政府の強い要望を受ける形で3月に導入された、大手キャリア各社の20GBプラン。程度の差はあるが、その安さから提供開始当初はユーザーが殺到し、SIMカードの配送が遅延したり、手続き完了に時間がかかったりといったトラブルは起こったが、状況は徐々に落ち着きつつある。一方で、安さだけが伝わってしまった結果、オンラインで手続きができないユーザーがショップに訪れるなど、キャリア側の狙いとユーザーのミスマッチも起っているようだ。

 こうした中、ahamoを提供するドコモは、4月22日にドコモショップでのサポートを開始した。契約や料金プラン変更を手伝う「ahamo WEBお申込みサポート」と、契約後の手続きを助ける「ahamo WEBお手続きサポート」の2本立てで、いずれも料金は3300円(税込み、以下同)。加えて、端末故障時のサポートとして、ドコモショップでの修理も無料で受け付ける。

●ドコモショップでサポートを開始したahamo、オンラインのみには限界も

 あるドコモユーザーが、「ドコモショップに行ったら、本当にahamoの契約をしようとしてる人がいた」と驚いていたように、ahamoをはじめとしたオンライン専用プラン/ブランドが店舗で契約できないことは、想像以上に浸透していない。ahamo開始直後に、オンライン専用でサポートが十分ではない不満を伝えたブログも、賛否両論を巻き起こした。テレビなどの短い尺で、インパクトの大きい金額やデータ容量だけが伝わってしまった結果といえる。

 本連載でたびたび指摘しているように、ahamoをサブブランドではなく、ドコモのいち料金プランと位置付け(ざるをえなかっ)たことも、誤解を招く要因になっているはずだ。ドコモの料金プランと銘打っているにもかかわらず、ドコモの看板を掲げたショップで契約できないのは、直感的に理解しづらい。オンライン専用の料金プランというコンセプトが新しいこともあり、ユーザーに浸透するには時間がかかる。

 こうした中、ドコモは4月22日に上記2つの店頭サポートをahamoに導入。合わせて、端末故障時の受付も、ドコモショップで行うことになった。サポートとしているのは、あくまで手続きをユーザー自身で行うからだ。「ahamo WEBお申込みサポート」では、通常のドコモの料金プランに加入するときのように、ショップスタッフが店頭の端末(ALADIN)にユーザーの情報を入力するのではなく、ユーザー自身の端末でahamoを申し込みするのを、スタッフが手助けする形になる。

 ショップスタッフが操作を肩代わりしないのは、「同意事項などもあるためで、お客さまにやっていただくのが基本になる」(ドコモ広報部)という。契約後のサポートは、チャットを通して行う形になるが、店頭でのサポートが必要な際には、「ahamo WEBお手続きサポート」の利用が必要になる。ahamoには、それほど加入できるオプションは多くないため、利用の機会は少なくなりそうだが、機種変更などの手続きにも対応するという。

 店頭サポートのサービスが生まれた背景を、ドコモは次のように説明する。「お値段的なところを含め、ahamoに興味を持っていただけている方がたくさんいたが、オンライン手続きはやはり慣れないのでサポートしてほしいという要望があったため、有料でという形で整理した」(ドコモ広報部)。ahamoは本来、店頭サポートなどのコストを削って低料金を実現したプランだ。その分のコストをユーザーが負担するのであれば、サポートを受け付けるというのは合理的といえる。

●徐々に役割を変化させているドコモショップ、ahamoでその動きが加速するか

 ドコモはahamoの店頭相談会などを実施していたが、その他のプランへの翻意を狙った“ahamoフック”だとして、批判も集めていた。一方で、料金をもらってサポートできれば、代理店にとってもahamoは商材の1つとして販売できる上に、ユーザーの利用実態にそぐわなければ、上位プランをお勧めすることもできる。心理的にも、ビジネス的にも、ユーザーに抵抗感なくahamoを勧めやすくなったといえる。

 ドコモ自身も、ahamo導入前からドコモショップの位置付けを販売拠点からサポート拠点へと、徐々に転換してきた。例えば、以前本連載で取り上げたことがあるアプリのサポートは、その一例だ。2020年12月1日から全国のドコモショップで提供されている「アプリ設定サポート」は、1アプリあたり1650円でインストールや初期設定、アカウントの引き継ぎをショップスタッフが手助けするサービス。サポートの有料化という観点では、ahamoの店頭サポートに位置付けは近い。

 ドコモショップで実施している「メルカリ教室」も、サポート強化の一環と捉えることができる。ドコモとメルカリは連携を強化しており、2月5日にはドコモショップに「メルカリポスト」の設置を開始。メルカリで販売した商品を発送できる拠点としての体制を整えつつある。メルカリポストの設置は、2021年12月末までに1000店舗に拡大する予定。これと合わせて、メルカリ独自の梱包資材の販売も始めた。

 ドコモの井伊基之社長は、2021年1月に実施されたグループインタビューで「ショップに依存した販売形態は見直さなければいけないのは元からの経営課題」と語っていた。ahamoの提供で影響を受ける代理店については、「オンサイトでしか提供できないものを与える場所にしなければならない」と述べ、有償でのサービスを拡大していく意向を示していた。ahamoの申し込みサポートも、こうしたショップの役割の変化を反映させたものといえそうだ。

●販売拠点からサポート拠点への転換はなるか? キャリアショップの課題とは

 他社は現状、ドコモの動きに対し、すぐに追随する予定はないようだ。KDDIはpovoの店舗サポートは「現時点で予定はない」(広報部)と語る。ソフトバンクも、「今後の選択肢の1つではあるが、決まっていることはない」(広報部)という。

 とはいえ、オンライン専用プランは、ショップを運営する代理店にとっては悩ましい存在。ユーザーが自身で勝手に契約してしまうため、ahamoやpovo、LINEMOの比率が高くなればなるほど、ショップに落ちる手数料は少なくなるからだ。サポートを有料化できれば、キャリアと代理店、ユーザーの“三方よし”を実現できる可能性がある。

 契約者獲得に重きを置くビジネスモデルは、業界全体で見るとまだ大きく変わっていないようにも見える。総務省は、4月26日の「競争ルールの検証に関するWG(第17回)」で、代理店やショップスタッフに対するインタビューやアンケート調査の結果を公開。アンケートからは、4割強のスタッフがユーザーのニーズや意向の確認をせず、上位プランの勧誘をしたことがあることが判明した。

 インタビューでは「キャリアからは合理的とはいいがたい高い数値目標が設定されており、利用者が求めていないサービスを積極的に勧誘する必要がある」といった意見も挙がっている。こうした調査結果を受け、総務省は「MNOの各種施策が販売現場で大きなプレッシャーになっている可能性がある」と結んでいるが、改善するには、契約獲得数や高額な料金プランに偏った手数料体系を改めていく必要がある。

 ただ、ユーザーの通信料という原資がなければ、手数料の支払い自体も難しくなる。ahamoのようなオンライン専用プランの比率が上がっていくと、ショップの淘汰(とうた)がさらに進む可能性がある。総務省のインタビューでは、代理店側からも「端末の独自修理や利用者のリテラシー向上に資するセミナーの開催など、代理店にできる独自ビジネスもあるはずなので、認めていただきたい」といった声が挙がっており、サポート拠点への転換が急務といえそうだ。