楽天グループが11月11日、2021年度第3四半期決算説明会を開催した。売上収益は前年同期比で12.6%増となる4069億円となったものの、基地局建設などモバイル事業への継続的な投資の結果、前四半期に続き営業損失を計上。Non-GAAP営業利益は577億円の赤字となった。なお、IFRS(国際会計基準)に基づく計算では75億円の赤字。

 三木谷浩史社長氏は、「驚異的なスピードで4G、5Gの基地局を建設しており、国内の4G人口カバー率は2022年3月末までに96%に到達する。基地局整備が進むことで顧客獲得も加速する」と自信を見せた。

 モバイル事業には3つの目的があると語る。モバイル事業の収益化、楽天エコシステムへの貢献、Rakuten Communications Platform(RCP)をグローバルに販売することの3つだ。RCPの販売については、ドイツの通信事業者1&1社がRCPを包括採用することが決まっている。獲得可能なOpen RANの市場規模は2025年に15兆円に達するとし、「われわれは業界のフロントランナー」と胸を張った。

 RCPやOpen RANソフトウェア、アルティオスターなど、通信に関連するプロダクトやサービスを集約し、事業組織としたのが楽天シンフォニーだ。RCPは楽天モバイルによって安定的に運営できることが証明されているとし、「既に契約が終わって実行しているプロジェクトのサイズも数千億円になってきている。重要なインフラであるネットワークビジネスの根幹を、日本初の楽天シンフォニーという会社が取りにいく」と意気込む。

 なお、1&1社のようにエンド・ツー・エンドで全てを楽天シンフォニーが引き受ける形もあれば、基地局のソフトウェアだけ、あるいは開発した基地局のハードウェアを売るなど、さまざまなビジネスモデルが考えられるとして5いる。

●収益の改善は2022年第2四半期以降

 楽天モバイルの山田善久社長は、「通信ネットワークの整備は急ピッチで進捗(しんちょく)しており、9月時点で稼働している4G基地局数は3万超、半導体の納品を待って完工となる基地局が約1万局。速やかな基地局展開を見込んでおり、4Gの人口カバー率は目標としていた96%を来春にも達成する見通し」と語った。

 当初予定していた2021年夏頃の人口カバー率96%達成は先送りとなったものの、総務省に提出した開設計画と比較して約4年の前倒しとなる。

 また、自社回線整備の進捗に従い、KDDIのローミングサービスからの切り替えが進んでいる。基準カバレッジに対していない8県を除き、10月1日以降、各都道府県の対象地域で楽天回線への移行が進んでいる。

 また今回、楽天モバイルの契約数が公表された。2021年9月時点でMNOの契約数は411万、MVNO契約数は99万、計510万となっている。「4月に1年無料キャンペーン申し込み期間が終了して以降も堅調に増加が続いている」(山田氏)

 売上面では、MVNOユーザーが、3カ月無料となるRakuten UN-LIMIT VIに移行するという減収要因があったものの、MNOサービスで1年間無料キャンペーンが終了したことによって、課金対象ユーザーの増加という増収要因が上回り、売上高は前年同期比で21.1%増加。一方、楽天回線エリアの積極的な拡大によってネットワーク関連費用が引き続き増加し、営業損失は前年同期比でマイナス438億円となった。

 2022年4月にも予定しているローミングサービス切り替えによるローミング費用の削減や、課金対象ユーザーの増加により、2022年第2四半期以降、収益の改善を見込んでいるという。

●「楽天シンフォニーの未来は明るい」

 楽天シンフォニーのCEO、タレック・アミン氏はまず、モバイルネットワークを分析する英Opensignalの調査で、楽天モバイルが、5Gのダウンロード速度、アップロード速度双方でグローバルリーダーに選出されたことを紹介。RCPの優秀さをアピールした。

 「楽天シンフォニーの始動とともに、モバイル事業は第2フェーズに入る」とし、「テクノロジーとビジネスモデル双方において高い透明性を確保し、顧客と真のパートナーシップを築く」と述べた。

 また、10月下旬に開催されたMWC Los Angeles 2021において発表した、Open RANと従来のRANに対応するプラットフォーム「Symware」を紹介した。アプリストアのような、通信事業者向けのアプリケーション提供方法も発表。「Madina」と名付けられ、ネットワークのスムーズかつ自動的な展開を実現するとした。

 ドイツの1&1とOpen RAN、仮想化を採用したネットワーク構築を進めている他、テレフォニカともOpen RAN時代に合わせて通信ネットワークを変革させるべく、密に連携しているという。

 アミン氏は「楽天シンフォニーには現在、世界中の通信事業者から100を超える引き合いがある。楽天シンフォニーの未来は明るい。楽天シンフォニーのソリューションは、5Gへ移行する通信事業者にとっても明るい未来を提供できる」とした。

●「povo 2.0の影響はほぼない」「2023年の単月黒字は十分可能」

 決算説明のプレゼンテーション後には、質疑応答が行われた。主な質問と回答は以下の通りだ。

―― KDDIの決算説明会で、高橋社長は「楽天モバイルにユーザーが流れるのを阻止するために、基本料金0円のpovoを始めた」と言っていた。povoが始まったことによって、どんな影響を受けたのか。

山田氏 多少、数字に反映されているとは感じている。ただ、他社からユーザーが入ってきている。全体感としては、すごく大きな影響という感じではない。

三木谷氏 去年(2020年)の同時期に比べて、(単月で)2倍ぐらいの新規申し込みがある。povo2.0 については、ほぼ影響はないと思っている。MNP数が増えてきているという実感がある。

―― 黒字化の見通し時期を2023年中としていた。今の進捗をどう見ているのか。

三木谷氏 基本的に、自社ネットワークの方が(ユーザーの)エクスペリエンス(体験価値)が高い。データの使用量も2倍くらい違う。自社ネットワークが来年(2022年)3月末時点で(人口カバー率)96%を超えてくると、エクスペリエンスもどんどん上がってくると思う。新規申し込みがこの伸びを続け、自社ネットワークに変えれば、データの使用量も上がり、ARPUも上がっていく。さまざまなバンドルサービスもだいぶ上がってきているので、ARPUの上昇と新規加入者、また楽天シンフォニーでも3000億円ほどの契約が取れており、今後、1000億円単位で増えていくと思っている。それらを勘案すれば、 2023年の単月黒字と申し上げているが、その実現は十分可能であると思っている。

―― 日本郵政グループとの連携で、物流以外の連携について、目指す姿や進捗があれば教えてほしい。

三木谷氏 案件については順調に進んでいる。それ以外にも、今後、楽天モバイルが提供するIoTも含めたさまざまな取り組みを一緒に検討させていただいている。本当にいいシナジーじゃないかと思っている。

―― 今期、iPhoneの取り扱いがあった。価格の面で他社と比べて非常に特徴的で、Appleと同等の価格で提供している。こういった施策はどういう影響を与えているのか。

三木谷氏 iPhoneの価格(を安くできたことについては)については、やはり楽天エコシステムによる売り上げがかなり上がってくるから。楽天モバイルに入ることによって、他のサービスを(非契約者より)20%、30%も多く使っていただける。Eコマースもそうだし、カードや楽天銀行も含めて、極めてシナジーがうまくいっている。多様な売り上げを上げるベースがあることが、端末の戦略において多少アグレッシブに行ける大きなポイントだと思う。

―― 来春、4G人口カバー率96%のカバー率を達成し、KDDIにローミングの費用を払わなくなったときに、新規契約獲得のために、大きなマーケティングキャンペーンなど、何か手を打つのか。

三木谷氏 絶対ではないが、大掛かりなマーケティングキャンペーンを、モバイルについてやる予定はない。新規加入者については健全な自然の成長が見られる。対前年で新規申し込み2倍になる月があり、それを3倍にはしたいと思っている。こういった継続的な成長がわれわれにとって重要だと思っている。