ソフトバンクが6月1日、法人事業に関する説明会を実施。同社が現在力を入れている法人事業に関する今後の方針と、最新の取り組みについて説明した。

●3兆円の通信から100兆円規模のデジタル化へシフト

 代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「わが社はBeyond Carrier、Beyond Japanでキャリアを超えると説明してきたが、それを担っているのが法人事業」と話す。

 宮川氏によると、従来のソフトバンクの法人事業は、固定電話やスマートフォンなど通信関連の事業が中心だったが、この市場は3兆円規模の中で、NTTやKDDIとシェアを奪い合うレッドオーシャンになっていたとのこと。そこで2030年には100兆円規模になるというブルーオーシャンを目指し、企業のデジタル化を推進するソリューション事業へとシフトするというのが法人事業の戦略の軸になっている。

 デジタル化の流れが加速する中、同社にとって強みとなっているのが顧客接点の豊富さだと宮川氏は説明する。ソフトバンクの携帯電話事業に加え「Yahoo! Japan」と「PayPay」、そして新たに「LINE」がグループに加わったことで、B2B2Cのソリューション提案ができる体制が整えられた。

 そして同社が法人事業を展開する上で重視なポイントとなっているのは、官民のデータを連携する基盤を構築することだという。独立している個々のデータを1つの基盤で一元化することで、あらゆる分野のデジタル化ソリューションを提案できる「都市OS」の実現に向けた取り組みをソフトバンクでは進めているという。

 そうしたデータを活用し、社会課題を解決する策として、宮川氏は「デジタルツイン」を上げる。デジタルツインは現実世界のデータを仮想空間に取り込み、AI技術などを活用してシミュレーションした結果を現実社会に反映させることで効率化を図る技術だが、こうした技術の実現には、社会全体で提供される情報を相互に連携し合うことが重要になってくるとしている。

 宮川氏はBeyond Japan戦略の下、日本で培ったソリューションを海外で展開していきたい考えも示す。一連の取り組みによって、法人事業を現在のコンシューマー事業に続く第2の柱へと成長させ、「日本をDX(デジタルトランスフォーメーション)先進国にする」と強い意欲を示している。

●豊富な顧客接点が強み、個人情報問題を抱えるLINEの活用は

 代表取締役副社長執行役員兼COOの今井康之氏は、法人事業におけるソフトバンクの強みを説明した。同社の法人事業は2004年に買収した日本テレコムがベースとなっているが、買収当時は赤字だった事業を、約14年で1000億円の利益を出す事業へと成長させている。

 ただその成長は必ずしも右肩上がりではなく、2015年に4社が合併して現在のソフトバンクが生まれた際に一度落ち込んでいる。そこから再び成長軌道に乗せることができたのは、2017年に「デジタルトランスメーション本部」を設立し、ビジネスモデルの転換を図ったことが大きいと今井氏は話す。

 それまでソフトバンクの法人事業はスマートフォンなどを単体で販売していたが、デジタルトランスフォーメーション本部の設立を機にコンサルティングができる人材や、個々の業界に強い人材を増やして業界特化型のソリューション提案ができる体制を整え、通信をベースにさまざまなデジタル化のソリューションを提案するビジネスへと方向転換を図ったのだそうだ。

 その結果、クラウドサービスは2018年からの3年で1.9倍、IoT関連は7.3倍、セキュリティは5.2倍と売上高を大きく伸ばしており、「売上を伸ばしたのはコロナ禍でテレワークが増えたからと思われがちだが、それ以前から非常に大きく伸ばしている」と今井氏は話す。そうしたことから今井氏は、現在同社が目標に掲げている、2022年に法人事業の営業利益を1500億円にするという目標についても「オンスケで達成できる」と強い自信を示している。

 今井氏は、ソリューション事業を拡大する上で重要なのはデータだと話す。「いま日本はデータ活用において先進国とは全く呼べない」と今井氏は厳しく指摘しており、ソフトバンクは現状を打開して日本をデジタル化の先進国にする役割を担っていきたいと話している。ソフトバンクはクラウドを一元的に提供する仕組みを整えることで、データを活用したマーケティングや自動化などによるデジタル化のソリューション導入を促進し、企業からの支持を得ているとのことだ。

 さらに今井氏は宮川氏同様、ソフトバンクの今後の強みが豊富な顧客接点を生かした「B2B2C」にあると説明。豊富な顧客接点を生かした集客モデルの構築を進めているそうで、セブン-イレブン・ジャパンのアプリとPayPayの連携施策で、1カ月のうちに350万超の利用者がサービス連携を実施したことがその象徴になるとしている。

 ただ顧客接点に関しては、LINEの個人情報が一部中国で閲覧できる状態にあるなどの問題が指摘され、大きな問題として取り沙汰された経緯がある。この点について今井氏は、LINEのデータを2021年9月までに日本のサーバに移すと説明。その上で「個人情報を扱う企業とのタイアップは変わることなく進めていきたい」と話し、細心の注意を払いながらもLINEを活用した事業には力を入れていく方針を示している。

●「5Gコンソーシアム」で5Gの社会実装を拡大

 常務執行役員法人事業副統括(エンタープライズ/マーケティング担当)の藤長国浩氏は、企業や社会のデジタル化を推進する新たな取り組みについて説明した。中でも新たな取り組みとして打ち出すのが、ヘルスケア分野のデジタル化ソリューション「HELPO」に関する取り組みだ。

 HELPOは2020年7月より提供されている、チャット形式で健康相談ができるスマートフォンアプリで、従業員や住民に健康相談サービスを提供したい企業や自治体に向けて提供されている。そのHELPOを今回、MICINという企業との協業でオンライン診療や服薬指導への対応を進め、健康相談からオンライン診療までをワンストップで提供できる仕組みを整えたとのことで、これを通院の困難さや医師の過重労働など、医療業界が抱える課題解決に結び付けたいとしている。

 そしてもう1つ、新たに発表されたのが「5Gコンソーシアム」である。ソフトバンクは2021年中に5Gのスタンドアロン運用を開始し、2022年度中には「プライベート5G」を展開予定であるなど、企業の5G活用に向けた環境整備が進みつつあることから、さまざまな業界の課題を解決する5Gソリューションの実証実験に取り組み社会実装を推し進めるべく、5Gコンソーシアムの設立に至ったと藤長氏は話す。

 ソフトバンクは2019年より法人パートナープログラムの「ONE SHIP」を展開し、500社のパートナー企業が参加しているというが、5GコンソーシアムはそのONE SHIP会員に加え、5Gに関心を持つ新規会員から参加を募って設立。医療や製造業などさまざまな分野の外部専門家が参加するワーキンググループで議論を進め、社会実装可能な5Gソリューションの実証実験に積極的に取り組んでいる。

 ちなみにソフトバンクは、大阪に5Gビジネスを共創するための場として「5G X LAB OSAKA」を設立しているが、こうしたラボと5Gコンソーシアムが一体となった取り組みも今後進めていく方針とのことだ。