楽天モバイルは5月18日、1GHz以下のいわゆる「プラチナバンド」の再配分に関する同社の意見を伝える報道関係者向け説明会を実施。現在、総務省で進められている周波数再分配の議論に関連し、同社にとってのプラチナバンドの重要性と、プラチナバンド再分配に関して総務省に提出した意見の詳細について説明した。

●2023年に周波数の逼迫が他の3キャリアを超える

 楽天モバイルが意見表明を実施したのは、現在総務省で進められている有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」内のワーキンググループ「移動通信システム等制度WG」の第4回会合(2021年5月18日実施)を受けてのものになる。このワーキンググループでは電波の有効利用促進とモバイル市場における公正競争の確保に関して議論されており、そこで大きなテーマの1つとなっているのが、携帯電話各社に割り当てられている周波数の再割り当てである。

 そこで楽天モバイルの執行役員兼技術戦略本部長である内田信行氏は、同懇談会での議論を踏まえ、楽天モバイルが置かれている現状について説明するとともに、周波数再割り当て、より具体的には同社が保有していないプラチナバンドの再割り当てに関する意見を表明するに至っている。

 楽天モバイルは新規参入ということもあり、長い間携帯電話事業を展開しているNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社と比べ、周波数の割り当てが少ない。だが楽天モバイルは累計申込数が2021年5月に410万に達しており、順当に契約が進めば当初目標を上回るペースで契約を獲得することになる。さらに、通信量無制限で利用できる料金プランを提供していることから、1契約あたりの1カ月の総トラフィックは他社の2倍に達しているとのこと。それを考慮すれば、2023年には周波数の逼迫(ひっぱく)度合いが他の3社を超える可能性があるという。

 そうしたことから内田氏は、周波数の逼迫を迎える前に新たな周波数帯の免許獲得の検討を進めているという。だが、総務省で今後の割り当てが検討されているのは2.3GHz帯や4.9GHz帯、26GHz帯などで、いずれも同社が現在メインで使用している1.7GHz帯より周波数が高い。

 もちろん逼迫を解消する上では高い帯域でも問題はないが、内田氏は「ビルでも地下でも、どこでもつながることを考えた場合、プラチナバンドの電波特性が優位なのは事実」と話す。だが現時点ではプラチナバンドで新たな空きが出る見通しは立っていないという。

●総務省の周波数再分配方針を「大きな前進」と評価

 実はプラチナバンドという観点でいえば、デジタルMCAシステムの高度化によって845〜860MHzと928〜940MHzに空きが出る予定だが、利用可能なのが5MHz幅と狭い上、世界的に携帯電話で使われている周波数帯と一致せず、調達する機器に独自のカスタマイズが必要になる。そうしたことから楽天モバイルは、この帯域の割り当てを希望しないとしている。

 一方でこれまで、携帯各社は周波数帯の免許が割り当てられ、その期限が終わって継続的に同じ帯域を使用していることから、「周波数の固定化が起きている」と内田氏は説明。こうした状況が続く限り楽天モバイルがプラチナバンドの割り当てが受けられないことから、内田氏は先の有識者会議で、免許の期限が終了した後に新たな事業者への割り当てを検討するという方向性が打ち出されたことが「非常に大きな前進だったと思っている」と高く評価している。

●楽天モバイルが示した5つの意見とは

 ただ、再割り当てという大枠での方向性が示されたとはいえ、具体的な再割り当ての進め方などは今後の議論となるため、楽天モバイルが求めているプラチナバンドの再割り当てがすぐ実施されるわけではない。そこで楽天モバイルは、より具体的な取り組みを求めるべく先のワーキンググループに意見を提出したそうで、その意見は大きく5つあると内田氏は話す。

 1つ目は、プラチナバンドの重要性。どこでもつながるサービスを提供する上でプラチナバンドはどうしても必要なもので、その有無が「競争上、極めて重要な問題になる」(内田氏)という。

 2つ目はタイミングだ。現在携帯3社はプラチナバンドの一部を3Gに使用しているが、各社は2022〜2026年で3Gのサービスを終了させる予定だ。そこで各社が3Gを終了させ、4Gに移行するタイミングで再分配を実現できれば「各社の負担を少なくし、固定化されていたプラチナバンドの再分配を進める絶好の機会」になると内田氏は話しており、今を逃すとプラチナバンド獲得の機会が大幅に狭まってしまうことが、このタイミングで意見表明するに至った理由となっているようだ。

 3つ目は公平性である。プラチナバンドは各社ともにエリアをカバーする上で非常に重要だが、一方で帯域幅は広くないので大容量通信のトラフィック対策には適しておらず、そちらは大容量通信に適したより上の帯域を使う形となる。そうしたことからプラチナバンドと、それより上の帯域とでは性質が異なるとして、プラチナバンドは公平に割り当てられるべきだと内田氏は主張している。

 4つ目は、先の懇談会の報告書にプラチナバンドの再分配の具体化について盛り込むこと。先にも触れた通り、現在の議論ではあくまで周波数の再割り当てをするという大枠が示されたにすぎず、プラチナバンド再分配の具体的な計画が示されたわけではないことから、2つ目に挙げた絶好のタイミングを生かす上でも、報告書が出た後早期にプラチナバンドの議論が進められることを求めたいようだ。

 そして5つ目は、中立的な評価・検証である。以前の事業者に割り当てられていた周波数を新しい事業者が利用する場合、通常移行のため一定の猶予期間が設けられるが、新しい事業者側が早くその周波数を利用したい場合は、お金や人材をかけて移行終了を促進する措置を取ることもできる。実際、楽天モバイルが使用している1.7GHz帯はもともと防衛省のシステムで利用されていたものであり、早期利用のため同社らがコストをかけて終了促進措置を実施している。

 だが今回の再分配の議論は、競合する携帯電話会社同士で再分配がなされることが念頭に置かれているため、終了促進に必要なコストなどに関して正当性や透明性を確保できるかが課題になってくるという。そこで内田氏は、総務省の何らかの機関で正当性を評価するなど、中立的に評価をする仕組みが必要になるのではないかと話している。

●2023年中のプラチナバンド利用開始を希望

 内田氏によると、先の策懇談会の報告書が2021年8月に取りまとめられ、2022年10月に今割り当てられている周波数帯の一斉再免許付与のタイミングがあるというが、そのタイミングでのプラチナバンド再割り当ては「現実的に厳しい」と話す。内田氏はあくまで希望と断った上で、2023年4月から移行期間が始まるような再割り当てスケジュールをイメージしており、終了促進費用を支払うなどして2023年中に使い始められることを「期待を込めて考えている」としている。

 ただ楽天モバイルの代表取締役社長である山田善久氏は、2020年1月23日の発表会でプラチナバンドについて聞かれた際、「われわれが持っている帯域はけっこうつながると思っている」「今の帯域と5Gの帯域を前提に(エリアを)組んで、それでもつながりやすい体験できると自信を持っている」と、プラチナバンドがなくても十分なエリア設計ができるとの認識を示していた。

 この件について問われた内田氏は、都市部では1.7GHz帯の基地局を500m間隔で密に設置するなどして、人口カバー率という意味でのエリアカバーは進んでいるというが、プラチナバンドは数字に見えないビル影や地下など、人口カバー率に見えない所で大きな差が出るとの見解を示す。そうしたことから「プラチナバンドがあればつながりやすいシステムを構築できることは間違いない。こうした議論が起きている中、千載一遇のチャンスなので最大限利用して割り当て頂けるよう取り組みをしていく」と、内田氏は答えている。

 また、仮に再割り当ての末にプラチナバンドの免許を獲得した場合、基地局の整備や既存事業者の終了促進費用、5G周波数割り当て認定を受けた企業が支払う必要がある「特定基地局開設料」などで再び大きな投資が必要になる可能性が出てくる。ただその金額について内田氏は、数字が独り歩きする可能性があるため「現段階でどれくらいというのは言える段階にはない」と、明言を避けている。