ソフトバンクが2023年第3月期1四半期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比0.4%増の1兆3619億9900万円、営業利益は同12.7%減の2471億1100万円、純利益は同14.9%減の1285億4200万円で増収減益。宮川潤一社長は「経営目標に対して進捗(しんちょく)は順調」とした上で、「来年(2023年)以降の事業成長が一番重要で、今後の体制を急ピッチで整えている」と説明する。

●値下げ影響はピークに 巻き返しの体制整う

 事業のセグメント別では、主力のコンシューマー事業が売上高6674億円で同4%減。モバイル通信事業における値下げ影響が継続して響いた。スマートフォン契約数は同7%増の2792万契約と順調に拡大したが、減収をカバーできなかった。

 この契約数増には、楽天モバイルが0円プランを廃止したことで、MNPによる楽天モバイルからの転入が含まれる。楽天モバイルへの転出が「半分になった」(同)ことも貢献した。

 宮川社長は「通信料金値下げ影響が最も多く出る年が今年(2022年)」であり、2022年の値下げ影響を900億円と見積もる。第1四半期にはそのうち250億円の影響が出ており、加えて端末販売台数の減少と獲得費増加が響いた。

 ただ、期初予想よりは順調に推移していると宮川社長。値下げ影響のピークを迎えて、今後は値下げ影響が減少していくことから、宮川社長は「(今期)後半の巻き返しを頑張っていきたい」と意気込む。

 値下げによる大幅な減収は継続するが、2021年の値下げ開始からこれまでの間にソフトバンクは「我慢して肩慣らしをしてきて、値下げした価格帯での体制作りを整えたところ」(同)。この「肩慣らし」が終わってこれからが本番ということで、宮川社長は「攻めに転じるメニューを出していくフェーズ」と強調。今後さらなるユーザー拡大に向けてモバイル通信事業の新たな戦略を打ち出す。

 昨今の値下げ影響は、来期にもまだ500億円程度は残存することを予測しているが、これはコスト削減でカバーできると宮川社長。来期には減価償却費が大幅に減少する見込みで、値下げ影響があっても各事業を伸ばして利益につなげたい考えだ。

 増収となったのは法人事業で、特にソリューション事業が12%の伸張となり、トータルで3%の増収となった。利益は5%の減益だったが、前年度に発生した一時的な費用の戻し入れの影響があり、それを除けば2%の増益だった。

 ヤフー・LINE事業では、売上高が3906億円で5%増、営業利益が497億円で3%減。eコマース取扱高は6%増の7316億円と順調に拡大している。ここで重要なのがPayPay事業だ。

●PayPayはマネタイズの時期に 「攻めながら黒字化」

 PayPayは事業開始から3年9カ月となり、登録者数は6月末で4800万人超、前年同期比21%の増加となった。決済回数も四半期で11.1億回となり、同42%の伸びとなった。決済取扱高(GMV)も四半期で同38%増の1.7兆円に達した。

 コード決済の国内市場は2021年度で7.3兆円とされ、PayPayのシェアは67%。「マーケットシェアは3分の2を超えて圧倒的ナンバー1になった」と宮川社長は胸を張る。

 こうした成果を達成したことから、PayPayについて宮川社長は「これまでの種まきの時期から本格的なマネタイズの時期に移行したい」(同)との考えを示す。そのためには「Zホールディングス傘下のヤフーやLINEとも事業連携をすることが最良と判断した」(宮川社長)。2022年10月にソフトバンクとZホールディングスの2社で中間持株会社を設立してPayPayを連結子会社化する計画だ。

 これには「PayPayの企業価値を上げるためにはZHDに自らごととの認識を深めてもらうのが目的。PayPay自身のシナジーが出て、企業価値が上がると判断した」という理由もあると宮川社長。

 この3年9カ月の種まき期間中は赤字続きの先行投資であり、「1300億円ほどの損失を計上してきた」(同)。これは簿価としてはゼロとなるが、連結子会社化で再評価が行われ、評価益が計上される見込み。「当初の価値よりも評価がもう少し上がっているのでは、と正直期待している」と宮川社長は話す。

 この一時的な評価益に加えて、マネタイズによって黒字化すれば利益面での貢献も期待できる。宮川社長は黒字化に加えて、PayPayが「ソフトバンクの屋台骨になっていってほしい」との期待感も寄せ、ソフトバンク全体の3分の1程度の事業規模へと成長することを目指す。実現の時期に関して宮川社長は明言を避けたが、「(自身が)社長にいる間に成し遂げたい」と強調する。

 マネタイズは目指しつつ、現時点ではまだ規模が拡大しているため、「ユーザー数が伸ばせるうちは伸ばしたい。予算としてはまだ攻めた方がいいと感じている」(同)。還元などのユーザー獲得コストは当面継続する意向のようだ。

 それでも、コストコントロールに加えて加盟店手数料の徴収を開始したことで、赤字幅は縮小して改善傾向にある。宮川社長は「攻めながら黒字化する。攻めのコントロールはどこかでするつもり」との戦略を示す。このコントロールは、「勢いがあるうちは勢いを継続したい。コントロールするのは半年後、1年後、2年後になるか分からないが、攻めながら決めていきたい」というスタンス。

 懸案のPayPay上場に関して、「黒字化のタイミングでできるだけ早く上場したい」というのが宮川社長の考え。中間持株会社による子会社化は、「上場してもPayPayの経営に携わっていきたいという意思表示」(同)なのだという。

 PayPayの連結子会社化を踏まえて、ソフトバンクの事業セグメントとして「金融セグメント」を新設。第3四半期以降、新セグメントの戦略、KPIを示していく。この金融セグメントはPayPayに加えてSBペイメントサービス、PayPay証券、PayPay銀行などが含まれる。10月以降、「PayPayはかなりアグレシッブナ計画を持っている」(同)ことに加え、PayPay経済圏の拡大を目指していく計画だ。

●KDDIの通信障害は対岸の火事ではない ローミングはeSIMで対応の案

 7月にKDDIが引き起こした通信障害について問われた宮川社長は、「対岸の火事という認識は全くない」として、既にさまざまな検討を開始したという。今回の障害原因は既に明らかになっているが、「ソフトバンクで同じことが起きるかというと、今回の件は起こり得ない」というのが宮川社長の結論。

 ただ、人的ミスを含めて、どんなトラブルが発生するかは予測できないので、「対策チームを設けて、一から(ネットワークを)見直すよう検討してもらっている」と宮川社長。

 総務省は、災害、障害時の事業者間ローミングに関する検討会を9月にも設置する予定。もともと、宮川社長は事業者間ローミングについて過去にコメントをしていたこともあって、「ローミングについて本気で考える時期に来たのではないか」と話す。

 ソフトバンクは2018年に大規模障害を発生させたが、「当時よりも現在の方が、モバイルの社会インフラとしての重要度が増している」(同)。特に「認証と決済」に関して広く使われている点を理由として挙げる。認証は、2要素認証などでSMSが使われることが増えており、スマートフォンが使えなくなると認証ができなくなるという問題がある。

 決済では、PayPayをはじめとしてスマートフォンを前提とした決済が増えたことで、より通信の維持が重要になった。

 KDDIの通信障害では、警察・消防などへの緊急通報が問題となった。海外では、SIMがない状態でも緊急通報だけはどのキャリアにでもつながる仕組みも構築されているが、国内では通報が途切れたときのために呼び返しができることが必要で、SIMなし通報には法改正が必要になる。

 それに加えて宮川氏は「緊急通報の確保だけで、障害時のパニックに対処できるかというとそうはならない」との認識を示す。さらに、単にデータローミングをするだけでは、他社ネットワークに利用者が殺到して共倒れになる危険性もある。

 「個人的な考え」と宮川社長は前置きしつつ、「キャリア同士でMVNOのような構造を受けておいて、緊急時には切り替えが可能になるような、eSIMのようなものを用意しておく」という手法を紹介。このときは、通信自体が快適である必要はないため、「300kbpsぐらいの最低限の通信を確保」(同)しておくことで、電話、メール、ニュースなどの確認ができるようにする、という考え方だ。

 「日本国として、有事の際にはどのように通信を使えるようにするのかは検討していきたい」(同)