2020年12月に予告されていたドコモの「エコノミーMVNO」が、ついに始動した。10月からはNTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEが、ドコモショップでの契約に対応。12月にはフリービットグループのトーンモバイルも、「トーンモバイル for docomo」の提供を開始する。エコノミーMVNOは、あくまでドコモとは別会社のMVNOが展開するサービスだが、あたかもドコモのいち料金プランのように契約できるのが特徴。MVNOにとっては、ドコモショップを活用して販売やサポート体制を強化できるのが魅力だ。

 ドコモにとっては低容量のユーザーが他社に流出するのを防げるのがメリットといえる。MVNO回線ではあるが、ドコモは接続料という形で間接的に収益を上げられるうえに、エコノミーMVNOとはdポイントを通じた連携もしているため、ドコモの経済圏の中にとどめておくことができる。大容量を担う「ギガホプレミア」や、中容量に特化した「ahamo」に加え、エコノミーMVNOがそろったことで、料金プランのピースが埋まった格好だ。

 一方で、他社はサブブランドやオンライン専用ブランドを活用しつつ、低容量の料金プランを自ら展開している。ここに対抗するのがエコノミーMVNOの役割だが、収益性については疑問符もつく。ユーザーから直接料金を支払ってもらえなくなるからだ。参画するMVNOが増えてきた際に、MVNO同士やドコモとの差別化をどうするのかも、気になるところだ。こうした疑問を、ドコモでエコノミーMVNOを担当する営業本部 営業戦略部 モバイル事業戦略担当部長の蓑手康史氏にぶつけた。

●当初は多少の混乱があったが、反響は大きい

―― 既にOCN モバイル ONEの取り扱いは始まっていますが、実際に始めてみていかがでしたか。

蓑手氏 10月21日に取り扱いを開始しましたが、反響が大きいと感じています。ドコモショップにおいて他社のシステムを使いながら手続きをするので、当初は多少の混乱があり、受付の時間がかかるという声は上がっていましたが、その辺は改善しながら進めています。料金をご説明すると、安いプランがあるということでお乗り換えいただけています。

 一方で、全国的な認知はまだまだこれからです。ドコモでできることと、MVNO各社でできることがありますが、それぞれでプロモーションを考えていきながら、全体を盛り上げていければと考えています。

―― 確かに、テレビCMのような大規模なプロモーションをしている様子がないように見えます。

蓑手氏 11月から地方紙に広告を出したり、ラジオなどでも露出を増やしたりしています。店頭ツールはやりますし、ダイレクトメールも11月下旬からやっていきます。来月(12月)ぐらいには、さらに露出を上げるための仕掛けをしていく予定です。

―― それは、フリービットのサービス開始を待ってからということでしょうか。

蓑手氏 待ってというより、もともと12月に提供予定ということで一緒に準備をしていました。それぞれの準備が整った段階で開始していきます。テレビCMなどは準備に時間がかかるので、そういったタイムスケジュールも織り込みながらですね。先行して地方紙やラジオなどで露出を始めた形です。

●シニア層はある程度狙い通りに取れている

―― 安いプランに乗り換えているユーザーがいるというお話でしたが、どういったユーザー層が乗り換えているのでしょうか。

蓑手氏 シニア層に関しては、ある程度狙い通りにいっています。(MVNOは)他社のことなので詳しくは申し上げられませんが、思った以上にビジネスマンの方にご契約いただけていることも分かっています。OCN モバイル ONEは取り扱うプランが幅広いので、店頭でご紹介した際に選んでもらえているのかもしれません。

―― 多いのは、やはりドコモからの移行でしょうか。

蓑手氏 3Gからの乗り換えはそういうご提案(ドコモからの移行)になっていることもあり、そういう場ではOCN モバイル ONEが出てきやすいですね。ただし、全体としてどうなのかという詳細についてはお答えを控えたいと思います。

―― ギガライトとOCN モバイル ONEを比べると、ギガライトの料金的な優位性がありません。その層のユーザーが減ってしまう恐れはないでしょうか。

蓑手氏 影響がないわけではありませんが、「それでもドコモがいい」とおっしゃってくださる方もいます。「はじめてスマホプラン」にするのか、ギガライトをご提案するのかは、お客さまのニーズを聞きながらですね。

●dポイントの仲間になってもらうことに期待

―― ドコモショップで契約できますが、実際にはドコモからユーザーが出ていってしまうため、収益性は悪くなると思います。この点はどうお考えですか。

蓑手氏 お客さまのために一番いいご提案ができればと思っています。エコノミーMVNOを選んでいただけるのは、その結果です。確かに(OCN モバイル ONEの)上の方の料金プランはドコモと近接していますが、自然とすみ分けができるかもしれない。そこはお互いに努力するところです。

―― MVNOからの接続料が入ってくるため、間接的には収益がゼロになるわけではありませんが、直接ドコモを契約したユーザーと比べるとかなり収入は減りそうです。

蓑手氏 dポイントの仲間になっていただけることに期待しています。確かに通信料金だけで見ると、接続料になってくるのでユーザーから直接料金をいただくよりは(収入が)下がってきます。ですから、その辺のビジネスをどう強化していくか、ですね。dポイントを皮切りにどうビジネスを拡大していくかは、各社と協議しています。

―― それは例えば「dマガジン」のようなコンテンツを使ってもらうというようなことでしょうか。

蓑手氏 そうですね。動画だとある程度データを消費してしまいますが、(MVNOの料金プランと相性のいい)ライトなコンテンツはお勧めしやすいと思います。

●dポイントはMVNOにとってもメリット、手数料の条件は合理的

―― 一方で、dポイントを導入するとなると、ポイントプログラムを全面的に刷新しなければならず、MVNOにとって少々ハードルが高いような印象も受けます。

蓑手氏 繰り返しになってしまいますが、店頭でお勧めさせていただく環境を作る上で、ウィンウィンになるため、協議の中ではdポイント導入のお話をさせていただいています。OCN モバイル ONEもトーンモバイルも、自分たちのサービスを変えることに関して、お客さまとのコミュニケーションやシステム面での手当ては必要でしたが、dポイントの仲間になることで彼らにもメリットが出てきます。こういったことを一緒に考えていければと思います。

―― 条件面では、手数料が高いという声も小耳に挟んだことがあります。一方でOCN モバイル ONEは、ドコモショップで扱ってもらえるメリットを考えると高くはないという反応でしたが、こういった声についてはどのようにお考えでしょうか。

蓑手氏 どういうお声かは詳しくは存じ上げませんが、それなりに手続きに時間がかかることを考えると、ご提示している手数料の条件は当社として合理的だと理解しています。そこに乗っていただけるかどうかというところです。ただし、(MVNOと)お話をさせていただいている限りでは、直接そういう声が出ているということはありません。ドコモショップという販路で期待できることを考えれば、リーズナブルだと判断しているのではないでしょうか。

―― 手数料を下げて、サポートはなし、SIMカードを物販で販売するだけというような販売方法は検討されてないのでしょうか。諸外国だと、MVNOのSIMカードをキャリアショップで販売だけしているケースもありますが。

蓑手氏 そこまでは考えていません。店頭での手厚いサポートを期待されている方がドコモショップに来店する方の多くを占めているからです。吊り下げ販売といった簡易的なものだと、お客さまサービス上なかなか厳しいと思います。

―― 現状はドコモショップのみですが、ドコモ回線を取り扱っている量販店での展開などもありえるのでしょうか。

蓑手氏 ご要望は聞こうと思っています。量販店からご要望があれば、ご意見を聞いて考えていきます。

●MVNOのプランを制限することはない

―― 今後、トーンモバイルの取り扱いも始まると思いますが、ドコモショップ側はどのようにお勧めしていくことになるのでしょうか。

蓑手氏 フリービットがまだ料金を発表されていないので、(詳細は)発表をお待ちいただければと思います。発表会の際にお話ししましたが、トーンモバイルであれば見守りサービスが特定の層に非常に訴求力があります。そこに関心のある方にお勧めするという売り方はできると思います。

 一方で、料金が近接しているようなときにどうするかという話はありますが、そこはいかに適切に説明できるかだと思います。

―― 子ども向けのサービスについては、ドコモ側にもあります。今後、ああいったものはエコノミーMVNOに任せていく方針なのでしょうか。

蓑手氏 たまたまトーンモバイルがそこに強みがあっただけです。私どものキッズ向けサービスの訴求が届いていなかった層にサービスを届けるきっかけになると考えています。

―― 低廉、低容量という位置付けのエコノミーMVNOですが、MVNOのプランはそれだけに制限しているのでしょうか。

蓑手氏 大容量プランに関しては、私どもに訴求力がないわけではありませんので、お客さまを混乱させてはいけないことを踏まえると、基本的にはドコモのプランが優先されると考えています。また、今は低容量、低料金のご提案ですが、そのご提案に対して大きくネガティブな意見をいただいているわけではありません。どうしても大容量でいきたいとご要望される事業者がいらっしゃるとすれば、協議がまとまるかどうかですが、プランを制限することはありません。店頭でお勧めできるのはこれという言い方になると思います。

●一次MVNOには広く声をかけている

―― 2022年1月にNTTコミュニケーションズが子会社化されますが、そうなると、OCN モバイル ONEにユーザーが移れば、広い意味でドコモにとどまっていることになります。この場合、エコノミーMVNOでOCN モバイル ONEが優先されるというようなことはあるのでしょうか。

蓑手氏 1月のフォーメーション変更にあたっては、私どもが公正競争上、留意しなければならないことがあります。そこに関して、フェアな競争環境を作っていくのは大前提です。まだ料金は出ていませんが、トーンモバイルであればティーンのお子様の見守りなど、ユニークなサービスがあり、そういった部分をしっかり訴求していくのがフェアなことだと考えています。それぞれに一番適した提案をしていきます。

―― 公平というところで言うと、一部のMVNOから声がかかっていないという話も出てきています。

蓑手氏 広く公平に情報提供をさせていただきました。もしかしたら、どこかで情報が途切れてしまったところはあるかもしれませんが、一次MVNOに関しては広く声をかけた上で協議を続けています。

―― 意外と二次MVNOにも特色のあるサービスが多いような印象はありますが、二次以降のMVNOはどうされていく予定でしょうか。

蓑手氏 まずは一次MVNOの反応を見てからと考えています。増えるごとに店頭での準備も必要になってくるので、一度にバーッと増やすというより、条件がまとまったら準備をしてというように進めていきたいと考えています。

―― 今後もMVNOは増えるのでしょうか。低容量、低料金を売りにしているMVNOが多い中で、なかなか差別化が難しいような気もしています。

蓑手氏 協議中のことなのでお話はできません。今言えるのは、まだ協議している会社があるということです。各社の持つ強みを、ドコモショップという場を通じて適切にお客さまにお届けできればと思っています。その強みをクリアにしていただければと考えています

●ドコモメールやファミリー割引が使えなくなる問題は?

―― 現状だと、エコノミーMVNOに変えるとドコモのメールアドレスが使えなくなります。持ち運び制度が始まりますが、それも見越してのスタートだったのでしょうか。

蓑手氏 メールアドレスの持ち運びができるようになることで、よりお客さまがストレスなく(エコノミーMVNOに)MNPできるようになると感じています。ただし、それを見越してというより、たまたまた動きが同じタイミングだっただけです。持ち運び制度が始まれば、メールアドレスが変わる心配をされている方にはご案内ができるようになると思います。

―― あくまでMVNOなので、ドコモ光とのセット割が効かなかったり、ファミリー割引の適用人数から外れてしまったりするのも料金プランとの違いだと思いますが、そこに対しても何らかの対応はしていくのでしょうか。

蓑手氏 料金システムが違うので、何ができるのかというのはありますが、(それをやるのは)少し踏み込みすぎな気もしています。確かに、ファミリー割引の適用対象外になるご心配の声は一部で出ていますし、そういった声には真摯(しんし)に耳を傾けなければいけないのですが、現時点でできることとできないことがあります。例えば割安なOCN モバイル ONEのプランでご満足いただけるのであれば、ファミリー割引は組めませんが、それ以上のメリットがあるとご納得いただけるような形で提案をしていきたいと考えています。

●MVNOの端末は、要望があれば協議する

―― 最後に端末について伺いたいのですが、実際、エコノミーMVNOとドコモ端末はセットで売れているのでしょうか。

蓑手氏 売れています。3Gからの乗り換えだと、どうしても端末購入になりますからね。ただ、よくご存じの方はSIMの交換だけでいいとなることもあります。

―― 一方で、MVNOと言えば、いわゆるSIMフリー端末とのセット販売が主流でした。トーンモバイルのように、端末まで作って垂直統合モデルを売りにしているMVNOもあります。こういったものは扱っていかないのでしょうか。

蓑手氏 ドコモショップで扱うということで、まずはドコモの端末を販売しています。他社の取り扱い端末については、ご要望があれば協議になると思います。ただ、話題に出ないことはないのですが、やはりドコモショップでドコモの端末を買えるというのはお客さまにとっても分かりやすい。スタートとして、まずはそちらを大事にしました。おかげさまで端末の販売状も悪くない状況です。

●取材を終えて:エコシステムをいかに強化していけるか

 ドコモや以前インタビューしたOCN モバイル ONEの担当者から話を聞く限り、エコノミーMVNOの出足は比較的好調なようだ。特に3Gケータイからの乗り換えるシニア層が、低料金に引かれ、エコノミーMVNOを選択していることが伺える。ドコモショップで契約できることで、MVNOへのハードルを大きく下げた効果があったといえる。メールアドレスの持ち運び制度が始まれば、こうしたユーザーとの相性はさらによくなりそうだ。

 一方で、インタビューでのやりとりにもあったように、短期的には、エコノミーMVNOのユーザーが増えれば増えるほど、ドコモとしては収入を失っていくことになる。直接的な通信料収入を得られないからだ。まだ連携は始まったばかりだが、dポイントを軸にしたエコシステムをいかに強化していけるかが、エコノミーMVNOの今後の行方を左右しそうだ。