2022年7月2日未明、KDDIで通信障害が発生しau、povo(1.0、2.0)、UQ mobile、KDDIの回線を利用しているMVNO、同じくKDDIの回線を利用している気象観測システムや物流システムなどで通信ができない状態が数日続きました。

 この日以来、「通信障害に備えてサブ回線を持とう」といった趣旨の記事やニュースが連日出てきていますが、記事のコメント欄には「数年に一度あるかないかの通信障害のためにサブ回線を契約するのが面倒」といったものや「サブ回線の料金も毎月払っていくのは大きな負担になる」というものも目にします。

 こういった意見がでてくるのは、「サブ回線を増やすことが月に千円単位の料金負担増につながる」と思っている方がまだまだ多いからなのかもしれません。

 そこで今回は、「毎月の携帯電話料金の負担を極力上げずに、eSIMを使ったサブ回線利用」をテーマに記事を書きました。0円で持てるpovo2.0以外にも「ワンコイン以下」で音声通話とデータ通信ともに利用可能なプランもMVNOでは出てきています。

 「大手通信キャリアの無制限プランや大容量プラン、あるいはサブブランドの中容量プランを契約していて、毎月データ量が余ってしまう」「データ量を繰り越しても使いきれない」という方にこそ読んでいただきたい内容となっています。携帯プランの見直しや、サブ回線の契約は確かに面倒なことかもしれませんが、メイン回線とサブ回線を併用することによって通信費の大幅カットにつながるかもしれません。※記事での価格は全て税込み。

●eSIM対応のブランドと、有効な組み合わせ方

 eSIMとは「embedded Subscriber Identity Module」の略で、あらかじめスマホに埋め込まれたものであり、契約情報はオンラインを通じて書き込まれます。日本国内で販売されているeSIM対応のスマートフォンは「スマートフォンに抜き差しできる物理的なSIMカード(nanoSIM)を入れるスロットと、内蔵されたeSIMの両方を備えているもの」が一般的です。1台のスマートフォンで2つの電話番号を持つことができ、音声通話対応のSIMであれば、それぞれのSIMで電話の発信と受信が可能です。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルといった通信キャリアの料金プラン、ahamoやpovoなどのオンライン専用プラン、Y!mobileやUQ mobileなどのサブブランドのプランは全てeSIMに対応しています。また、MVNOの「日本通信」と「IIJmio(データ通信のみ)」「LinksMate」もeSIMサービスを提供しています(回線は全てドコモ)。

 今回起きた通信障害では、KDDIの回線を利用したブランド、料金プラン、サービスに影響が出ました。ですので「メイン回線がKDDI回線」であるなら、サブ回線は「ドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルのどれか」、といったように「メイン回線」と「サブ回線」は違う通信キャリアの組み合わせにしないと意味がありません。以下、eSIMに対応している通信キャリア、ブランドです。あわせてメイン回線とサブ回線の選択例を示します。

eSIM対応各社ブランド、プラン一覧(2022年7月時点)

・ドコモ回線:ドコモ、ahamo、日本通信、IIJmio(データ通信のみ)、LinksMate

・KDDI回線:au、povo(1.0、2.0)、UQ mobile、

・ソフトバンク回線:ソフトバンク、LINEMO 、Y!mobile、

・楽天モバイル回線:楽天モバイル(Rakuten UN-LIMIT VII)

メイン回線がドコモ回線の場合のサブ回線候補

povo2.0、UQ mobile、LINEMO(ミニプラン)、Y!mobile、楽天モバイル

メイン回線がKDDI回線の場合のサブ回線候補

日本通信(合理的シンプル290プラン)、IIJmio(データ通信のみ)、LinksMate、LINEMO(ミニプラン)、Y!mobile、楽天モバイル

メイン回線がソフトバンク回線の場合のサブ回線候補】

日本通信(合理的シンプル290プラン)、IIJmio(データ通信のみ)、LinksMate、povo2.0、UQ mobile、楽天モバイル

メイン回線が楽天モバイル回線の場合のサブ回線候補

日本通信(合理的シンプル290プラン)、IIJmio(データ通信のみ)、LinksMate、 povo2.0、UQ mobile、LINEMO(ミニプラン)、Y!mobile

※楽天モバイル利用時、KDDIである「パートナー回線エリア」に接続するケースが多いようであれば、サブ回線もKDDI回線以外が望ましい。

 「サブ回線はとにかく一番安いプランでいい」と考えている場合、メイン回線がドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルであれば、サブ回線はKDDI回線で、基本料金0円のpovo2.0が第一候補となるでしょう。基本料金0円状態での最大通信速度は128kbpsと、普通には使えないレベルですが、通話はできます。180日間で有料トッピングの購入、または通話料金ないしはSMS送信料金の合計で660円を超える必要がありますが、毎月の基本料金が0円で済むのはpovo2.0だけです。

 日本通信(ドコモ回線)の「合理的シンプル290プラン」は、通話機能とデータ量も1GBついてきて月額290円で済むため、メイン回線がドコモ回線以外の方には、通信障害用のサブ回線としてお勧めできます(1GB以降は1GB単位220円で自動的に追加される。契約時、上限設定は10GBで設定されている)。ただし、Androidは動作保証対象外です(2022年7月27日現在)。

 IIJmioの「ギガプラン」はドコモ回線、au回線から選べますが、eSIMはドコモ回線のみです。そして、音声通話機能にも対応していませんが、逆に言えば「データ通信だけの緊急用のサブ回線が欲しい」という方からすれば、選びやすいプランです。2GBのデータ量が月額440円とワンコイン以下で利用可能なので、ある程度のデータ量も使えます。余ったデータ量は翌月末まで繰り越すことができるので無駄もありません。さらに、7月31日までに申し込めば、300円を6カ月間割り引くキャンペーンも実施しています。

 LogicLinksが提供する「LinksMate」(ドコモ回線)は、ゲームプレイヤーのための通信サービスを提供しているMVNOサービス。対象ゲームと連携するとゲームで使えるアイテムがプレゼントされるなど、ユニークなサービスを提供しています。音声機能付き、データ量100MBのプランだと月額517円、データ通信機能のみであればデータ量100MB、月額165円から利用可能です。

 「サブ回線といえども、通信品質は気になる。データも少しは使う」というのであれば料金は高くなりますが、LINEMO(ミニプラン)、サブブランドのUQ mobile、Y!mobileが選択肢に入ります。3つともデータ量3GBが最小プランになりますが、LINEMO(ミニプラン)は月額990円、UQ mobileは月額1628円、Y!mobileは月額2178円から利用可能です。

 LINEMO(ミニプラン)だと、2022年7月現在「半年間実質0円キャンペーン」が実施中ですし、UQ mobileとY!mobileでもスマートフォンと自宅のネット回線とのセット割引を利用すれば、LINEMO(ミニプラン)と同額の月額990円まで料金を下げることができます。

 基本的にサブ回線として、データ量が小さいプランをeSIMで契約し、メイン回線として通常のデータ量のプランをnanoSIMで契約する方法が一般的です。なお、ドコモの「5Gギガホプレミア」などの無制限プラン、20GBのデータ量のahamoなどのメイン回線をeSIMで利用して、サブ回線を通常のnanoSIMで利用する方法もあります。

 筆者は携帯電話ショップを運営している代理店に勤務して記事を執筆していますが、店舗勤務している同僚からは「無制限プランを契約している人でも、実際使っているデータ量は月に10〜20GBに収まっている方の来店も多い。契約内容を見てみると、家族でまとめているわけでも、家のインターネットとまとめてセット割引を受けているわけでもない」といった声を聞きます。

 例えば、ソフトバンクのデータ無制限プランである「メリハリ無制限」は月額7238円ですが、毎月7000円程度払っていて10〜20GB程度しか使っていないのは、少しもったいない気もします。この状態で「サブ回線を持ちましょう」と提案しても、冒頭でお伝えしたように「負担に感じる」といわれてしまうのがオチです。

 そんなとき、ソフトバンクのメリハリ無制限を、例えばデータ量が15GBのY!mobileのシンプルMに変更すると、月額3278円まで料金を下げられます。これなら日本通信の合理的シンプル290プランをサブ回線、eSIMで追加しても月額料金は3568円で済みます(3278円+290円)。ちなみに大手通信キャリア、サブブランド、オンライン専用プランの通話料金は30秒あたり22円ですが、日本通信だと半額の11円で通話をすることが可能です。そのため、「電話でちょっとした問い合わせをしたい」という場合にも使えます。

 Y!mobileではなく、UQ mobileの「くりこしプランM+5G」に乗り換えて、日本通信と併用してもいいでしょう。さらに月額料金を安くすることができます。このように「特に理由もなく無制限・大容量プランを契約していて、毎月データ量をほとんど使っていない」という方は、プラン変更とサブ回線利用の両方を検討するといいでしょう。

●eSIM対応のスマートフォン

 メイン回線+サブ回線の運用は抜き差しできるnanoSIMとスマートフォンに内蔵されているeSIMを使う方法が一般的です。日本国内で販売されているiPhoneだと、2018年に発売されたiPhone XS以降のモデルが該当します(iPhone 13シリーズはeSIM+eSIMでの運用も可能)。

 AndroidだとGoogle Pixelシリーズ(Pixel 4以降)、OPPOシリーズ、AQUOSシリーズの一部が対応しており、Xperiaシリーズ、XiaomiシリーズでもnanoSIMとeSIMの両方が使えるスマートフォンが増えています。これらの機種でeSIMを利用する場合は、事前に必ずSIMロック解除をしておきましょう(2020年夏以降に発売の機種は、原則としてSIMロックはかかっていない)。

●eSIM契約から設定までの流れ(日本通信の場合)

 原則、eSIMの契約、開通作業はオンライン手続きのみで完結でき、eSIMの発行も短時間で済ませることができますが、このあたりの事情は通信キャリアやブランドによって異なります。まずドコモとahamoに関しては2021年10月25日から続いているシステムメンテナンスにより、オンラインでのeSIMへの変更手続きができません(新規契約・他社からの乗り換えは除く)。

 各社eSIMの契約手続き後には、「アクティベーション」と呼ばれる作業が必要です。これは実際にeSIMが使えるようにする作業ですが、アクティベーションができる時間帯も、通信キャリアやブランドによって異なります。例えば楽天モバイルやIIJmioだと24時間アクティベーションは可能ですが(システムメンテナンス中は除く)、povo2.0だと20時〜9時30分の間にアクティベーション作業をすると、eSIMが使えるようになるのは9時30分以降になる、といったような違いがあります。

 日本通信と楽天モバイルの場合、オンライン上でeSIMの契約手続きをしても、即日にeSIMは使えるようになるとは限りません(楽天モバイルでも「eKYC」を用いた本人確認方法であれば即日開通可能)。両社とも郵送物の到着後にアクティベーションする仕組みです。今回は日本通信を例にとって設定までの流れをご紹介します。

 日本通信の場合、契約手続き後に「住所確認コード」が郵送されますが、筆者の場合、郵送物が届いたのはオンラインで契約してから6日後。この住所確認コードを開通手続きの際に入力するなど、もろもろの手続きをすることによって開通手続きを完了させることができます。

 ちなみに、開通手続きをした時間によって完了時間は異なり、20時〜24時だと翌11時までに完了、0時〜10時だと当日11時までに完了、といった形です。たまたま今回は住所確認コードの書類郵送に時間がかかったのかもしれませんが、他社から乗り換え(MNP)をする方は、MNP予約番号の有効期限にも注意してください。

 一般的にeSIMのアクティベーションにはWi-Fiと「eSIMのプロファイルをダウンロードするためのQRコードを表示させる別の端末」が必要になります。ですが、通信キャリアやブランドによってはQRコードを表示させるための別端末は不要で、eSIM設定サイト上や開通アプリ上でアクティベーションをすることが可能です。

 日本通信の場合もQRコード読み取り作業は必須ではありません。届いた書類を元に、日本通信の会員ページにログインし、そこで住所確認コードと「EID」(eSIMの識別番号、iPhoneの設定から確認可能)の入力をして開通を待ちます。そして、開通作業完了のメールが届いたら日本通信のeSIM設定サイトにて「APN構成プロファイル」(モバイルデータ通信を行うためのファイル)をダウンロード、インストールすれば、通信できるようになります。契約申し込み後に届く書類、そしてWi-Fi。この2つだけあれば、日本通信の場合、eSIM開通作業は完了です。

●APN構成プロファイルに注意

 APN構成プロファイルは、iPhoneでMVNOのSIM(eSIM含む)を使えるようにするためのファイルで、今回の日本通信ではAPN構成プロファイルのインストールが必要です。APN構成プロファイルは、1つのMVNO分しかインストールできないため、他のMVNOのSIMを使う場合、削除する必要があります。

 つまり、APN構成プロファイルのインストールが必要な通信キャリア2社のSIM(eSIM含む)で「メイン回線とサブ回線を利用する」といった使い方もできません。例えば日本通信と同じドコモ回線のOCN モバイル ONEもAPN構成プロファイルのインストールが必要なので、今回の日本通信とは併用ができなくなります。

 以上、eSIMを利用したサブ回線利用について解説してきました。eSIMを活用すれば、手軽にサブ回線を構築でき、安価なプランも多いので、家計の負担も抑えられます。メイン回線のプラン見直しも含めて、ぜひ検討してみてください。

●著者プロフィール

吉田裕紀

 長野県出身。2009年「株式会社ディ・ポップス」に入社。NTTドコモ、au、ソフトバンクなどさまざまな通信キャリアを取り扱う携帯ショップ「TOP1」やY!mobileショップにて11年間携帯電話の販売に従事。

 現在はコンテンツマーケティング部署に所属。現場の経験を生かし、「携帯電話料金プランについて分かりやすい記事を書き、分かりやすく情報を発信する」をモットーに、日々売り場からの声や、最新の携帯電話に関する情報を収集し、記事の執筆にあたっている。

・スマホの料金プランに関する情報を随時更新→D-POPS スマホブログ