既報の通り、楽天モバイルは7月1日から新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」の提供を開始します。既存プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を契約している場合は、同日から新プランに自動移行されます。月額料金は1078円(税込み、以下同)からとなり、既存プランで1名義1回線のみ可能だった「月額0円から」の利用はできなくなります。ただし、激変緩和措置が設けられているため、既存ユーザーは7〜8月利用分は料金の値引き、9〜10月利用分はポイント還元で「実質月額0円から」のまま利用可能です。

 「月額0円から」を廃止することに注目が集まっているRakuten UN-LIMIT VIIですが、他にも注目すべきポイントがあります。今回の「5分で知るモバイルデータ通信活用術」は、そんなRakuten UN-LIMIT VIIを詳しくチェックしていきたいと思います。「5分」では終わらない可能性もありますが、お付き合いください。

【訂正:6月17日18時35分】初出時、Rakuten Link利用に関するデータ通信の扱いに誤りがありました。おわびして訂正いたします

●楽天モバイルの料金プランを振り返る

 楽天モバイルのキャリア(MNO)サービスの初代料金プランは「Rakuten UN-LIMIT」でした。自社エリア限定ではあるものの月間データ通信量に制限はなく、月額料金は3278円でしたが、先着300万人に限り、1回線限定ながらも1年間無料で利用できるという特典が付与されました。

 条件付きながら、月間データ通信量無制限で無料というのはインパクトが大きく、「楽天モバイルといえば0円」というイメージはここである程度定着したものと思われます。

 ……が、キャリアサービスの本格提供開始当日(2020年4月8日)、国内パートナー回線(au 4G LTEネットワークへのローミング)における利用条件を一部改訂してプラン名を「Rakuten UN-LIMIT 2.0」に改めました。利用条件に変更があるとはいえ、仮称ではないサービスの名前が提供開始と同時に変わることは異例だったと思います。

 2020年9月30日、楽天モバイルは5G通信サービスを開始しました。そのタイミング発表された料金プランが「Rakuten UN-LIMIT V(ファイブ)」です。

 5G通信に対応すること以外の提供条件はRakuten UN-LIMIT 2.0と同様だったこともあってか、既存のRakuten UN-LIMIT 2.0ユーザーの契約は自動でRakuten UN-LIMIT Vへと変更されることになりました。楽天モバイルの特徴である“強制的な”プラン変更は、この頃からの「伝統」といえるかもしれません。Rakuten UN-LIMIT 2.0は約5カ月で幕を下ろすことになります。

 2021年1月、楽天モバイルはさらに新しい料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI(シックス)」をリリースすることになりました。この料金プランは、月間通信容量によって月額1078円(3GBまで)/2178円(20GBまで)/3278円(20GB超)と3段階で料金が変わることと、1名義1回線限定ながらデータ通信容量が1GB以下なら月額0円(無料)であることが特徴です。キャンペーンだった「月額0円」が条件付きながら正規プランとして組み込まれたことになります。

 月額0円がプランに組み込まれた背景として、1年間無料キャンペーンの限定数である「300万人」が近づいてきたことがあります。もう少しツッコむと、このキャンペーンを最初期に申し込んだユーザーの離脱(解約)を防ぐために「月額0円から」を捨てきれなかったという見方もできます。

 既存ユーザーにとって特に不利になる要素がないことがないこともあり、既存のRakuten UN-LIMIT Vユーザーの契約は自動でRakuten UN-LIMIT VIに変更されることになりました。

 Rakuten UN-LIMIT VIを投入した背景には、他の大手キャリアが2021年3月からオンライン専用プランを相次いで投入することが決まっていたこともあります。NTTドコモの「ahamo」、KDDIと沖縄セルラー電話の「povo(ポヴォ)」、ソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」がそれです。

 ただ、これらのオンライン専用プランは「月間20GBで税込み3000円弱」という料金設定だったので、Rakuten UN-LIMIT VIと直接競合するかといえば、そこまででもありませんでした。しかし、ソフトバンクは2021年7月、LINEMOに月額990円で月間3GBまで高速データ通信できるプランを追加しました。KDDIと沖縄セルラー電話も2021年9月、一定期間内の課金が条件ながら「月額0円から」を実現した「povo2.0」の提供を開始しました。

 データ通信容量が少なければ無条件で無料となるRakuten UN-LIMIT VIと比べると、LINEMOの3GBプランやpovo2.0は「割高」にも思えます。しかし、LINEMOとpovo2.0は楽天モバイルよりも広いサービスエリアを有しています。楽天モバイルが国内パートナー回線の利用を縮小し始めたこともあり、「月額0円でも通信できないくらいなら……」と、これらのサービスへの乗り換えを検討する声もちらほら聞こえてくるようになりました。

●Rakuten UN-LIMIT VIIはどんなプラン?

 ここでRakuten UN-LIMIT VIIの話に戻りましょう。実はこのプラン、よくよく見てみると月額1078円からスタートするという点において、現行のRakuten UN-LIMIT VIと変わりはありません。月間のデータ通信に応じて、以下の通り3段階で料金が変わっていきます。

・月間3GBまで:月額1078円

・月間20GBまで:月額2178円

・月間20GB超:月額3278円

 料金設定に変更がないのに大きく騒がれているのは、ひとえに1名義1回線限定の「月間1GBまでなら無料」が廃止され、少なくとも月額1078円の支払いが必要となるからです。

 段々と広がっているとはいえ、他の大手キャリアと比べると楽天モバイルの自社エリアは限られています。特に地下街や大きめの商業施設、人口の少ない地域に行くと“圏外”になることは珍しくありません。そこにLINEMOの3GBプランやpovo2.0を持ってくると、「楽天モバイル、エリアが狭い割にちょっと割高じゃない?」と思えてきます。

 月間20GBまでで比較した場合、Rakuten UN-LIMIT VIIはLINEMO(スマホプラン)よりも550円、ahamoよりも792円安いことは確かです。しかし、エリアの差を勘案すると「これくらいの料金差なら、つながりやすい方にしよう」と考えても不思議ではありません。混雑時の通信速度はさておいて、料金差が気になるなら大手キャリア回線を利用するMVNOサービス(格安SIM)という選択肢もあります。

 「あれ、楽天モバイルってもっと安いような気がした」と思った方に補足すると、楽天モバイルは“税別”の料金を強く訴求しています。他社と同様に税込みにそろえて比較してみると、思ったよりも料金差が少なくなる可能性があります。

 ただ、Rakuten UN-LIMIT VIIに強みはないのかといえば、そんなことはありません。

 Rakuten UN-LIMIT VIIは、自社エリア内での月間データ通信容量に特に制限していません。そのため、毎日ガンガン通信するという人は、Rakuten UN-LIMIT VIIは大手キャリアの大容量プランよりも手頃に使えます。

 当日中に大量に通信すると、日付が変わるまで通信速度に制限が入ります。詳しいしきい値と制限内容は公表されていませんが、筆者の実測では「1日10GB以上の通信で上下最大3Mbps程度」という感じです。

 このような制限はあるものの、「月額3278円で1日10GBの高速通信を毎日使える」と考えると「これ、意外とおトクなのでは?」と思えてくるはずです。

 少し前の話になりますが、筆者は引っ越しで固定インターネット回線が一時的に使えなくなった際に、楽天モバイルのモバイル回線でしのいだことがありました。

 思った以上に便利だったことを踏まえると、スマホ単体でたくさん通信する人にとって、Rakuten UN-LIMIT VIIは引き続き魅力的なプランであることは間違いありません。あくまでも楽天モバイルの自社エリア内で使うことが前提になりますが……。

●楽天モバイルユーザーの争奪戦が始まった

 楽天モバイルがRakuten UN-LIMIT VIIを発表した直後、povo2.0やLINEMOなど、MVNOを含む一部キャリアにおいてMNP契約を含む新規契約の手続きに遅延が生じました。一部のキャリアでは、契約手続きを担当する係員を増やして対応したそうです。

 タイミング的に、WebやTVを通して発表内容を知った楽天モバイルのユーザーが「0円からじゃなくなるなら……」と、他社へと転出したものと思われます。実際に、取材に対して「楽天モバイルからの乗り換えが増えている」と回答したキャリアもあるそうです。

 Rakuten UN-LIMIT VIIは7月1日にスタートする予定で、記事掲載時点でおよそ半月の猶予があります。また、7月と8月は月額料金の1081円引きで、9月と10月は1080円分の楽天ポイント(期間限定)の付与でRakuten UN-LIMIT VIと「実質同額」で使える激変緩和措置も発表済みです。もっといえば、1GB超の通信をする人、あるいは同一名義の2回線目以降の月額料金に変更はありません。

 Rakuten UN-LIMIT VII、「楽天市場」での買い物などでたまるポイントが+1倍、「楽天会員」のランクがダイヤモンドであればさらに+1倍(それぞれ毎月1000ポイントが上限)という特典や、新規契約者を対象に「楽天マガジン」を始めとする楽天サービスが実質無料となる特典が適用されます。

 それでも、始まる前から楽天モバイルからの離脱が起こっているということは、Rakuten UN-LIMIT VIIが魅力的なプランではない、あるいは月額0円で維持できないなら楽天モバイルでなくてもいいと考えている人が少なからずいるということなのだと思います。

 生活圏が楽天モバイルの自社エリア外、つまりau 4G LTEエリアへのローミングを利用しているユーザーには、他にも注目すべきポイントがあります。7月1日から国内ローミング用の「データチャージ」が1GB当たり110円値上げされるのです。

 Rakuten UN-LIMIT VI/VIIでは、国内ローミングにおいて1カ月当たり5GBまで高速通信できます。これを超過した場合、au 4G LTEエリア内での通信速度が翌月まで上下1Mbps程度に制限されます。データチャージを購入すると制限を解除できるのですが、110円の値上げは想像以上に負担感が大きいと思われます。

 楽天モバイルがKDDIに支払うローミング費用は、楽天グループ(楽天モバイルの親会社)の連結決算に大きなマイナス要素になるほどの負担だとされています。ローミングの順次廃止と並行して、「月額無料の廃止」と「データチャージの110円値上げ」を行うことで楽天モバイルの収益は大幅に改善することになるでしょう。ただ、いずれの収益改善策も金額だけで見ればユーザーに不利益を与える形になってしまっていることは否めません。

 台所事情を考えると致し方ないことは理解できるのですが、競争環境に合わせてユーザーに有利になる通信料金の見直しなどが行われなかった点は非常に残念です。

●楽天モバイルに“残るべき”ユーザーは?

 ここまで、楽天モバイルの新プランについてやや厳しい見解を述べてきました。しかし、先にも触れた通り楽天モバイルを使い続けるべき、あるいは楽天モバイルに乗り換えるべきユーザーもいるはずです。そのようなケースをもう少し深掘りしてみましょう。

ケース1:毎月20GB以上通信して、行動範囲が楽天モバイルエリア内に収まる人

 何度も言っていますが、Rakuten UN-LIMIT VIIは月間20GB以上通信する人にとってコストパフォーマンスが良いプランであることに変わりありません。

 日常の行動範囲の大半が楽天モバイルの自社エリア内で、かつデータ通信量が月間20GBでは足りないという人には、Rakuten UN-LIMIT VIIがお勧めです。当日中にたくさん通信した場合の速度制限が気になるという人もいるかもしれませんが、筆者の実測で3Mbps程度は出るので、大抵のWebサービスは問題なく使えます。

ケース2:毎月1GB以上通信するユーザー

 現行のRakuten UN-LIMIT VIと新しいRakuten UN-LIMIT VIIを比べた場合、毎月のデータ通信量が1GB以上になる人は支払い額は変わりません。毎月の通信量を見直してみて、1GBを下回る月がないという人は、そのまま使い続けても問題ありません。

ケース3:国内通話(電話)をたくさんかける人

 Rakuten UN-LIMIT VI/VIIではコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」を利用できます。このアプリを使うと、国内宛の音声通話(電話)を無料で発信できます(※1)。

 「SNSの時代」とはいえ、電話をする機会が多いという人もいます。音声通話をたくさんする人は、節約目的でRakuten UN-LIMIT VIIを契約し続けることもアリでしょう。

(※1)対象外の電話番号もあります

 このほか、国内通話が無料になる「Rakuten Link」を多用することで通話料金を節約している(あるいはできる)方も、音声通話料金または通話定額オプションの料金を節約できるメリットがあります。

●ユーザーの離脱を防げるほどのサービスとエリアを構築できるか?

 楽天モバイルからの転出を考えるユーザーは、料金面よりもエリアが狭いことに不満を感じるケースが少なくないように思います。「月額0円なら、エリアが狭くてもガマンする」という声が少なからずあったことからも、そのことは察せます。

 確かに、楽天モバイルの自社エリアは日々拡大しています。しかし、三木谷浩史会長(楽天グループ社長)が「大阪駅前で驚愕(きょうがく)のスピードが出る」と太鼓判を押していたJR大阪駅では、駅前付近は5G接続となる場所も多いものの、駅に直結する商業施設の高層階では圏外になるなど、大手3社のネットワーク整備と比べると見劣りする点は理解しておく必要があります。

 楽天モバイルとしては、国内のローミングパートナーであるKDDIへのローミングに伴うコスト負担を抑え、少しでもコストを削減したいという思いもあるでしょう。そのためには、楽天モバイルの自社ネットワークを整備し、より多くのユーザーに、ストレス無く多くのデータ通信を使わせることで、ARPU(ユーザー当たりの平均収益)をあげていく必要があります。

 新料金プランは、楽天モバイルにとってコストパフォーマンスが悪いユーザーをある意味で"切り捨て"する方針とも言えますが、料金プランの刷新によって楽天モバイルを使い続けるユーザーにとって、より良いサービスに発展していくことを願っています。