ソフトバンクが5月11日、2021年3月期の決算説明会を開催した。今回は宮川潤一氏が4月1日に社長に就任してから初の決算会見となり、同氏が今後10年の中長期ビジョンを語った。宮内謙前社長は、通信キャリアを超えて新規ビジネスを創出する「Beyond Carrier戦略」を打ち出していたが、中長期ビジョンは、その第2フェーズとなる。

 宮川氏は今後10年のこだわりとして、増収増益を続ける「成長」と、新規事業を立ち上げていく「価値創造」の2つを挙げる。そのためには10年先を見据えた挑戦を続け、通信基盤、人材力、チャネル、コンシューマー向けサービスといった事業基盤をより強固なものにしていく。サービスについてはソフトバンク、Yahoo!、PayPayに加えて、グループ会社にLINEが加わったことで、「顧客接点という意味では日本最強がそろった」と宮川氏は自信を見せる。

 ソフトバンクの事業基盤とグループ投資先の企業が持つビジネスモデルとテクノロジーを組み合わせることで、新事業を垂直に立ち上げていくとした。「経営のスピード感は他社に負けないつもり。日本企業とともに手を取って共創していく」(宮川氏)

●携帯料金値下げで約700億円の減益

 2020年度の連結業績は、売上高が5兆2055億円で前年比7%増、営業利益は9708億円で前年比6%増となった。特に法人部門で29%という大幅な増益を記録した。

 2021年度は売上高が5.5兆円(前年比6%増)、営業利益が9750億円(前年比0.4%増)を見込んでいる。営業利益が抑えめなのは、携帯料金の値下げと、LINE統合に伴う無形資産の償却による1000億円の減益が影響しているため。うち、携帯料金の値下げは700億円ほどを占める。一方、モバイルサービスの契約増、法人事業やヤフー事業の増益などで1050億円超の利益を生み出して減益分をカバーしていく。宮川氏は「プライドを懸けて増益を果たす」と決意を語った。

 中でも大きな役割を果たすのが法人事業だ。2021年度のセグメント別で営業利益予想を見ると、コンシューマー事業は166億円(3%)のマイナスだが、法人事業で203億円(19%)の増益を見込んでいる。「(ソフトバンクは)もともと回線売り屋さんというイメージが濃かったが、今はデジタルマーケティング、リモートツール、会社全体の自動化、ネットワークのセキュリティなどをトータルソリューションで企業や自治体に納めている」と同氏。売上高1000億円以上の上場企業のうち、95%と取引実績があるという顧客基盤も強みに挙げている。

●2021年秋以降に5GのSAサービスを開始

 コンシューマー事業では「スマートフォンナンバーワンを目指す」と宮川氏は意気込む。Y!mobileとLINEMOを含めたマルチブランド戦略を推し進め、Yahoo!、PayPay、LINEなどのグループのアセットを活用して差別化を図っていく。

 スマートフォンの累計契約数は2020年度で2593万に上り、5年で1.5倍、Y!mobileに限れば5年で4.4倍増加した。宮川氏は3月にスタートしたオンライン専用ブランド「LINEMO」にも触れ、「LINEのタッチポイントをいかに活用していくか」がカギとした。スマートフォンの累計契約数は2023年度で3000万を目指す。

 ソフトバンクとY!mobileのユーザーも一定数、LINEMOに移動しており、「ダウングレードなので収益悪化の原因の1つになる」(宮川氏)が、その数字は想定通りとのこと。グループ内での移行数は公表していない。

 5Gネットワークについては、2021年2月に既存周波数の5G転用、同年3月に47都道府県での展開を達成し、2021年秋口以降、5Gのコアネットワークと5G基地局を用いたSA(スタンドアロン)の5Gサービスを提供する見通し。また2022年春までに5Gで人口カバー率90%の達成を目指す。

●PayPayの収益化は「当然狙っている」

 Eコマースの取扱高は国内3位にとどまっており、「まだまだダメ。何としても1位になる」と宮川氏。特に頭を悩ませているというのが「配送」で、「翌日に届く、数時間後に届くなど、もっと力を入れないといけないと考えている」とした。ソフトバンク、LINE、PayPay、Yahoo!のユーザーをグループが抱えるECサービスに送客することで、取扱高を拡大していく。

 PayPayは2021年5月時点でユーザー数が3900万人を突破しており、2020年度の決済回数は前年比約2.5倍の20億回となる。加盟店数は2020年度時点で316万を超えた。今回初めて公表するという決済取扱高(GMV)は、2020年度で前年比2.6倍となる3.2兆円に上る。

 ユーザー向けの各種キャンペーンや、店舗向けの決済手数料無料などによって赤字が続いているPayPayだが、収益化は「当然狙っている」と宮川氏。ただしその時期については「加盟店にチャージをする(決済手数料を課す)タイミングがどこかで来るが、(収益化は)まだ開示するタイミングにはない」と明言を避けた。「PayPayも将来的には独立していってほしいと思っている。自立していくためには収益が必要だが、(収益化は)遠くない世界で起こりうる」(宮川氏)

 PayPayの決済手数料は2021年9月まで無料としている。手数料の無料化が撤廃された後、店舗側のPayPay離れが懸念されるが、榛葉淳副社長は「これだけのユーザーに支持をいただき、300万を超す拠点がある。手数料を頂戴することになっても、取引先から見たらビジネスが広がっていくので、メリットを訴求していく」との考えを示した。なお、ユーザーに対する投資は、2020年度は2019年度から減ったそうで、1ユーザーあたりのコスト効率は改善されているそうだ。

●NTTの接待問題や楽天モバイルの提訴についてコメント

 質疑応答でNTT持株会社の総務省への接待問題について見解を問われた宮川氏は「行政がゆがめられたかどうかの発言をすべきかもしれないが、第三者委員会での見解を聞いた上で、議論をさせていただく。(その前に)踏み込んだ会話をして宮川ショックと言われないようにしたい」と言葉を選んだ。

 楽天モバイルとソフトバンク元社員を提訴した件で、損害賠償の金額を約1000億円とした理由については、基地局建設の前倒しの効果、新規契約者の獲得、契約者の解約率低下、(KDDIの)ローミングコスト削減などを加味したという。「一通り計算してその資料を裁判所に提出した。(計算式が)正しいかどうかは裁判所で議論することになる」(宮川氏)