5月の大型連休中、私はできる限りスマートフォンのタッチ決済だけ使って東京→岡山→高松→徳島→大阪→京都→滋賀→愛知→東京を巡る旅に出ました。1日目は東京から岡山まで移動して、2日目の午前中は日本三名園の1つである後楽園で散歩した後、列車で高松駅まで移動しました。

 この記事(中編)では、地元私鉄の電車に乗った後、京都市内まで移動するまでの道のり(2日目の終わりまで)を見ていきましょう。

●2日目(中盤):地方私鉄に乗ってから徳島へ

交通系ICカードで乗れる地方私鉄がある

 JR高松駅から少し離れた場所に、高松琴平電気鉄道(琴電/ことでん)の「高松築港(たかまつちっこう)駅」があります。徳島までの移動に少し時間があったこともあり、少しだけ琴電琴平線に乗車することにしました。

 琴電は2005年から「IruCa(イルカ)」という独自のICカード乗車券を導入しており、駅構内の自動販売機などではチャージ残高を使った電子マネーとしても利用できます。2018年月からはJR西日本(西日本旅客鉄道)の「ICOCA(イコカ)」と、ICOCAとの相互利用に対応する交通系ICカードでの乗車に対応しました(※1)。もちろん、「モバイルSuica」でも乗車できます。

(※1)特殊なデータ(福祉乗車証など)が書き込まれている場合は利用できない場合があります

 ただし、ICOCAを含む交通系ICカードを琴電で使う場合、以下の制約があります。

・駅の自動チャージ機ではチャージできない

・IruCa取扱窓口のある駅やバス案内所では窓口でチャージ可

駅構内のIruCa対応自動販売機では電子マネーとして利用できない

琴電と「ことでんバス」との乗継割引は適用できない

 なお、IruCaは他の交通系ICカードとの相互利用は行っていません。

 改札機は、ゲートタイプの「自動改札機」とポールタイプの「簡易改札機」を駅によって使い分けています。後者の場合、乗車用と降車用の機械は別々にあるので、かざす機械を間違えないように気を付けてください。

 時間の都合で、今回は高松築港駅から瓦町駅までのみ乗車しましたが、両駅共に自動改札機を設置しています。ただし、この自動改札はICカード(IruCaまたは交通系ICカード)専用ですので、紙の乗車券類を利用する場合は係員のいる窓口を通ってください。

 本当は琴電を堪能したかったのですが、時間の都合で2つ先の瓦町駅で降りました。折り返しの電車まで少し時間が空くので、タクシーで高松駅まで戻ることに。運賃はおよそ1000円だったのですが、タッチ決済に対応しておらず、現金で支払いました。この旅で初めて現金を使うことに……。

交通系ICカードの“空白地帯”へ

 今回の旅行の最大の目的は、スマートフォンにセットアップしたVisaのタッチ決済(EMVコンタクトレス)で南海フェリーに乗船することです。そのためには、ひとまず徳島方面に移動しなければなりません。

 前編でも少し触れましたが、JR四国の一部路線はJR西日本のICOCAエリアとして組み込まれています。具体的には以下の路線と区間/駅で利用可能です(原則として片道200kmまで)。

・本四備讃線:児島〜宇多津間

・予讃線:高松〜多度津間、詫間駅、観音寺駅

・土讃線:善通寺駅、琴平駅

・高徳線:栗林公園北口駅、栗林駅、屋島駅

 ICOCAエリアに含まれる区間/駅では、ICOCAを含む交通系ICカードで乗降できます。しかし、高松と徳島を結ぶ高徳線は上記の3駅(と高松駅)のみがICOCAエリアとなっており、徳島駅までの移動にモバイルSuicaを使うことはできません。

 旅の趣旨を考えると、交通系ICカードに対応する高速バスがあるならそちらを優先して使いたい所です。しかし、高松と徳島を結ぶ高速バスには交通系ICカードで乗車できるものがありません。

 仕方ないので、高松駅から徳島駅への移動は、クレジットカードを使って「特急うずしお11号」のきっぷ(普通乗車券と特急券)を購入することにしました。

 特急うずしお11号は出発時に少し遅れが出たものの、ほぼ時刻通りに徳島駅に到着しました。

バスで徳島駅から徳島港へ

 徳島駅から徳島港まで歩いて移動するのもいいのですが、せっかくなので路線バスに乗って移動します。

 徳島駅と南海フェリーの乗船場を結ぶバスは徳島市交通局が運行しています。同局の「徳島市営バス」は交通系ICカードによる乗車には対応していませんが、均一運賃制の路線の一部では以下のQRコード決済(スマホ決済)で運賃を支払えます。

・PayPay

・LINE Pay

・d払い

・メルペイ

・au PAY

・楽天ペイ

 決済用のQRコードは、QRコード決済に対応する系統のバスに掲示されています。これをスマホで読み取って、運賃を手入力して下車時に運転士さんに見せつつ決済するという仕組みです。

 これとは別に、徳島市営バスと徳島バスで共通の「スマホ1日乗車券」も用意されています。料金は均一運賃系統のみ乗車できるものが500円、整理券方式の路線を含めて全系統に乗車できるものが1000円で、スマホのWebブラウザから購入できます。料金はVisaカードまたはMastercardで支払えます。

 徳島駅と南海フェリーの乗船場(南海フェリー前)を結ぶ徳島市営バス「南海フェリー線」は均一運賃系統で、QRコード決済での乗車にも対応しています。今回はバスで周遊するわけではないので、d払いで210円を支払うことにしました。

●2日目(後半):フェリーで本州に渡る! そして……

いよいよタッチ決済でフェリーに乗船!

 バスに乗ってからおよそ25分、いよいよ徳島港の南海フェリー乗り場に到着しました。今回はフェリーに自動車やバイクなどを載せるわけではないので、通常のきっぷ売り場の方に向かいます。

 ただし、今回はAndroidスマートフォン(Galaxy Z Flip3 SC-54B)にセットアップしたVisaのタッチ決済で乗車するため、きっぷ売り場(窓口)に立ち寄る必要はありません。何もせずに徒歩乗船口に向かいます。

 徒歩乗船口までの道のりには、Visaのタッチ決済で乗船できることをアピールするポスターと、南海電気鉄道(南海電鉄)へとタッチ決済で乗り継ぐと自動適用される割引「スマート好きっぷ」をアピールするポスターが掲示されていました。

 徒歩乗船口を少し進むと改札があり、係員が乗船券のチェックを行います。Visaのタッチ決済で乗船する場合は「Visaのタッチ決済を使います」と伝えて、改札口に置いてあるICカードリーダーにタッチ決済対応のVisaカード(またはタッチ決済をセットアップしたスマホ)をタッチしてください。リーダーのLEDが緑色に光ると乗船できます。

 Google Payを介してAndroidスマホにセットアップしたVisaのタッチ決済を使う場合、画面のスリープを解除しておく必要があります。一応、日本では画面ロックを解除しなくても1回当たり1万円までの決済は可能ですが、念のためにロックを解除した状態で決済しました。

 無事乗船できましたが、当日は連休中ということもあり少し混雑していました。そこで500円を追加すれば使える「グリーン室」を使うことにしました。グリーン室の乗船券は基本的に前売りのみで、当日購入の場合は出発前に船内の売店で購入する必要があります。

 船内売店でもVisaのタッチ決済は使えるのかなと思いきや、支払い現金のみでした。船内に複数台ある飲料や食品の自動販売機も現金のみの扱いです。

 ここも含めて完全キャッシュレスだとうれしいのですが、特にデビットカードやプリペイドカードを使う場合は決済時に通信が必須です。沖合では携帯電話でも電波が届かない可能性があり、ゆえに決済できない恐れもあります。沖合での通信をどうにかできれば、船内のキャッシュレス化も進みそうですがどうでしょうか……?

 徳島港から和歌山港までの所要時間はおおむね2時間です。グリーン室から海を眺めたり、たまに外に出てみたり、船内を見物したりして過ごします。

南海電鉄への乗り継ぎは“同じカード”で!

 乗船から約2時間でフェリーは和歌山港に到着します。自動車やバスを預けていない場合は、徒歩用の出口からそのまま下船できます。

 通常の乗船券で乗船した場合、乗船券は係員に回収されます。Visaのタッチ決済で乗船した場合、あるいは「好きっぷ」(割引乗船/乗車券)で南海電鉄線に乗り継ぐ場合は係員にその旨を伝えて下さい。

 和歌山港の下船口/乗船口は、乗船券売り場(南海フェリーの和歌山営業所)や南海電鉄の和歌山港駅のある建物と連絡通路(陸橋)を介して直結しています。連絡通路は3〜4分ほど歩く程度には長めで、「動く歩道」もあります。

 連絡通路を渡りきると、和歌山港駅に着きます。南海フェリーでVisaのタッチ決済による乗船の実証実験が始まるタイミングで、和歌山港駅もVisaのタッチ決済による電車乗降の実証実験対象に加わりました。

 和歌山市駅からVisaのタッチ決済で電車に乗る場合は、専用の自動改札機(ゲート)を通る必要があります。通常の改札機とは色も異なり、通路にもステッカーが掲示されているので間違えることはなさそうです。

 なお、南海フェリーからの乗り継ぎでスマート好きっぷを適用する場合は、徳島港で利用したものと同じカードをかざす必要があります。Google Pay(またはApple Pay)でVisaのタッチ決済を使う場合、スマホに設定されたカード番号は元のカードと異なるので(※2)、元のカードではなく同じスマホをかざして下さい。

(※2)カードのセキュリティを高める観点から、Google PayやApple Payのタッチ決済では元のカードとは異なるカード番号が割り当てられます

 徳島港発の南海フェリーは、第1便(多客期のみ運航)と第9便(最終便)を除いて南海電鉄和歌山港線と連絡しています。私が乗船したのは第6便だったので、和歌山港発和歌山市行きの普通電車に乗り継げます。さらに、和歌山市駅では難波行き(※3)の特急サザン号とも接続しています。

(※3)南海電鉄の「難波駅」は漢字が正式名称です。乗車券では正式名称通りに漢字表記されますが、車両や駅の行き先表示では「なんば」とひらがなで案内されます

 今回は素直に普通電車とサザンを乗り継いで難波駅に向かいます。サザンは乗車券だけで乗れる自由席車両と、有料の座席指定券が必要な指定席車両があります。座席指定券はチケットレスサービスを使えばスマホからも買えるのですが、当時はそのことをすっかり忘れていて駅で購入することにしました。

 ところが、和歌山市駅の構内に設置してある券売機は現金か交通系ICカードでの購入しか対応していません。ICカードリーダーの都合でモバイルSuicaも使えません。

 和歌山市駅をいったん出て改札外の券売機を使えば、クレジットカードを使って座席指定券を買えます。しかし、そうするとスマート好きっぷの“おトクさ”が薄れてしまいます。仕方ないので、ここでも現金で座席指定券を買うことにしました。

 サザン号は定刻通りに難波駅に到着しました。スマート好きっぷが適用されれば、和歌山港駅から難波駅までの運賃(930円)が実質無料となるはずです。

 Visaのタッチ決済を使って乗車した場合、難波駅では以下の改札口から出場できます。他の改札口からは出られないので注意してください。

・2階中央改札口

・3階北改札口

 難波駅では、和歌山港駅と同じ専用改札機に加えて、既存の自動改札機にICカードリーダーとQRコードリーダーを外付けしたものの両方があります。いずれの場合も、乗車駅でかざしたものと同じカードをかざさないと出場できませんので注意してください。

●タッチ決済での乗船/乗車分はいつ決済される?

 南海フェリーや南海電鉄が実施してるVisaのタッチ決済の実証実験では、乗車した翌日に運賃の決済が実行されます。タッチ決済対応のデビットカードやプリペイドカードで乗車/乗船する場合、利用可能額(残高)を超える決済が成立してしまうこともありますが、その場合は不足分を速やかに入金(チャージ)してください。

 正確な乗車区間や割引の適用履歴を知りたい場合は、QUADRAC(クアドラック)が提供するWebサービス「Q-Move」に会員登録してください(利用後の登録でも構いません)。過去1年(365日)分の履歴を確認できます。Google Pay/Apple Payのバーチャルカードで乗車/乗船した場合は、元のカード番号で登録するとバーチャルカードにおける履歴もまとめて確認できます。

予定外の2泊目をすることに

 Visaのタッチ決済で南海フェリーに乗船し、その乗り継ぎで南海電鉄にも乗車する――旅行“本来の”目的は達せられました。ひとまず、東京に戻るべく新大阪駅に向かうことにしました。

 難波駅からであれば、Osaka Metro(大阪市電気軌道)御堂筋線の電車で一気に新大阪駅まで移動……というルートが王道ですが、とある家電量販店を見ていきたいという理由で梅田駅で下車。家電量販店を見た後は、運賃を少し節約するために大阪駅からJR東海道線(通称:JR京都線)の列車に乗り、ひと駅先の新大阪駅で下車しました。ここまでの移動は、モバイルSuicaを利用しています。

 新大阪駅に到着後、迷いが生じました。「このまま東京に帰ってもいいのだろうか……?」と。そんなこともあり、さり気なくホテルの予約サイトを眺めていたら、6000円弱で宿泊できる京都市内のホテル(しかも新しめ)が目に入りました。

 着替えは1泊分しか持っていなかったのですが、そのホテルはコインランドリーを完備しているため、館内着に着替えてから洗濯をすれば着るものはあります。そこで予定外ながら1日延泊することにしました。すぐさまホテルの予約を入れ、再び東海道線の列車に乗車して京都駅に向かいました。

 後編では、京都から東京まで戻るまでの旅程を紹介します。普通に帰るのもちょっとつまらないですよね……。どう帰ったのか、お楽しみに!