KDDIは7月29日、2023年度第1四半期(4月〜6月)の決算説明会を実施した。一方で、通信料の値下げの影響もあり、増収減益の決算となった。

 KDDI網では7月頭に大規模な通信障害が発生している。7月29日の会見では、通信障害に対する補償と障害に至る経緯の説明に多くの時間が割かれており、2022年度の第2四半期以降の業績に与える影響も示された。

 KDDIの2023年度第1四半期の連結売上高は1兆3517億円で、前年同期比4%の増加。一方で通信料の値下げの影響により、営業利益は前年同期比0.8%減の2969億円の増収減益の決算となった。KDDIが新たな収益の柱としている法人向け、金融、エネルギーの各事業は堅調に推移している。

●UQ mobileとpovoに勢いあり

 モバイル通信の回線数は22年6月時点で3093万回線となった。総回線数は前四半期から4万回線が減少した。減少の主な要因は、3月末に停波した3G回線で、25万回線が解約扱いとなっている。

 一方で、サブブランドのUQ mobileとpovoは好調で、回線数が順調に増加している。6月時点ではUQ mobileとpovoの合計で、約700万回線に達している。

 特に月額利用料が「0円」から維持できるpovo 2.0は、“敵失”もあり、大きく契約者を増やしたようだ。高橋社長によると、競合の楽天モバイルが0円プランの値上げを発表した5月13日以降、povoの契約者数の増加ペースが一時2.5倍まで増加し、その勢いは6月末まで維持されていたという。

 なお、povo 2.0の契約者数の増加は、7月頭に発生した大規模な通信障害の影響を受けて、穏やかなペースに戻りつつある。ただし、現在も転入超過の状態が続いているという。

 好調に推移しているUQ mobileとpovoは、主力ブランドのauより低価格な料金設定となっている。そのため、1ユーザーあたりの収益(ARPU)は減少傾向が続いている。当期は3970円で、前四半期比で80円低下している。

 この他、通信事業に関わる指標として、KDDIグループ外への転出と純解約の割合を示すマルチブランド解約率は0.92%となった。スマートフォンなどの通信端末の出荷台数は1690万台で、前年同期比で19.5%減少した。5G契約数が占める割合は対前期比で6.4ポイント増加し、39.4%となった。

●“新たな柱”は法人事業が好調、二桁成長

 今後も低下が見込まれる通信料収入に代わり、KDDIが注力領域としているのが、法人向け事業、金融事業(auフィナンシャルホールディングス)、エネルギー事業だ。このうち、DX支援などを含む法人向け事業(NEXTコア事業)は、対前年同期比で16%増収となる870億円の売り上げを記録した。

 auフィナンシャルホールディングスが展開する金融事業は、決済・金融取扱高が3.3兆円と、対前年比で33%拡大。au契約者に優遇金利を適用するauじぶん銀行の住宅ローンが好調で、取り扱い高を押し上げる要因となった。

 au PAY/au PAYカードの会員数対前年比430万会員増となる3800万会員に増加。au PAYカードは同120万人会員の790万会員となった。ただし、au PAYのコード決済事業についてはまだ投資段階にあり、「au PAYの採算は非常に厳しい」(高橋社長)としている。

 auでんきを主力とするエネルギー事業は、対前年比で57万契約増となる357万契約となった。エネルギー事業は燃油価格の高騰などの影響を受け、採算性が悪化しやすい状況にある。KDDIでは固定価格での電力供給の割合を高めて、コストコントロールを実施している。

●7月の通信障害の業績への影響は?

 2023年度第1四半期の決算発表とあわせて、KDDIは7月2日〜4日かけてKDDI網で発生した通信障害についての会見も実施。au、UQ mobile、povo 1.0の全ユーザーに200円(税抜き)を返金するなどの補償の方針を示している。2時間に渡る会見のうち、通信障害に関する説明会に1時間40分と大部分が割かれており、決算に関する記者説明会は20分にとどまっている。

 通信障害は7月2日〜4日にかけて継続し、一部のユーザーが音声通話を一切利用できない状態となった。また、通信障害を解消するための制限により、音声通話やデータ通信が利用しづらくなる状況が最大61時間に渡って続いた。影響人数は音声通話が最大2278万人、データ通信が765万人以上(推計、重複あり)となっている。

 KDDIは通信障害の発生を受け、契約約款に規定されている返金に加え、通信料金から200円(税抜き)を減額する「おわび返金」を実施。おわび返金はauとUQ mobile、povo 1.0の全ユーザーが対象となる。また、povo 2.0では1GB/3日間のデータトッピングを無償で提供する。

 契約約款に基づく返金は、音声通話契約のみのユーザー(データプランの契約がないユーザー)の271万契約に限定される。返金内容は基本料金から2日分を減算するという内容で、1ユーザー平均で52円の返金となる。

 おわび返金と契約約款に基づく返金をあわせた返金総額の見込みは、KDDI単体で約73億円、沖縄セルラーの契約分を含むKDDIグループで約75億円となっている。返金対象には法人契約も含まれるが、IoT機器などで支障が発生したことに対する損害賠償については含まれていない。また、KDDIは通信障害の再発防止策としてネットワーク監視の強化などを実施する方針となっている。

 なお、同日に発表された2023年度第1四半期の決算は、2022年4月〜6月を対象としているため、通信障害の影響は含まれていない。通信障害の影響は第2四半期以降に反映される。KDDIの高橋社長は通信障害の影響について「返金や再発防止策が業績に与える規模は小さくはないが、現時点で予算の変更はしない。営業努力でカバーする」と説明している。実際にKDDIグループの業績規模(年間売上高は5兆5600億円の見込み)と比較しても、通信障害への対応が業績に与えるインパクトは致命的に大きなものとはならないだろう。

 通信障害が回線契約数に与えた影響について高橋社長は、「実は、足元の解約数はそれほど大きくなっていないが、新規で契約するユーザーに対する影響が出ると見ている」という見解を示し、安定したサービスの提供を通じて信頼回復に努めていくと表明した。