KDDIは、フードデリバリー事業を展開するmenu(メニュー)と資本業務提携。KDDIがmenuの発行する株式を取得し、持分法適用関連会社化した。出資額は50億円で、株式の20%を取得することになる。6月2日開催したオンラインで説明会で、両者が出資の狙いを語った。

●フードデリバリーは「アフターコロナでも伸びる市場」

 KDDIの多田氏は、資本業務提携によってmenuがau経済圏とどう結び付くのかを説明した。

 KDDIは通信サービスで3000万超、auスマートパスで1500万超、au PAYで3200万超の会員を抱えている。これらの会員は、eコマースやauでんき、auの各種金融サービス、リアル店舗やネットでau PAYを利用することでau経済圏を形作っている。また、2020年5月から、auのポイントは1億超の会員基盤を持つPontaポイントに変更され、ポイントサービスの魅力も高まっている。

 中でもauスマートパスは、有料のサブスクリプションとしては国内最大級の会員基盤で「他社にはない強み」と多田氏。au経済圏を利用してもらうため、会員向けに各種特典を提供している。例えば、Pontaポイントをau PAYマーケットなどで使える限定ポイントに交換すると、ポイントの価値が1.5倍になる。この「ポイント交換所」を利用した会員は「その後、au経済圏のサービスやPonta経済圏のサービスをau PAYで、高頻度かつ選択的に使うという循環サイクルに入ることが確認できている」(多田氏)。

 とはいえ、au経済圏に入ってもらうためには魅力的なサービスが必要だ。これまではau PAYで大規模なポイント還元キャンペーンを展開して利用を増やしているが、当然「これは特殊なシチュエーション」(多田氏)。何をしたい、何を買おうという起点(KDDIは「ファーストワンマイル」と表現)が重要だと、KDDI側も認識している。

 そこで選んだのが飲食だ。なぜなら「コロナ禍を問わず、最も頻度の高い日常的なコト消費。市場規模も大きく、週1回以上外食する人も多い」(多田氏)からだという。

 飲食業界はコロナ禍でダメージを受けた業界だが、フードデリバリーの需要は高まっている。海外ではコロナ禍以前からフードデリバリーの利用が盛んだったが、日本ではコロナ禍でその良さが再認識された。飲食店舗にとっては新たな収益機会になることから、参入意欲も高まっているという。「アフターコロナ、ニューノーマル時代でも伸びる市場」との認識で、「KDDIとしても貢献したい、フードデリバリーをもっと身近なものにしたいということでmenuと資本業務提携した」(多田氏)

●事業の比率は「ほぼデリバリー」

 menuはもともと、テークアウトサービスとして2019年4月にリリースされた。半年後、Uber Eatsをはじめとしたフードデリバリーの盛り上がりに応じる形で、この市場への参入を決めていたが、コロナ禍の影響で、2020年4月のデリバリーサービス開始当初から事業が急速に伸長。現在、menuアプリを介してデリバリーもテークアウトもオーダーできるが、事業の比率は「ほぼデリバリー」(menuの渡邉氏)だという。

 コロナ禍において、加盟店店舗数や登録配達員数、アプリダウンロード数は大きく伸びている。申込店舗数は2020年4月から6月に大きく伸びたが、「この1年でさらに2倍に増えた」(渡邉氏)。

 サービス提供エリアの拡大にも努め、2021年6月現在、47都道府県でサービス展開しいている。加盟店舗数は6万件、「登録している配達員の数も業界上位との認識」と渡邉氏は胸を張る。

 2021年に入ってからは、プロモーションも積極的に展開し、購入回数の増加につながっている。特に4月、5月で注文数が急増しているのは、マンガ「ONE PIECE」のキャラクターが登場するCMの影響が大きいという。

 ONE PIECEとのコラボはCMだけでない。デリバリーの注文をすると挑戦できるガチャガチャで、ONE PIECEのキャラクターを使ったオリジナルのシールや缶バッジがもらえる取り組みを展開している。アプリに搭載されたガチャガチャは、menu特有の機能の1つ。menuの親会社であるレアゾン・ホールディングスはベンチャーながら複数の事業を展開しており、その1つにスマホゲーム事業がある。「(親会社の)ゲーム開発のナレッジを生かし、アプリとしての楽しさを追求していこうと考えている」(渡邉氏)

 また、加盟店舗には予約の取れない有名店や、行列のできる人気店もそろえる。アプリ内の「至高の銘店」特集には、ミシュランで星を獲得している店舗や、menu独占の店舗もあるという。チェーン展開している企業も拡充している最中で、「KDDIとの連携によって促進していきたい」と渡邉氏は語った。

 さらに、注文の需給予測に基づいた配達報酬のダイナミックプライシングや、店舗検索のロジックを自社で開発するなど、データを活用したmenuの独自AIによる最適化も行っている。「この領域はロジックとともにデータ量が競争力に直結するので、今回の提携がさらなる競争力につながると期待している」(渡邉氏)

 KDDIと協力することで、今後も事業拡大を加速していく。目標については明らかにしなかったが、「少なくとも、業界トップシェアの店舗数にはしていこうと考えている」(渡邉氏)と意気込んだ。

●店舗拡大、ID連携でユーザーの好みに合わせた提案も

 KDDI側は、menuとの提携によって、店舗ラインアップの拡大と、ID連携によるシームレスなサービス利用の取り組みを説明した。

 au PAYの加盟店は400万カ所に広がったが、飲食、個店の開拓はコロナ禍の影響で進め切れていないという。一方、menuには6万店舗の申し込みがあるが、業界トップにキャッチアップしていこうとしている今、「両社が店舗拡大に向けて協調してやっていく意義は大きい」(多田氏)。

 ID連携については、両社がID連携することで、デリバリーで注文したものと店内飲食したものを結び付けて情報を管理できるようになり、ユーザーの嗜好(しこう)に合わせたオファーができるようになるという。

 また、ID連携のマーケティングは他業界へも応用できるとする。「例えば、小売り店舗で人気のスイーツが、来店購入、デリバリー購入されたというデータが蓄積されれば、訴求ターゲットが明確化できてマーケティングアプローチをかけることが可能になる」(多田氏)。飲食店側の情報に基づいてプライベートブランド商品を開発したり、開発商品のターゲットユーザーを明確にしたりできるようになり、横断的なマーケティングが可能になると期待する。

 このID連携によるマーケティングの取り組みが、両社が資本業務提携する大きな理由になったという。日本にはさまざまなフードデリバリーサービスが参入しているが、その中から提携先としてmenuを選んだ理由として、「IDを連携してマーケティングデータを取得し、活用するような深い取り組みは、海外の企業とはできないと判断した」と多田氏は説明した。

 互いのアプリを使った相互送客の取り組みも早速行う。au PAYアプリ内に、おすすめサービスとしてmenuのアイコンを配置。ミニアプリによって、menuのサービスにシームレスにつながる状態にする。一方、nemuの支払いは現在クレジット決済だが、7月中旬にはau PAYの残高から支払いができるようにする。

 今回の提携を記念して、auスマートパスプレミアム会員を対象にmenuの利用料金が最大4000円割引となるキャンペーンを実施する。menuのau PAY対応に合わせて、au PAYの支払いでPontaポイントの還元ポイントが増量されるキャンペーンも実施する予定だ。