ニチレイが、iOS向けアプリ「conomeal kitchen(このみるきっちん)」を11月18日に提供開始した。

 conomeal kitchenは、ユーザーの食の好みに応じて作り置き献立を提案するアプリ。2020年9月30日から実施していたβテストを経て、正式版のリリースとなった。利用料金は無料。Androidアプリについても、今後リリースを予定している。

 conomeal kitchenのターゲットは「家庭で料理をする人」。食事を作る上で最も負担に感じていることは「献立を考えること」であり、これは1980年代と2020年現在でも変わらないという調査結果も出ている。特に昨今は在宅時間が増え、自宅で料理をする機会が増えたという人も多いだろう。

 ニチレイ 技術戦略企画部 事業開発グループの関屋英理子氏によると、レシピに関する動画やアプリは豊富にあるが、料理のテーマをなかなか決められないことが負担になっているという。

 そこでニチレイは、AIを活用し、食の好みを分析するシステムを開発。「食に対する価値観」や「そのときの気分」を加味した献立を提案する機能をアプリに実装した。AIの実装には、人工知能の専門とする北海道大学の川村秀憲教授が協力している。

 アプリでは、6つの質問に答えると6つのタイプに分類し、献立を提案する際のベースを決める。さらに、献立の提案前に「ほっとする味」「食べすぎ」「幸せの」「お弁当」といったタグ(バズタグと呼んでいる)を選ぶことで、よりそのときの気分に合った献立を提案してくれる。

 献立は一度に5日分まで作成でき、1日分でも最大7種類が提案される。あえて1種類にしなかったのは、「AIが完璧に決めるのではなく、選ぶ楽しみを残すため」(関屋氏)。平日に時間のない人が週末にまとめて準備できるよう、作り置きの手順をメインに紹介。どの食材をどれだけ購入するかが一目で分かるよう、材料リストも献立ごとに分かる。食事をする家族の人数も毎回設定でき、料理に対する家族の評価を付けることもできる。

 レシピは、日本料理店総料理長/レシピアドバイザーの盛山貴行さん、食にまつわる活動をしている夫婦ユニット「てとてと」、作り置きニストのMikiさんが監修している。レシピ数は現時点で350種類を用意。少ないと思えるかもしれないが、「家庭で作る料理は100メニューほど。好きなメニューは何回も作るし、作り慣れている料理の方がストレスを軽減できる」(関屋氏)ことから、あえて数を絞った。

 ニチレイといえば冷凍食品のイメージが大きいかもしれないが、実は冷凍食品の売り上げは全体の11%にすぎず、水産/畜産業(25.7%)、加工食品業(38.6%)、低温物流(33.7%)が多くを占めている。「実はいろいろやっている」と関屋氏。そんな中で2017年に新規事業開発グループが発足。異業種の参入やパーソナライズ化の浸透といった食品業界を取り巻く環境変化に対応すべく、「一人一人に合ったおいしい食を届ける必要がある」と考え、食嗜好(しこう)を分析するシステム「conomeal」のプロジェクトがスタートした。conomeal kitchenは、conomealをアプリに落とし込んだサービスとなる。

 β版は約700人に対して1カ月半実施。ユーザーにアンケートを取ったところ、「献立を決めるのが大きな悩みだったので、そこが解決されそう」と好評だった一方で、「作り方の工夫、レシピの見やすさは改善してほしい」という声もあったそうだ。

 アプリは全て無料で利用できるが、アプリ内課金も検討している。例えば、有料サービスのユーザーは、買い物リストと連携してスーパーのECサイトで注文が可能になるといった機能を想定している。

 さらに、conomeal kitchenで得られたデータを、ニチレイグループの商品開発やマーケティングに活用していく。

 「食品メーカーとしてモノを作ると、どうしても開発者起点になる。例えば『チャーハンが売れるかもしれない』と考えてチャーハンの商品化を決めるが、ユーザーが食べたいことが事前に分かっているわけではない」と関屋氏。しかしconomeal kitchenの蓄積されたデータからは、ユーザーの食意識が事前に分かるので、データを生かして、ユーザーが求める食品が作れるようになる。

 データを活用することで「商品開発の効率化やコスト改善が見込める」(関屋氏)ため、ニチレイ全体の事業成長につながるとしている。将来的には、食嗜好のデータやデジタル化されたレシピを他企業に販売することも視野に入れている。