総務省は5月25日、令和2年度(2020年度)の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」の結果を公表した。楽天モバイルの参入やオンライン専用料金プランの導入などにより、MNO(大手キャリア)の月額料金は下降傾向で、都市間比較において「低い水準(≒安価)」または「中位(≒高くも安くもない)」という評価が多くなった。一方で、MVNOの月額料金はほぼ横ばいで、都市間比較において「高い水準(≒高価)」という判定となった。

●調査の概要

 この調査では、毎年3月時点における「携帯電話」「FTTH(家庭向け光インターネット)」「固定電話」について間接税(消費税/付加価値税)やユニバーサルサービス料込みの月額料金を比較している。比較対象の都市は以下の通りだ。

・東京(日本)

・ニューヨーク(米国)

・ロンドン(イギリス)

・パリ(フランス)

・デュッセルドルフ(ドイツ)

・ソウル(韓国)

 携帯電話については「MNOのスマートフォン」「MVNOのスマートフォン」「MNOのフィーチャーフォン」と細分化して料金を比較している。2021年度調査からは、MNOのスマートフォンをさらに「4G(LTE)」と「5G」に分けて集計するようになった。

 比較は原則として各都市(国)においてシェア1位の事業者同士(※1)で行っているが、MNOのスマートフォンについては各都市においてシェア上位の3〜4社の価格に関する調査も実施している。

 なお、この調査では通信品質の差、各種割引サービスを全く考慮していない。また、購買力平価(※2)は考慮しているが、その都市における平均賃金を考慮したものではないことにも注意が必要だ。

(※1)東京ではMNOは「NTTドコモ」、MVNOは「インターネットイニシアティブ(IIJ)」、FTTHは「NTTドコモ」、固定電話は「東日本電信電話(NTT東日本)」が比較対象となる(※2)「同じ商品は世界どこでも同じ価格になる」という前提に立って、2つの通貨(この調査の場合は日本円と外国貨幣)の為替レートを算出する手法

●MNO携帯電話:最低とは行かずとも値下げ傾向に

 携帯電話の調査では、「月間で通話を61分、メールを60通」というユーザーモデルをもとにして容量別に月額料金の目安を調べている。

4Gスマホ

 MNOの4Gスマホにおいて各都市でシェア1位のMNO同士を比較した所、東京は20GBプランは「低い水準」、その他の料金プランは「中位の水準」となった。平成26年度(2014年度)からの比較で見ると、東京は平成30年度(2018年度)から下降傾向となり、今年度(2020年度)では、6都市中月間2GB/5GBでは3番目、月間20GBでは2番目に安くなった。容量無制限プラン(※3)も僅差で3番目に安いということになった。

 なお、東京で比較対象となったのは、20GBまでのプランはNTTドコモの「ahamo」、容量無制限プラン(※3)はドコモの「ギガホ」となっている(参考データとして「ギガホ プレミア」も掲載している)。

(※3)ドコモでは4G通信サービス向けの容量無制限サービスが存在しないため、大容量プランであるギガホで比較している

 一方、最安値キャリア同士で比較すると、東京は2〜20GBにおいて「中位の水準」となったものの、容量無制限では6都市中2番目に安価という結果となった。シェアや品質はさておき、世界の大都市の中では手頃な価格で容量無制限を利用できる環境といえるようだ。

 なお、東京で比較対象となったのは、2GBではUQ mobile(KDDI/沖縄セルラー電話)の「くりこしプランS」と「通話パック」の組み合わせ、5GB〜20GBではahamo、無制限では楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT V」となる。なお、2GB〜20GBの容量では、参考データとして楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VI」の料金も記載されている。

5Gスマホ

 MNOの5Gスマホにおいて各都市でシェア1位のMNO同士を比較した所、東京は2GB〜20GBの容量で「低い水準」、容量無制限プランが「中位の水準」となった。6都市中、東京は2GB〜20GBにおいて2番目に安く、容量無制限プランにおいて4番目に高いという結果である。参考数値として出ている4月1日以降の料金なら、3番目に安いニューヨーク(米国、Verizon Mobile)並みの料金水準となる。

 なお、東京で比較対象となったのは、2GB〜20GBプランがahamo、容量無制限プランがドコモの「5Gギガホ」となっている(参考データとして「5Gギガホ プレミア」も掲載している)。

 一方、最安値キャリア同士で比較すると、東京において2GBと5GBは「中位の水準」となったが20GBと容量無制限は「低い水準」となった。

 なお、東京で比較対象となったのは、2GBがY!mobileの「シンプルS」と「だれとでも定額」の組み合わせ、5G〜20GBはahamo、容量無制限がRakuten UN-LIMIT VIとなる。なお、容量無制限以外は、参考データとしてRakuten UN-LIMIT VIの料金も記載されている。

●MVNOスマホ:価格は横ばい

 MNOのスマホにおいて価格が低下する傾向にある一方で、東京のトップシェアMVNOにおける料金は横ばい傾向が続いている。平成26年度は「中位の水準」に収まっていた料金が、他の都市で値下げされたことなどにより、今年度はどの容量でも「高い水準」となっている。

 ただ、今回比較対象となったIIJでは4月1日から「ギガプラン」の提供を開始しており、新料金を適用すると「中位の水準」に収まる。

●FTTHサービス:容量当たりの単価は最安値

 FTTHサービスの料金比較では、原則として最大100Mbps(理論値)のプランについて、回線使用料、宅内設備レンタル料、ISP代を合算した金額を対象としている。ただし、都市によっては100Mbpsのサービスが設定されていない(新規申し込みを受け付けていない)ケースもあるため、その場合は100Mbpsに一番近い容量のプランで比較を行っている。

 月額料金だけを見ると、東京のFTTHサービスは集合住宅向けで「中位の水準」、戸建て向けで「高い水準」……なのだが、通信速度(1Mbps)当たりの料金を求めると集合住宅、戸建て共に他の5都市よりも安価である。簡単にいえば絶対額は高いが、速度を考慮すると手頃であると言う状況だ。

●通信品質やエリアカバーを考慮しない調査は意味があるのか?

 調査の概要でも触れた通り、この調査では通信品質やエリアカバーは考慮されていない。そのため、比較対象の都市の通信料金が安い(高い)理由までは分からない。

 調査の手間が増えることは承知だが、通信料金だけではなく通信品質やエリアカバーまで調べないと、東京(日本)の通信料金が“本当に”高い(安い)のか判断できない。総務省は価格だけではない複合的な通信環境の実態調査を実施するべきではないだろうか。