「iPhone 13」シリーズへの買い替えで、iPhone 13と「iPhone 13 Pro」の買うべきか悩む人は多いのではないだろうか。

 iPhoneで「Pro」が初めて付いた「iPhone 11 Pro」のときは高性能かつスマートなモデルだったが、今回のiPhone 13 Proでは業務用といった意味の「プロ」モデルの意味合いが強くなり、かなり重量感のあるモデルとなったことで迷っている人もいるだろう。

 また、近年のスマホ市場は割引規制の影響もあり、予算本体価格10万円前後、下取りなど含めても高額な出費になるだけに失敗は避けたいところだ。

 そこでこの記事では、iPhone 13 Proの利点と欠点を自腹で買った筆者が本音で解説し、2021年はiPhone 13とiPhone 13 Proのどちらを買うべきかを紹介していく。

●iPhone 13 Proと通常のiPhone 13の違いをチェック

 まずはiPhone 13 ProとiPhone 13の違いをざっと見ていこう。

 大まかに言えば、iPhone 13 Proは従来モデルからカメラの撮影範囲や撮影性能が向上し、ゲーミング用途向けの機能も若干強化された。だが、これらの機能強化の代償として6.1型ディスプレイのiPhoneとしては最大となる203gの重量や、カメラがかなり飛び出た形状など不満となる部分も増えている。

iPhone 13 ProとiPhone 13の主な違い

・◎3倍望遠カメラ

・○センサーサイズがやや大きい

・○マクロ撮影

・○Apple ProRewとApple ProResHQ422撮影に対応

・○ディスプレイが120Hz駆動に対応

・○GPUが5コア、メモリが6GB(13は4コア、4GB)

・×重量203gと6.1型iPhoneで一番重い。13と比べ30g増

・×カメラ部がかなり大きく、約3.7mmも出っ張っている

 先に評価を述べておくと、iPhone 13 Proはカメラ機能にこだわる人やガジェット好き、業務で小型の高性能カメラが欲しい人にとってはベストなモデルだ。だが、そこまで突き抜けたがゆえに、一般の「少しいいiPhone」が欲しい人には不便な重量や形状になっている。カメラを中心とした最新ガジェットとしては評価できるのだが、普段使いのスマートフォンとしては評価しづらい、かなり人を選ぶモデルという印象だ。

 以下は、ここ最近の従来モデルと比較した画面サイズや重量の比較となる。iPhone 13の優等生感に対し、iPhone 13 Proの突出した重さが分かるだろう。

●iPhone 13 Proのカメラは大型化で撮影範囲も拡大、だが重さなどのマイナス部分も

 個別の要素についてもう少し詳しく見ていこう。まずは、カメラとデザインや重量周りからだ。

 カメラ周りでiPhone 13との最大の違いは、3倍の望遠カメラ(77mm相当)と超広角カメラのマクロ撮影への対応だ。やや遠くの風景を切り取る撮影から、最短約2cmで寄れるなど撮影の幅は大きく広がった。旅行はもちろん、荷物を抑えたい登山やトレッキングで気軽に絶景撮影を楽しむ人にとっては、スマートフォンサイズで撮影範囲を追求したこのカメラは非常に魅力的だ。とにかくカメラ機能だけを重視する人なら、少々重いことなど気にならないだろう。

 望遠は従来の2倍(52mm相当)から3倍(77mm相当)になったことで、ポートレートや風景撮影で使いやすくなった。一方、手元や室内の撮影には使いづらそうに見えるが、実際に使うと広角カメラのセンサー性能の向上と超解像処理により、2倍デジタルズームもかなり高品質だ。撮っている際もズーム倍率の変更や、最短撮影距離に合わせたマクロ撮影とのスムーズな切り替わりを含め、カメラやレンズ性能と「コンピュテーショナルフォトグラフィー」の両方を進化させることで、とにかく利用者に不自由さを感じさせにくいカメラへと進化している。

 動画でもポートレート撮影のような背景ぼかしの撮影や編集を利用できるシネマティックモードは、iPhone 13とiPhone 13 Proのどちらでも利用可能だ。インカメラでも撮影可能だ。この機能、YouTuberなどのVlog用途やショートムービー作成で役に立つだろう。この機能の進化の方向性として、PCの動画編集アプリで作業するような人物の顔だけをぼかすといった作業の自動化も欲しかったが、将来のモデルでの対応に期待したいところだ。

 一方で、そこまでカメラにこだわらない人、望遠レンズが必要な人は無理にiPhone 13 Proを選ぶ必要はない。標準の広角レンズでの比較になるが、iPhone 13 Proは確かにレンズが明るくセンサーの画素ピッチが大きくなっているが、iPhone 13も画素ピッチは前機種のフラグシップモデルiPhone 12 Pro Maxと同等に大型化している。

 画質の満足度だけで言えば前機種iPhone 12シリーズやさらに前のiPhone 11でも十分高品質だ。並べて比べれば、やや暗いシーンでiPhone 13シリーズの方は若干階調がやや豊かなのと、ナイトモードも撮影秒数が1秒ほど早いといった違いには気付く。だが、カメラにこだわらない人ならどの製品でも不満を感じることはほぼないだろう。

 だが、iPhone 13の高級モデルとして、見栄えの少し違うトリプルカメラのiPhone 13 Proを求める人にとっては、カメラ部分が極端に大型化し重量が30gも増したiPhone 13 Proを好意的に受け取れないだろう。重たい分、片手持ちでの操作や、就寝前に本体を持って画面を見るといった用途にあまり向かない。店頭などで短時間操作するぶんにはあまり気付かないだが、リラックスした状態で従来モデルとの差が顕著に出る。

 カメラの出っ張りも約3.7mmと、iPhone 13やiPhone 12シリーズと辺りと比べてほぼ倍の厚みだ。こうなると、大きく厚いカメラ部に合わせて大柄な保護ケースが必要になる。

 iPhone 13 Proのカメラに魅力を感じる人は、むしろ大柄な保護ケースを着けて持ち歩きたいだろう。ストラップやリング付きの耐衝撃ケースが欲しいぐらいだ。だが、スリムで高性能なiPhoneが欲しかった人にとっては、やや太めのケースにも不満を感じるだろう。

●映画も撮れる? 注目のApple ProRes撮影をチェック

 今回iPhone 13 Proシリーズだけがレンズとセンサーをより強化した理由として、専用機能のApple ProRes撮影やApple RAW撮影で編集や現像にある程度耐える、実用的なデータの記録の実現も念頭にあったと思われる。室内や少々薄暗い場所で撮ったデータを編集した際に、すぐに階調の破綻やノイズが目立つようでは使えないのと同じだからだ。

 新機能のApple ProRes撮影を簡単に説明すると、プロの映像制作業務や本格アマチュアの映像制作などで広く使われる、Appleの低圧縮コーデックだ。記録される情報量が多い分、解像感や色の再現性がやや高くなり、編集しても階調が破綻しにくい。その代わりに、記録される容量は通常のHEVCやH.264と比べてはるかに増える。標準カメラアプリで使うには、「設定」→「カメラ」→「フォーマット」から有効化のボタンを追加する。

 映像業務に関わる人やこれから映像編集を学びたい人にとっては、iPhone 13 Proを1台買うだけで3種類のレンズ付きのProRes対応機器が手に入るのは魅力的だ。10万円ちょっとで、ProRes 422 HQで不可逆圧縮のイントラフレーム4:2:2 10bitの映像データを撮影できる機器を手に入れるのは難しいからだ。そしてAppleはタイミングよく、10月にProResの編集処理を支援できるM1 Pro搭載MacBook Proも投入したというわけだ。

 だが、一般の人がProResを使う利点はない。そもそも1分のフルHDで約1.7GB、4Kで約6GBと保存容量が非常に大きく、長時間の動画を撮るとストレージがすぐ満杯になる。用途もFinal Cut Pro やAdobe Premiere、DaVinci ResolveなどMacやPC向けの映像制作や編集がメインだ。画質も、iPhoneで撮って見るだけなら通常の撮影より微妙に解像感が高く見える程度の違いしかない。

 実際のProResでの撮影は、「FiLMiC Pro」など他社のマニュアルビデオカメラアプリを使うのがメインになるだろう。ProRes 422 HQの他、圧縮率を高めた422やLT、Proxyでも撮影できる。解像度とフレームレートは、フルHD 30/60に対応。iPhone 13 Pro の256GBモデル以上のみ4K 24/30でも撮影できる。色域はRec.709とRec.2020の HLGを選択可能だ。

 PCやMacへの転送はUSB2.0のLightningケーブルやAirDropなどを利用する。1GBのデータで計測したところ、WindowsへのLightningケーブルで29秒、MacBook Air相手のAirDropで32秒だった。ProResの用途は長時間の記録撮影ではなく、数十秒から数分のカットを撮り重ねるムービー制作用途向けだ。また、422HQではなく422や3分の2程度まで容量を抑えられる。いくつか撮影したデータを、休憩時間中ぐらいでおおむね転送できるだろう。もちろん、USB3.1などでの高速転送対応や、直接SSDに記録できればベストなのだが。

●ゲーム向け高速処理と120Hz表示対応だが、120Hz対応タイトル不足

 iPhone 13 Proのみの機能として、ディスプレイの最大リフレッシュレート120Hz表示に対応し、GPUコアも1コアだけだがiPhone 13から増えた。これにより、A15 Bionicの性能だけでなくディスプレイの面でも近年のトレンドをキャッチアップした格好だ。

 A15 Bionicは現行スマートフォンの中でもトップクラスの性能。CPUとGPUともに隙がなく、iPhone 13でもiPhone 13 Proでも現行のスマホ向け高画質ゲームタイトルは難なく動作する。

 ゲーミング用途の最大リフレッシュレート120Hz表示は、3Dグラフィックのバトルロイヤル系ゲームで注目の機能だ。120fpsや90fpsの高fps表示だと、周りを見渡す際にチラツキが減って標的を視認しやすくなるほか、移動しながら標的に銃の照準を合わせ続けるなど繊細な操作で違いが出る。このため、人気ゲームアプリが120fpsや90fpsで動くスマートフォンは、勝てるゲーミングスマホとして人気を集めている。

 なお、通常のアプリのスクロールもやや滑らかになる。だが、画面が小さく画面全体を大きくスクロールすることの多いスマートフォンだと、実用アプリで120Hzの利点は少ない。PCやiPadなど大画面の機器は別だが、スマートフォンの120Hz表示はゲーミング用途が主と考えていい。

 だが問題点として、ゲームアプリの120fpsや90fps表示設定を各社スマートフォンで有効にするかどうかを決めるのはゲームメーカー側だ。そして、人気ゲームアプリは提携するスマートフォンメーカーに対して限定、または優先的に120fpsや90fps表示対応を提供する取り組みが増えている。「PUBG Mobile」もいくつかのゲーミングスマホでは90fps表示に対応するが、現在のiPhone 13 Proは90fps設定が用意されていない。

 このため、iPhone 13 Proが120Hz対応で高速なA15 Bionic搭載でも、すぐに人気アプリが120fpsや90fps表示で遊べるわけではない。iPhone 13 Proで人気ゲームの120fpsや90fpsといった表示が提供されるかは、App Storeも運営するApple側とゲームメーカー側の動きが重要となる。

 ちなみに、2021年11月前半時点で「原神」が120fps対応した。だが、もともと60fpsでも高い処理性能を求められるタイトルなので、iPhone 13 Proで120fpsを有効にすると、かなり発熱して常用は難しい。120fps対応はiPhone 13 Proよりも処理性能の高い、M1搭載のiPad Pro向けと考えた方がいい。

 あと120Hzで期待したいのは、「メタバース」といったワードでも注目されているVRアプリの対応だ。現在のiPhoneのVR対応アプリは、市販の簡易ゴーグルを装着するものが多いのだが、この表示部分が120fps表示だと映像が滑らかになり快適さが増す。VRの分野は今後また力を入れる企業が増えるかもしれないだけに、120Hzディスプレイの活用も期待したいところだ。

●カメラ好きにはベスト! だが日常の使い勝手重視の人には向かない

 今回のiPhone 13 Proだが、冒頭の通りカメラ好きやガジェット好き、YouTuberの撮影や、サービス開発や提供に活用する「プロ」ユーザーのカメラ機材としては非常に魅力的なモデルだ。高いカメラ性能とたまに使う機能をコンパクトにまとめており、重たさや扱いにくさといった不満点はある程度無視できる。

 だが、一般の人が普段使いに便利なスマートフォンを選ぶ場合は、iPhone 13やiPhone 13 miniを選ぶのが無難だ。普段のカメラ撮影品質やゲームなどの処理性能ともにほぼ違いはない。前のiPhone 12 Proは高級なiPhone 12として選べる部類にあったが、今回のiPhone 13 Proは普段使いの便利さを求める人にとってかなりハードルの高いモデルとなっている。

 どうしても望遠カメラが欲しいなら、外付けのスマートフォン用iPhone用望遠レンズや、スマホ対応に双眼鏡や単眼鏡を取り付けて撮影する手もある。iPhone 13の仕様のまま望遠カメラを搭載したPro未満のトリプルカメラiPhoneがあればよかったのだが、ないものは仕方がない。

 別の案として、iPhone 13シリーズに納得がいかないなら2021年は買い替えを見送るのも手だ。毎年iPhoneの新製品が出ているが、サイズ感などは微妙にずらしているので2022年のモデルは気に入る製品が出るかもしれない。それまでは、目先を変えてiPhone 13と同じA15 Bionic搭載のiPad miniや高性能なiPad Pro、特価販売も注目のiPhone SEやiPhone 12 miniなどに購入予算を回すのも1つの手だ。新しいiPhoneに買い替える動機のうち、処理性能の面に関しては解消できるだろう。