、営業時間が元通りになったのに、私の勤める店では来店客数の減少傾向が続いているのです……。

 感染拡大を防止するために取った措置が、来店客数の「回復」を妨げ、場合によっては「削減」につながっていることが分かります。

 こんな声もあります。

 重症化率は低水準ながら、再び感染が広がる傾向が見えます。 そのこともあって、買い換えの“きっかけ”として携帯電話販売店を使いづらくなったお客さまもいるんじゃないですかね。相談したくても相談に出向けないわけですから……。

 これを聞いて思い出したのが、筆者の親戚から最近寄せられたこんな相談です。

 最近、お店で携帯電話を買うのは行くのにも予約が必要で大変なんでしょ? お店以外で買う方法はないもんかね?

 つまり、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために取った措置が「店頭(特にキャリアショップ)で端末を購入することは“面倒臭い”行為」という印象を強めてしまった可能性があるのです。

 以前の連載でも触れた通り、携帯電話販売店の収益は、契約の成約や獲得などの「ノルマ」に少なからず左右されます。

 ただでさえ感染拡大防止策の影響で来店数が減っている所に、「来店は面倒だ」というイメージが強く植え付けられてしまうと、ショップとしては苦しい状況が続いてしまうことになります。

●家電量販店には客足が戻ったが……

 来店予約者を優先したり窓口の数を制限したりしたことで、キャリアショップの利用はある意味で「ハードルが高い」状況になっています。

 一方で、原則として携帯電話の販売(契約締結)に特化している家電量販店や併売店の状況はどうなのでしょうか。家電量販店や併売店で働いている複数のスタッフからも話を聞きました。

 来店客数は、元の7〜8割くらいまで回復しました。しかし、携帯コーナーに足を止めてくださる人はあまりいないんですよね……。

 本当に(携帯電話が)欲しいと思って来店したお客さまは、(以前のように)買っていきます。 しかし、いわゆる「ふらっと購入」は元通りになりませんね……。以前は他の買い物などの時間待ちのついでに携帯電話を買ってくださるお客さまも多かったんですが……。

 携帯電話を購入する際には、(お客さまは)スタッフからそれなりに長い時間の案内を受ける必要があります。トラブルを防ぐ観点から、数年前から契約時の説明事項を以前にも増して丁寧に行うような指導が(キャリアからも)行われています。 それゆえに、お客さまとの接触時間が長くなってしまいます。「今の携帯が使える」「最近のスマホは高い」といった先入観もあるとは思うのですが、お客さま自身も長時間拘束される携帯電話販売店には行きづらいと思っているのかもしれません

 キャリアショップと同様に、量販店や併売店も厳しい状況であるようです。

 売場のカウンターに仕切りを立てて「飛沫感染防止」を図ったり、座席の間隔を開けたりと対策いった対策は、キャリアショップと同様に十分行われています。不特定多数が来店する量販店では、マスクとフェイスガードの“二重”に対策したスタッフの姿も見受けられます。

 あるスタッフは、こう言います。

 (新型コロナウイルスは)いつ、誰から移されてしまうかも分かりません。それは、現場に立っている我々も同じことです。少しでも安心してお客さまに買い物をしていただけるように、少しでも安心してスタッフに働いてもらえるようにさまざまな対策をしています。 しかし、「ニューノーマル」が叫ばれる中では、買う側も売る側も「三密の回避」「濃厚接触の回避」への意識が強まるのは当然で、対面式の販売はどうしても難しくなってしまいます。 最近は、キャリアも自社でのオンライン販売に注力しています。新規契約や機種変更にかかる手数料を無料にしたり、「頭金」を0円に設定したりと、明らかに店頭で買うよりも「おトク」になるように仕向けていますしね。 正直にいうと、店頭での携帯電話販売は、そろそろ“潮時”ではないかと考えることもありますね……。

 新型コロナウイルスの脅威は、いつ終わるのか分かりません。“完璧”な対策も困難な見えない脅威に対して、携帯電話の販売現場は大きく疲弊していることは間違いありません。

 考えられる最大限の対策をもってしても、他人との接触機会を見直すことが強く求められる今、接客を伴う携帯販売の現場へのダメージは、思った以上に深刻なのかもしれません。