コンパクトiPhone利用者にとって待望の「iPhone 12 mini」が登場したことで、ようやく、iPhone 8や7、6sや旧SEから買い替えられると喜んだ人も多いでしょう。ただ、新型コロナの影響下ではマスク装着時も便利な指紋認証センサー搭載で低価格な「iPhone SE(第2世代)」(以下、iPhone SE)も魅力的で、どちらを買うべきか悩ましいところ。

 そこでこの記事では、iPhone 8、iPhone 7、iPhone 6sや旧iPhone SE(第1世代)などからの買い替えを念頭に、iPhone 12 miniとiPhone SEの使い勝手をチェックしました。価格差は3万3000円(税込み)で完成度の高い2モデル、どちらを買うべきか片手操作の快適さや機能について見ていきましょう。

●画面サイズと持ちやすさはiPhone 12 miniが圧倒的

 iPhone 12 miniとiPhone SEで悩む人にとって最も重要なのは、画面の大きさと片手持ちでの親指操作のしやすさです。これらは両方とも、iPhone 12 miniの方が圧倒的に良好です。

 iPhone 12 miniの画面サイズは5.4型(1080×2340ピクセル)の縦長になりました。SEなどの4.7型(750×1344ピクセル)をそのまま上下に伸ばしつつ、解像度を上げています。

 これにより、ブラウザやSNSで一度に確認できる情報量が増え、使い勝手が向上しました。画面解像度の向上により、高画質な写真や動画、アプリ画面を表示する場合も12 miniの方が繊細に見えます。

 動画再生時の画面サイズは、iPhone 12 miniとSEともに画面横幅が同じなので基本的には変わりません。ですが、12 miniは画面が縦長なのでより横長のシネスコの映画を大きく再生できる他、ピクチャーインピクチャーの動画再生も使いやすいです。

 映画再生に関して加えると、iPhone 12 miniはHDR動画の再生に本格対応。HDR動画の再生時は最大1200ニトの明るさと有機ELの締まった黒により、迫力ある明暗差を表現できます。内蔵スピーカーは両モデルともステレオで音は同程度に大きいです。音の質ですが、12 miniは空間オーディオ対応により音の定位感がややはっきりしていますが、ボーカルはiPhone SEの方が響く印象です。

 持ちやすさは、iPhone 12 miniが横幅64.2mmと非常にスリム。iPhone SEなど従来の4.7型iPhoneの67.3mmと比べて約3mmも削減され、より深くしっかりと握りやすくなっています。軽さもiPhone 12 miniは133gと現行モデルで最軽量。iPhone SEの148gも軽いのですが、性能を強化しつつ15gも下回りました。片手で楽に持ち続けられます。

 実際に片手持ちで文字入力を試すと、12 miniは本体をしっかり握れる分、親指の届く範囲がSEなどと比べて広く、より楽に文字入力できます。12 miniは画面が縦長になりましたが、画面上部の操作もさほど苦になりません。これなら、iPhone 8や7、6sあたりの利用者だけでなく、旧SE(第1世代)の人も満足して移行できるでしょう。

●指紋認証は必要? 生体認証を比較

 マスク装着時のロック解除も買い替え時の要チェック事項です。これからの季節、新型コロナ以外にもインフルエンザや花粉症の対策でマスクを装着する機会は増えてきます。

 ロック解除が便利なのはiPhone SEの指紋認証(Touch ID)です。ホームボタンを押すと同時に指紋を認識してロック解除。マスク装着の有無を問わず、すぐに操作を始められます。また、ホームボタンを素早く2回押すと非接触IC(SuicaやiDなど)の決済も利用できます。

 iPhone 12 miniの顔認証(Face ID)は、他の対応モデルと同じく、電源キーなどで画面を点灯した後に画面を下から上にスワイプし、本体の画面(インカメラ)を目で見える範囲に持ち上げて注視し、顔が認識されると操作を始められます。手間がかかるうえに、マスク装着時は顔認証を通過できず、パスコード入力が必要になります。

 ただ、iPhone 12 miniは軽量かつ片手で親指操作しやすいので、顔認証のために本体を持ち上げるのは楽ですし、パスコードも片手親指で楽に入力できます。他の大画面iPhoneと操作内容は同じですが、実際の解除操作の負担はかなり軽減されました。これなら、指紋認証がなくても妥協して使えるでしょう。

 iPhone 12 miniのロック解除を楽に使いたいなら、いっそのことFace IDでのロック解除をオフにするのも有効な手段です。「設定」→「Face IDとパスコード」で「iPhoneのロックを解除」をオフにすると、パスコードのみでロックを解除できるようになります。その際、「パスコードを要求」する時間が「即時」だけでなく「1分後」「5分後」なども選べるようになります。設定した時間だけiPhoneのロックを無効にできるので、覚えておくといいでしょう。

●カメラは12 miniの超広角とナイトモードが便利、だがSEも十分使える

 iPhone 12 miniは広角と超広角の1200万画素デュアルカメラを搭載。さらに、両方のカメラともナイトモードに対応。ダイナミックな風景や室内を広く撮れる上に、暗い室内や夜景も手持ちのロングシャッターで明るく撮影できます。また、今後どこまで一般化するかは不透明ですが、Dolby VisionのHDR動画も撮影できます。

 iPhone SEの1200万画素カメラも、日中屋外の画質は12 miniとそこまで変わらず、ある程度高感度で多くの人は不満を持たないレベルにあります。ただ、日常のカメラ撮影が多いなら12 miniを選んだ方が満足できるでしょう。

 インカメラについても、12 miniは明るく撮れる1200万画素に対し、SEは700万画素で暗い室内だとややノイジーに感じられます。顔出しのビデオ通話が多いなら12 miniという選択肢もありでしょう。

●両機種ともハイエンド級の高い性能を実現

 iPhone 12 miniは最新プロセッサ「Apple A14 Bionic」と4GBメモリを搭載。iPhone SEは1世代前の「iPhone A13 Bionic」と3GBメモリを搭載しています。Antutuベンチマークの結果で見ると、全体として12 miniの方が2割ほど高性能です。とはいえ、両モデルともハイエンド級の高性能モデルなので、iPhone SEを買ったからといって動作が遅いといったことはありません。

 2機種の違いとして大きく出るのはディスプレイの差で、12 miniは画面が大きく高解像度なぶん、高い処理性能を生かして高画質3Dグラフィックのゲームがよりキレイに楽しめます。

 ゲームプレイ周りに絞った利点としては、12miniとSEともにコンパクトなので、高画質3Dグラフィックの音楽リズムゲームを快適に動かせます。音の遅延が気になる場合は、別途Apple製の「Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプター」(税込み1100円)で有線イヤフォンを利用しましょう。

 ちなみに、人気ゲーム「Fate/Grand Order(以下FGO)」もようやく、iPhone 12 miniなど顔認証搭載モデルの全画面表示に対応しました。2020年11月まではiPhone SE以外に買い替えると画面が狭くなりプレイしづらかったのですが、現在はiPhone 12 miniでも快適にプレイできます。

●5G対応やバッテリー持ち、充電方法をチェック

 iPhone 12 miniは5Gに対応しており、各社が整備5GのSub-6周波数帯のエリアで最大3.4Gbpsの高速通信を利用できます。ただし、現時点ではエリアが非常に狭く、日常的には使えません。ですが、2021年からは各社とも本格的なエリア拡大を進める見込みです。

 中でもドコモは2021年3月末や夏のエリアマップを公開済み。5Gの高速通信を目当てに買うなら、こういった各社の5G(Subー6)対応エリアの拡大予定をチェックしましょう。

 バッテリーの持ちはiPhone 12 miniの方が良好です。Appleの仕様表でのビデオ再生(ストリーミング)を12 miniは約10時間、SEは8時間が実際の使用感に近いです。現在iPhone 8や7、6sを使っているなら、12 miniのバッテリー持ちは2〜3割は良好で、SEは同等程度と想像すれば分かりやすいでしょう。

 実際に10時間程度の外出でSNSや動画視聴、カメラ撮影、ゲームなどをやや頻繁に操作したところ、12 miniのバッテリー残量は20%ほど残りましたが、iPhone SEのバッテリー残量は残り数パーセントでした。両機種とも、長時間の外出ではモバイルバッテリーや充電環境は必須です。

 充電は両モデルとも、付属の「USB-C - Lightningケーブル」と別売りのApple 20W USB-C電源アダプターや、USB PD充電器を使って急速充電すると約30分で50%、約1時間50分で100%まで充電できます。

 ワイヤレス充電は両機種とも対応。iPhone 12 miniはMagSafe充電器とApple 20W USB-C電源アダプターやUSB PD充電器との組み合わせで最大12Wの充電が可能です。実際の充電時間は約1時間で50%、約3時間半で100%充電。充電中はかなり発熱します。iPhone SEはApple Storeで販売されている対応ワイヤレス充電器なら最大7.5Wで充電できます。なお、SEをMagSafe充電器に載せて充電したところ、途中発熱のためか充電が止まりましたが約2時間半で50%、約8時間で100%充電できました。

●2機種とも納得の高コスパ 購入の判断材料は「出せる金額」

 iPhone 12 miniとiPhone SEを比較すると、持ちやすさや性能、バッテリー持ちなどほぼ全ての要素でiPhone 12 miniの方が上です。コンパクト派にとって理想のスマホと言っていいでしょう。マスク装着時のロック解除の楽さだけは指紋認証搭載のiPhone SEが上ですが、12 miniならパスコード入力もそこまで苦にはなりません。他の特徴の利便性とてんびんにかけると、指紋認証を諦めてiPhone 12 miniが欲しくなるだけの魅力があります。

 一方で、iPhone SEも処理性能はハイエンド級かつ、カメラもこだわりがなければ日中もやや暗い室内、夜景もある程度撮影できて5万円前後と、非常にコストパフォーマンスの高い製品です。バッテリー持ちはやや微妙ですが、ある程度ヘビーに使うとモバイルバッテリーが必要なのはiPhone 12 miniもSEも変わりません。

 筆者も当初は指紋認証の有無が購入の判断材料になるかと思いましたが、実際に使ってみると、iPhone 12 miniの使い勝手や性能の前では決定的な差だとは感じられませんでした。1日の大半を、マスクを装着したままiPhoneを操作して過ごす場合はまた別ですが。

 そうなると、後は約3万円の価格差だけが、2機種を選ぶ判断材料となります。最新スマホやカメラ性能、5Gに興味がある人、お金に余裕がある人ならiPhone 12 mini。スマホ代を節約しつつ高性能なスマホが欲しい人、iPhone 12 miniの次を待つ人ならiPhone SEという選び方になるでしょう。