Googleは10月13日に、Pixelブランド初となるスマートウォッチ製品「Pixel Watch」を発売した。本稿では、同製品の概要をおさらいしつつ、実際に筆者が購入して使ってみた上での本音をお届けしたい。

●Pixel Watchに関係する市場背景について

 まず、製品の背景についておさらいしておこう。Googleはこれまでも、スマートウォッチ向けのOSである「Wear OS by Google(旧Android Wear)」を提供してきており、ソフトウェア面ではスマートウォッチ製品に深く関わってきていた。Android Wearがリリースされたのも2014年のことで、実はAppleのwatchOSよりも先に市場に登場していた。

 しかし、Wear OS(旧Android Wear)搭載のハードウェアをGoogle自身のブランドとして積極的に展開してきたわけではなかった。そういう意味で、今回の「Pixel Watch(ピクセルウォッチ)」は初のGoogle製スマートウォッチとして注目されている。

 一方、スマートウォッチ市場でトップシェアを誇るAppleは「Apple Watch」シリーズを2015年から販売しており、2022年には第8世代目の「Series 8」が発売された。後発として約7年半の後れを取り戻すのはGoogleとて容易ではない(さらに言えば、市場には、Garminや、HUAWEI、Galaxyなどの競合もあふれているし、Wear OS搭載モデルとしてもFossilのOEM製品などが多数展開されている状況だ)。

 そんな状況に対応するためか、Googleは2021年1月に米Fitbit(フィットビット)を買収完了した。Fitbitはスマートウォッチ市場においてAppleに次ぐシェアを獲得しているブランドであるため、その資産がPixel Watchでも発揮されると見込まれていた。

 ただし、Fitbit製品はWear OS搭載ではなく、同社の独自OSで駆動していた製品。こうした事情か、あるいはブランドの既存顧客を配慮してかは分からないが、買収後もFitbit製品は「Fitbit」ブランドのまま継続的に提供されている。

 こうした背景を意識しながらPixel Watchを眺めてみると、OSにはWearOS 3.5が採用されているものの、そのハードウェアデザインには、どことなくFitbitシリーズの影響を受けていそうな箇所がある。例えばストラップバンドのデザインや、薄型の本体設計、ボタンやスピーカーの配置などの設計には、どことなく「Fitbit Sense 2」などと類似点があるようにも思える。

 また、ソフトウェアやサービスに関しても、例えばFitbitが展開してきた有料サービス「Fitbit Premium」をPixel Watchでも利用できるなど、Fitbit買収で得た資産が生かされている。

 そんなPixel Watchの価格は、Wi-Fiモデルが3万9800円(税込み、以下同)、4G LTEモデルが4万7800円であり、競合のApple Watchシリーズの廉価モデル「SE(第2世代)」(3万7800円〜)並みの価格設定であることからも、市場においても価格面での競争力は高いと思われる。

 ただし、Pixel WatchはAndroid 8.0以上の端末でしか利用できない(※ただし、ペアリングしたAndroid端末経由でFitbitアプリに蓄積したデータ自体などは、iPhoneからも確認できる)。Apple Watchは基本的にiPhoneとのみペアリングできる製品なので、そもそも想定利用者が異なる。購入検討者にとって、単純に両者を比較する意味は、特殊な場合を除き、実はさほどないといえる。

●本体デザインやUIはとても好印象

 Pixel Watchのデザインは、Googleらしいこだわりが詰まったものになっている。「Material Design(マテリアルデザイン)」の系譜が好きな人ならば、きっと気に入るだろう。

 ケース部分は円形であり、本体の側面や裏側にはリサイクル素材のステンレススチールが採用されている。Apple Watch SEなど、Apple Watchの普及価格帯ではアルミニウムが使われていることを考えると、4万円弱のスマートウォッチでステンレス素材の光沢感・高級感を身にまとえるのはそれだけでお得感がある。

 ボタンは3時位置にシンプルなリューズがある他、2時位置にもう1つのボタンが配置されている。特に2時位置のボタンはやや裏側に近い角度で配置されており、表からはほぼ視認できないようにもなっている。引っ掛かりやエッジもほぼないため、ワークアウトでもライフログ目的でも、安全に使えるのは良い。

 ディスプレイベゼルは太めだ。仕様としては記載されていないが、手元でざっと計測してみるとおよそ幅4mmといったところ。ディスプレイには有機EL(AMOLED)が使われていて、深みのある黒色が再現されているため、ベゼル部分と黒く表示された文字盤の余白はシームレスになじむ。このあたりのデザインはかなりこだわられていると思う。

 文字盤は複数種類を選べるが、筆者のお気に入りは「アナログ」だ。カラーはさまざまにカスタマイズでき、黄緑の「洋梨」が気に入った。コンプリケーションをあえて非表示にすれば、バータイプの長針・短針だけが表示された状態になり、黒の美しさが引き立つからだ。一方、スマートウォッチながら色域はDCI-P3に対応しており、映し出される色も鮮やかで、メリハリがあって美しい。カラーでの常時表示にも対応しており、ファッションアイテムとしての役割もしっかりこなせる。

 アクティブバンドの素材は、Apple Watchのスポーツバンドなどをはじめ、競合製品でもよく見かける「フルオロエラストマー」だ。ただし、Apple Watchのそれと比べると、やや硬めに調整されていると感じる。例えば、ケースとバンドの結合がやや「ハ」の字型の向きになっていることもあり、机上に平置きするとケース部が浮いてしまう。

 バックル部分は先の平らなピンをホールに指して固定する仕組みだ。前述した通り、Fitbit Sense 2などのバンドと構造的な類似点が多い。現状はアクティブバンドしか選択肢が用意されていないので、バリエーションは少ないが、第1弾ということで仕方のない部分だろう。今後バリエーションが増えていくことに期待だ。

 また、バンドをケースに脱着する機構も、本体デザインを損なわないように、よく練られている。バンドを外す際にはバンドの横にあるボタンを押下しながら、ボタン側にバンドをスライドさせればよい。一方、バンドでボタンを押し込みながらそれとは反対にスライドさせると再びバンドを装着できる。文字にするとややこしいが、実際の操作はシンプルで分かりやすい。

●ハード・ソフトともに操作感は良好

 前述したように、Pixel Watchは、現状Wear OS 3.5で駆動している。ざっと基本操作を説明しておくと、ディスプレイを下にスワイプするとクイック設定画面が、上へすワイプすると通知画面が表示される。左右にスワイプすると「タイル」と呼ばれるアプリウィジェットの画面に切り替わる。また、文字盤を長押しすることで、文字盤デザインを変更するための画面に切り替わる。

 ボタン操作は、2時位置のボタンを1度押しで、最近起動したアプリの一覧画面が、長押しでGoogleアシスタントが起動する。一方、3時位置(リューズ)のボタンは、1度押しでメニューの一覧が、2度押しでウォレットが、長押しで電源オン、オフや緊急通報操作のための画面が表示される。なお、アプリ画面を開いているような場合には、リューズの1度押し操作で、文字盤画面まで戻る。

 リューズは回転させるとメニュー画面などをスクロールできる。この際に、心地よい振動によってフィードバックがある。こうしたUXはよく作り込まれていて、実際にApple Watchなどと比べても遜色なく感じた。

 ちなみに、2時位置のボタンの押し心地がやや硬く感じることがあるかもしれない。これは、ボタンの配置がやや裏面に寄っているからだ。そのため、側面の真横からボタンを押下しようとうると、ハードとしてボタンを押せる向きとベクトルが異なるため硬く感じる。実は、やや奥に指を潜り込ませるようにして、少し手前に向かってボタンを押下することで、多少滑らかに押せるので、もし実機を触って違和感を覚えたら試してみてほしい。

●ソフトウェアの連携は煩雑で準備不足な印象もある

 Pixel Watchの初期設定は「Google Pixel Watch」アプリ経由で行う。対応端末を近づけるとポップアップでPlayストアまで誘導されるし、初期設定操作のなかで丁寧なチュートリアルも表示される。読み飛ばさなければ、おそらく設定手順や前述したような基本操作で戸惑うことはないだろう。

 ただし、登録手順の中でFitbitアカウントとの連携が求められる。これまでにFitbit製品を使ったことがない人や、冒頭で説明したGoogleとFitbitの関係性を知らない人にとっては、理解に戸惑う可能性は大だ。

 関連して、Pixel Watchのなかで、ヘルスケア機能やワークアウト機能を利用する際に、Google Fit由来の機能とFitbit由来の機能が混在してしまっており、使い分けが非常に分かりづらい。例えば、ウオーキングをする際に、Google Fit由来の「Fitエクササイズ」を選ぶべきか、Fitbit由来の「Fitbit Exercise」を選ぶべきか、ユーザーが悩まなくてはいけない。これはあまり美しくない状況だ。

 もちろんAndroidでは、Androidとしての機能とメーカー独自の機能が重複することも普通なので、ある意味こうした構造もGoogleらしいといえばGoogleらしい。しかし、わざわざ「ピュアAndroid」の分かりやすい体験を求めるPixelユーザーの視点からいうと、「ピュアWear OS」のような存在を求めて購入したら中身がごっちゃごちゃに散らかっていて期待を裏切られたような感覚になる。

 将来的に、Google FitがFitbitアプリに統合されていけばシンプルな使い勝手になっていくのかもしれないが、要するに現状ではFitbitのサービスを“そのまま”Googleサービスの体系に取り込んだために、本来整えるべきUXがとっ散らかったまま製品としてリリースされているような状況なのだと感じた。

 一方、Fitbit Premiumの有料プランに誘導する設計上、どうやらGoogleとしてはFitbit由来のサービスにユーザーを誘導したい節もある。例えば、Pixel Watchで取得した睡眠の計測データはGoogle Fit側に連携されないようだった(もちろん、筆者が必要な設定項目を見落としている可能性もゼロではないが……)。

 ビジネスとしては、それが当然だろうと頭で理解できる一方で、デバイスに4万円も支払ったユーザーとしては――6カ月無料でFitbit Premiumを利用できるとはいえ――意味のある形で睡眠計測を利用するのに有料プラン(月650円、または年6400円)に入りつづけなければいけないのは、少々気が重い。7000円で購入できるFitbit製のスマートバンドなら、そこに数年間のサブスク費用を追加支払うのもやぶさかではないのだが、Pixel Watchでは同機能を継続利用するかどうかは正直考えさせられてしまった。

●使ってみて特に困ったところは2つ

 さて、筆者が実際にPixel Watchを使ってみて困ったのは2点あった。1つ目は、Google Payがうまく登録できなかったことだ。これはPixel Watchアプリ上でのアカウントの連携でエラー出てしまったためである。

 もちろん、筆者が今回、Android 12とはいえ定期アップデートが終了済みの「Pixel 3」をあえて使って検証したことや、仕事で使っているGoogle Workspaceのアカウントの使用を最初に試みたこと(こちらはMDMの設定を変えてもダメだった)、連携に失敗してから別途登録を試したGoogleアカウントがiPhone側で既にSuicaを使用していたこと、などの条件も絡んでくると思う。そのため「自力で登録ができずに諦めたこと」自体は、一概にPixel Watchのせいではない部分もあると理解してほしい。

 困ったのは、何かしらのエラーが生じたときに、エラーの存在だけが表示され、その原因がユーザーに説明されず、オンライン上にも該当のエラーに関する情報がないという状況だったことだ。もちろん、インターネット上には成功者のアドバイスなども散見されたものの、それが同じ原因のエラーとは限らず、全体像が見えないのでお手上げだった。運悪くエラーに遭遇すると、ガジェットやITサービスの仕組みに深く精通した人でないと対応できないだろう。そんな意味で、現状では万人向けに整えられたサービスとは思えなかった。

 2つ目の困りごとはシンプルにバッテリーの持ちだ。Pixel Watchのバッテリー持ちは、仕様上最大24時間とされている。この数値は文字通り「最大」であるようで、実際に常時表示をオンにして、1日に10分程度のウオーキングを測定するような使い方をした場合、終日持たずにバッテリーが切れてしまう。体感的なバッテリー持ちは初代のApple Watchを使っているときのような感覚で、ある意味懐かしく思えた。

 しかし、今やそのApple Watchでも通常使用で約1.5日は持つ。また、Galaxy WatchやGarminなど、使い方によっては週単位でのバッテリー持ちを期待できるシリーズも既に多くある。ワークアウト測定や睡眠計測など、Pixel Watchの主力機能を利用する上で、バッテリー持ちが短いのはやはり都合が悪い。

 ちなみに、Pixel Watchの充電スピードは特に遅いわけでもないが、劇的に高速というわけでもない。50%充電するには30分で済むが、100%充電するには約80分かかる。筆者としては起床時に30分、夕方〜就寝前のどこかで30分充電することで、日中の利用と睡眠時の計測を両立させるのが現実的だと感じた。「非常に不便」とまでは言わないが、1日に2度の充電はやや面倒だった。

●まとめ:ファッションアイテムとして使いやすいが、発展途上の部分も多い

 Pixel Watchのデザインは、スマートウォッチ市場を見渡してもかなり高いレベルで整っており、ファッションアイテムとしては高く評価したい。装着感やUIの操作感などもおおむね良好で、長時間装着・利用しても不快感はあまりない製品に仕上がっている。

 一方、ライフログ関係の機能は平凡で、心拍数や活動量、睡眠計測などの測定が主な用途となる。一応SpO2(血中酸素濃度)などのセンサーは搭載しているものの、日本では使えないようになっているようだ。また、Fitbitデバイスの方が、皮膚電気活動や皮膚温の計測に対応したモデルがあるなど、後発モデルとして、やや惜しく思える部分も残る。

 ソフトウェアサービスとしては、Google Fit由来の機能とFitbit由来の機能がうまく統合されておらず、Googleとしてもユーザーにどう使ってほしいのか、まだ決断できていないようにも思えた。本格的な睡眠データの分析などはFitbit Premiumを契約しないと利用できないよう制限されているため、本体代金約4万円のデバイスとしてはやや割高に感じてしまう部分もある。

 その他、筆者個人としては、Google PayのSuica登録で挫折したこと、2022年発売のスマートウォッチとしてはバッテリー持ちが心もとないことが特に困ったポイントだった。

 まとめると、製品の外観が気に入った上で、簡単な日常使いの目的で購入するなら価値は検討する価値はあると思う。一方、第1世代モデルらしく発展途上な仕様があり、ソフトウェア面も急いで間に合わせたように思える部分がまだある印象だ。検討時にはこれらの点を理解したうえで、購入するかどうか判断するといいだろう。