多くの人が使っている写真編集ソフトといえばAdobeの「Lightroom」が有名です。

 そんなLightroomは、PCで使うサブスクリプション式のデスクトップ版とスマホやタブレットで使う基本無料のモバイル版の2種類が存在します。前者はPhotoshopとLightroomがバンドルされた最もリーズナブルなプランである「Adobe Creative Cloud フォトプラン」で月額1078円(税込み、以下同)と、気軽に利用するには少しためらわれる価格設定です。

 一方で、基本無料の後者は明るさや色味の調整と言った基本機能は利用できるものの、マスク機能やRAW編集といった高度な機能は制限されており、ハイアマチュアな写真家には少し物足りない内容となっています。

●月額550円のLightroom プレミアムという選択肢

 月額1078円のフォトプランは高い、でも無料のモバイル版Lightroomでは物足りないという方におすすめなのが「Lightroom プレミアム」です。

 Lightroom プレミアムはモバイル版Lightroomの月額課金制有料プランです。モバイル版LightroomでRAW編集やマスク機能などの高度な編集機能が利用できるようになるもので、スマホやタブレットでデスクトップ版Lightroomとほぼ同等の機能が使えるようになります。

 価格は月額550円とフォトプランの約半額。また、Creative Cloud同様に年単位の契約で利用料金が年額5400円に割引されます。

 今回はLightroom プレミアムでできることや、デスクトップ版Lightroomユーザーだった筆者がLightroom プレミアムに乗り換えて感じたことをご紹介します。

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●Lightroom プレミアムでできること1:マスク機能

 Lightroomプレミアムにアップグレードすると、一部分を選択して編集できるマスク機能が利用できるようになります。

 マスク機能は円形、線形といった基本的な図形に加えて、Apple Pencilや指でなぞったところを選択するブラシやAdobeのAIが自動的に選択してくれる「被写体を選択」「空を選択」といったものがあります。これにより、被写体を選択して明るくすることで目立たせる、白飛びしやすい空だけを選択して明るさを調整するといった使い方ができるようになります。

 また、一部のカラー範囲を選択、一部の輝度範囲を選択といったマスクも可能。さらに、これらは組み合わせることもできるため、「円形選択した範囲内で緑の部分を選択」といった使い方ができるようになります。

 マスク機能はどこを目立たせて視線を誘導するかといった自分の意図した通りのニュアンスを写真に込める際に非常に有効な機能。撮影後に創意工夫を凝らすことが非常に楽しいです。

●Lightroom プレミアムでできること2:ジオメトリ編集

 マスク機能に次いで便利なのがジオメトリ編集機能です。

 ジオメトリ編集は撮影時に水平が取れずに傾いてしまった、レンズの性能が悪くてゆがんでしまったというときにデジタル的に遠近感を補正をするものです。パラメーターをいじることで、思い通りの構図を再構築することができます。

 もちろん難しいことを考えずにワンタップで自動補正する機能もついています。これにより、三脚や水準器といったものがなくても直線が多い人工物等の水平やゆがみや気になりやすい被写体を安心して撮影することができるようになります。

●Lightroom プレミアムでできること3:修正ブラシ

 Lightroom プレミアムではGoogle Pixelの消しゴムマジックやGalaxyのAI消しゴムのような被写体を消して自然になじませる「修正ブラシ」機能が利用できます。

 スマホの機能と違うのは、消し跡は写真中の他のところから持ってくるところ。消し跡の穴埋めは最初は自動でやってくれますが、写真中のどこの部分を埋めるのかを後から自分で選ぶことも可能なので、より自然な修正ができます。

●Lightroom プレミアムでできること4:RAW編集

 Lightroomの無料プランは、Apple ProRAWなどのスマホのRAWファイルは編集できるものの、一眼カメラのRAWファイルは編集できません。しかし、Lightroomプレミアムにアップグレードすることで、一眼カメラのRAW編集もできるようになります。

 一眼カメラのRAWが取り扱える一番のメリットは、iPadなどのモバイル大画面デバイスが写真を取り扱うスキームのハブにできることです。

 例えば、一眼カメラで撮影したRAWデータをiPadに取り込みLightroomで編集、書き出しをしてすぐさまSNSでシェアといった使い方ができるようになります。

●全ての機能が使えるデスクトップ版のLightroomに劣らない

 Lightroomプレミアムには他にも複数枚の写真を一括編集する、「山」「海」といったワードで写真を検索する、100GBのオンラインストレージで写真をバックアップする、プロの写真家が作った編集プリセットでワンタップで編集するといった機能もついています。

 これらの機能は全ての機能が使えるデスクトップ版のLightroomに劣りません。Photoshopは利用しないしスマホやタブレットの編集で十分という人にはフォトプランではなくLightroom プレミアムというのもいい選択肢だと思います。

 私が唯一困ったのが、スクトップ版Lightroomにあるフリンジ軽減の項目がなかったこと。フリンジとは、極端な明暗差があるときにその境界にできる偽色のことです。フリンジは最新のスマートフォンでも起きることがある現象で、本来は編集で簡単に取り除くことができるのですがモバイル版Lightroomではその補正項目が見当たりませんでした。

 なお、Lightroom プレミアムには7日間の試用期間があるので、その間に自分が使いたい機能が使えるかどうかを確認することをオススメします。

●Lightroom プレミアムは最新のiPadで真価を発揮する

 Lightroom プレミアムは大画面のタブレットで利用することで真価を発揮します。特に、最新のiPad Proユーザーであれば、

・Thunderbolt 4対応のUSB-C端子による高速なRAWデータ読み込み

・高品質なLiquid Retinaディスプレイでの編集

・パワフルなM1チップによる快適な編集と高速な書き出し

・Apple Pencilを使った細かいマスクや修正ブラシ

・5Gによる高速データ転送(Cellularモデルのみ)

 といったことができるので、軽量でコンパクトなiPad Proを写真の管理デバイスにすることが可能です。

 実際に、私が使っているカメラのRAWファイルは写真1枚あたり70MBほどですが、USH-II対応のSDカードリーダーを使うことで30秒ほどで100枚の写真を取り込むことが可能でした。また、4200万画素で70MBのRAWファイルをいじるのにはマシンパワーが必要ですが、iPad Proはラグもなくサクサクです。(Snapdragon 860搭載のXiaomi Pad 5は1200万画素で30MBのApple ProRAWの写真でカクつきがひどかったです。)

 Apple Pencilの応答速度も実用的であり、PCでは難しい細かいところの選択もできるので、非常に快適でした。

 「写真はスマホでしか撮らないし、細かい編集はしない」のであれば無料のモバイル版Lightroomで十分です。一方で、一眼カメラユーザーにとっては高度な写真編集ができるLightroom プレミアムは魅力的です。特にタブレット(できれば最新モデルのiPad)があれば快適な写真編集ができるようになるため、Creative Cloudのフォトプランを契約中であれば、そこからの乗り換えも大いにありだと思います。